Z世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」

平成を楽しむZ世代たち。若者の新トレンド「ニュートロ」とは?

作成者: 石崎健人|Sep 17, 2025 6:14:04 AM
密着型のエスノグラフィー調査から見えてきたZ世代の誤解。Z世代に対する一般論と実態のギャップ。若者の研究所にて、学生研究員が大人と対話をしながら自らの世代を分析する中で生まれた連載企画です。―――見かけなくなった職場結婚、ビール離れの実際、たばこに代わる嗜好品、奢る・奢られ論争の最前線―――「えっ?そうなの?」大人が知らない「ビーリアルな」Z世代理解に迫ります。

Z世代の間で「平成」が「レトロなもの」として再燃し始めている。つい最近80年代のシティポップが流行っていたが、もう平成までレトロ扱いに。最新の「レトロ」を解き明かすべく今回はサブカルチャーに明るい若者に密着しました。

今回の密着対象者

Hさん(29)
1995年生まれのOL。趣味は多岐に渡り、お笑い鑑賞、サウナ、キャンプなど。自称サブカル系。最近は平成時代の懐かしいキャラクターグッズ収集に夢中。

レトロなキャラクターグッズがブーム再燃?

今回は自称サブカルのHさんのお買い物に密着。筆者が普段行ったことのない、サブカルなグッズが揃うお店巡りだ。

最近ハマってるのは、平成のキャラクターのグッズ収集です。「ナカムラくん」っていうエンジェルブルーというブランドのキャラクターです。プレイステーションの「どこでもいっしょ」っていうゲーム、覚えていますか?そのキャラクターの「トロ」。あと、「ケロロ軍曹」、「しずくちゃん」っていうキャラクターも集めてます。私が子どもの頃に好きだったキャラクターたちがいま、またリバイバルで流行っているんです。

大阪アメリカ村の雑貨屋にて

そういって、彼女が見せてくれた手元にはキャラクターのネイルがびっしり。

左手:モモ(PostPet)、ケロロ軍曹、ミルモ(ミルモでポン!)、ところてんのすけ(ボボボーボ・ボーボボ)、アフロ犬、右手:パラッパ(パラッパラッパー)、しずくちゃん、ナカムラくん(エンジェルブルー)、ミニハムズ(ハム太郎)、トロ(どこでもいっしょ)

モモのネイルと、お店のモモのコーナー。揃えて写真を撮るのが楽しいんだとか

(すべて2000年代初期の平成に流行ったキャラクターたち。皆さんはどれくらいわかりましたか?)

これらのグッズは、メルカリや渋谷の390円均一のお店で買ってます。中野のお店もよく行きます。最近、こういったニュートロなグッズを扱っているショップが渋谷あたりにでき始めました。大阪だったら、アメ村(アメリカ村)に行ったりしますね。

私は1995年、平成7年生まれなので、私からすると子供のころに大好きだった、めちゃくちゃ懐かしいキャラたち。でも、いまの大学生の子くらいの子たちがお店にいたりして、彼女たちからすると、新鮮な感じでエモいみたいです。一部のインターネットではこのトレンドを「ニュートロ」って言うみたいです。
※エモい…懐かしいを意味する若者言葉

Hさんにとっては「懐かしい」。これらのキャラクターを知らない若年のZ世代にとっては、「新鮮」。「ニュー・レトロ」ということだ。平成生まれY世代の筆者も「懐かしい!」と感じるキャラクターがちらほら。

例えばキティちゃんも好きなんですが、最近のキティちゃんは令和っぽい表情なんです。ふわふわ系、キュルン系の顔だったり。私が好きなキティちゃんはちょっと昔のレトロっぽいキティちゃんです。表情が微妙に違うんですよ。で、最近はそれがリバイバルされてたりもするんです。

たしかに、このセーラームーンは顔の表情がなんとなくレトロな感じがする。

ドット絵になると、キャラクターの表情はよりレトロさが際立つ

仕掛け役は同世代?ニュートロ流行の発端

なぜ今になってこれらのキャラクターグッズがリバイバルしているのだろうか?

コロナ禍中に、ナカムラくんがオンライン限定で期間限定で復刻したんですよ。そのときにナカムラくん復刻するんだ、と思ったのが一番初め。そこからすぐに爆発的に広がったっていうよりか、当時はナカムラくん君を好きで追い続けていた少数の人たちが見つけた、ぐらいだっと思います。流行っている、という感じは全然してなかったんですよ。

ここ1、2年ぐらい。2023年くらいから急にそういうリバイバル製品がいっぱい増えてきたっていうイメージですね。

多分、私と同世代の人たちが就職して、会社の中で企画職になったり施策に関与できるようになり始めたんじゃないですかね。その人たちがかつて子供のころに好きだったものを頑張って商品化してくれてるおかげで懐かしいキャラクターがまた世に出てきたんだと思います。私もそういう仕事がしたいです。

ファッションはよく20年でトレンドが一周してリバイバルすると言われているが、2000年代のキャラクターも同じように20年ほど経ってまたリバイバルしているのは興味深い。

渋谷109のファッション&グッズショップ。写真左はマイリトルボニー、右はファービー、パワパフガールズ、エドハーディー(Tシャツ)

 

ニュートロなグッズを扱う雑貨屋の店頭には懐かしの携帯電話「ガラケー」(ガラパゴスケータイ)やたまごっち、ゲームボーイなども並ぶ。たまごっちは筆者の周囲のアラサーでも確かに流行っている印象があるが、当時のたまごっちのパッケージは懐かしい。

令和キッズのZ世代にとって、平成はもうレトロに

Z世代にとって平成はどのような印象なのだろうか。

私はZ世代といってもアラサーなのでZ世代の中でもどちらかというと上の世代寄りな感じです。なので、平成は懐かしいですけど、平成がレトロ、という印象は正直ないんです。でも、10個下の大学生とかもZ世代なんですけど。その子たちからすると平成って、きっと私の世代が昭和をレトロ、と思うような感じなんですよね。私もZ世代と括られてはいるけど、職場で新人やインターンのZ世代の子たちと話しているともう若くないんだな、なんて思うときがたまにあります。

どんなときにそう感じたのだろう。

若い子とカラオケの話をしてたときにショックだったことがあって。今の大学生とか、社会人1年目くらいの子たちって、職場でカラオケに行ったときにアラサーの先輩が好きそうな歌とか入れたりするんですって。で、どんな曲を入れるか?って聞いたら、オレンジレンジ、湘南乃風、nobody knows+のココロオドルって言われて。それを聞いてめちゃくちゃ恥ずかしかったです。

なるほど。令和世代からすると平成もすでにレトロということなのがよくわかった。

まとめ

アラサーZ世代には懐かしく、一方の20代のZ世代にはレトロで新しさが感じられる「ニュートロ」。この新トレンドを探索する中で、筆者は改めてZ世代の年齢の幅広さを実感した。

また、Z世代の一部はアラサーになり趣味に使える可処分所得が増えている。ここには、子供のころに好きだったキャラクターグッズを、お金を持つようになって再び買えるようになる、という購買のサイクル構造が垣間見える。筆者の予想としては、「ニュートロ」トレンドは今後も続くのではないかと思われる。2040年ごろには「ちいかわ復刻ブーム」などがまた起きるのではないだろうか。