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タイミーで200回バイトを経験して見つけた理想の労働観とは?

石崎健人 |
密着型のエスノグラフィー調査から見えてきたZ世代の誤解。Z世代に対する一般論と実態のギャップ。若者の研究所にて、学生研究員が大人と対話をしながら自らの世代を分析する中で生まれた連載企画です。―――「えっ?そうなの?」大人が知らない「ビーリアルな」Z世代理解に迫ります。

今回は、Z世代を中心に1000万人以上が利用しているスキマバイトサービス、Timee(タイミー)で2年間で200回以上利用してアルバイトをしたTさんの職業体験記です。

今回の密着対象者

Tさん(24)フリーター(女性)
2004年生まれ。東京都小金井市出身。都内大学を退学した後、現在は美術系の受験予備校に通い美大を受験中。その傍ら複数のアルバイトを掛け持ち中。現在しているアルバイトは肉割烹のホール・コンカフェ嬢・ホテルの会員制ジムの受付と清掃などなど様々。

アルバイトを半年でクビに。タイミーとの出会い

まずは初のアルバイト経験について聞いてみた。

19歳の頃、あまり大学に行かなくなってフラフラしていたことがありました。親が勝手に近所の薬局のアルバイトに応募して、半ば強制的に面接を受け、アルバイトをすることになりました。

ただ、半年くらい続けた時、レジで接客中にお客さんに「もっとやる気出せ!」とキレられてしまって。そのときに「確かにやりたいことではないし、やる気ないかも」と気がついて、辞めることにしました。

カスタマーハラスメント的だが、それ自体が苦で辞めた訳ではなく、むしろ違うアルバイトに挑戦する動機になったようだ。

その後、バーテンダーのバイトをしたのですが、「向いてない」と言われて。半年でクビになったんですよ。それが初めてのクビ経験でした。
 
店長はすごく向き合ってくれて、私に「どういう仕事が合うか色々な職種を試してみて欲しい」と、前向きな餞別のメッセージを3000字も綴って送ってくれました。
 
ドリンク作りと会話のマルチタスクや、興味のない見知らぬ人にも話題を振って関係をつくることは本当に苦手で、メッセージにも書いてありました。

そこからタイミーに出会ったのだそう。

初タイミーは2021年の冬で、西東京にある本屋さんの工場でした。テレビCMでタイミーのことを知っていて、バーの店長のメッセージもあったし、自分も何が向いているのかさっぱりわからなかったので、単発で色々なバイトができる、という点が魅力でした。そこからタイミーを利用するようになり、現在は毎月8万円程度をタイミーで稼いでいます。

やりたいことや得意なことがわからない分、色々な仕事を試したかったTさんにとってタイミーはちょうどよかったのかもしれない。

美味しいものを食べたいと思ったらタイミーを見る

Tさんは、朝起きてタイミーの求人を眺め、その日の予定や気分にあった求人に応募している。昼と夜の予定の合間のすきま時間で稼ぐことを、当日に、スマホ1つで自由に決めることができるのだ。

Tさんがタイミーで応募・勤務した求人一覧画面を見せてもらった。飲食(ホール・皿洗い)、工場・倉庫での軽作業、催事のレジ、居酒屋のキャッチ、サプリの売り子など多様な業種・職種が並ぶ。

イメージ timee

 

飲食の求人が多いので、私はまかない目的で選ぶことも多いです。美味しいもの食べたいなと思って、タイミーで探すこともあります。今働いている肉割烹のお店はタイミーで出会って、今も続いています。まかないでA5ランクのお肉をまかないで食べれるんですよ!

まかない目当てにタイミーをするというのは面白い。これなら筆者も副業で土日にタイミーをしてみたくなる。

職場の人と交流して関係を深めたくない

Tさんがタイミーで毎回違う仕事をすることが多いのだという。

私はタイミーでの仕事の9割は単発です。同じ職場は1割くらい。タイミーを通じて、私は「固定化された人間関係がすごく苦手だったんだ」と気がつきました。毎回異なる現場に行くのが楽しいです。最初30回くらいまでは毎回緊張していましたが、それ以降は慣れました。

Tさんは職場の人と深い人間関係をつくることに抵抗感があるようだ。

タイミー労働者が「タイミーさん」と呼ばれることを毛嫌いするような風潮があるそうです。私の感覚は反対で、むしろ匿名性があって、独立した個人として尊重されているように感じます。深くない、単発の関係が良いから続けているのであって、無闇に連絡先を聞かれたり距離を詰められる方がしんどいです。

職場は出会いの場の一つだと筆者は思っていたが、逆にそれはすべてシャットアウトして仕事に向き合っているのは、なんとも新時代を感じさせる。

まとめ

アルバイト体験の話を聞いて、Tさんには働くことと人間関係を持つことを混ぜたくない、むしろ独立させて考えたい、という新しい価値観の兆しが垣間見える。

「若者の職場飲み会離れ」の原因に近い感覚なのではないだろうか。職場でTさんのような若者がいたら、仕事上のコミュニケーションとして飲み会に誘うのは逆効果な気もする。これもZ世代のマス目意識 の1パターンなのかもしれない。

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