Z世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」

投票先を生成AIに決めてもらう未来? ChatGPT、Perplexity、Grokを活用したZ世代の選挙事情

作成者: 石崎健人|Sep 17, 2025 7:19:10 AM
密着型のエスノグラフィー調査から見えてきたZ世代の誤解。Z世代に対する一般論と実態のギャップ。若者の研究所にて、学生研究員が大人と対話をしながら自らの世代を分析する中で生まれた連載企画です。――見かけなくなった職場結婚、ビール離れの実際、たばこに代わる嗜好品、奢る・奢られ論争の最前線――「えっ?そうなの?」、大人が知らない「ビーリアルな」Z世代理解に迫ります。

7月20日に投開票された参議院議員選挙では、若者の選挙参画が進んだようです。今回は投票先の検討に生成AIを活用したTさんに話を聞きました。

今回の密着対象者

Tさん(21)大学4年生(男性)

2003年生まれ。東京都出身。来年から大学院に進学予定。最近ハマっていることは、Google Earthのストリートビューで海外の街並みを見ること。世界旅行気分を味わうことができるんだとか。

政治に対する期待は、治安維持と税金の使い方

以前のMBTIの記事、面白かったって多くの読者の方にコメントをもらったよ。今回のテーマは参院選なんだけど、Tくんは今回の参院選をどう見てたの?

ありがとうございます。それはよかったです(笑)

 

僕自身は政治に関心が高い方ではないと思いますが、選挙は18歳で選挙権を得てから欠かさず行っています。

偉いね!今回の選挙では、政治に対してどんなことを期待していたの?

今回は、不法移民で治安が悪化している地域があるので、もっと厳格な入国管理や治安維持をしてほしい。

 

あとは、税金の使い方。社会保障だけでなくてもっと若者に税金を使ってほしい、ということを思っていました。

なるほどね。関心が高くないと言いつつ、現状の政治に思うところはあるのね。

生成AIを複数活用して情報の質を高める

今回の参院選では、Tくんはどうやって投票先を決めたの? AIを使っていろいろやったとか。

はい。細かいんですがこんな感じで投票先を決めました。

 

1.まず、ChatGPTに「東京選挙区の候補者情報」を問い合わせ、候補者一覧とプロフィールを整理しました。

 

2.Perplexityでも同様の質問を行い、記載内容をクロスチェック。

 

3.XのGrokを使って各候補者の発信内容を調べて。

 

4.テレビや日経新聞やWBSも見ました。

 

5.友達とこの政党盛り上がっているよねとか、ヤバいよねとか、真剣に話すというよりかは、選挙パフォーマンスを楽しむ感覚で話してます。

 

6.最後に、政策の中身、実績、自分と価値観との整合性を確認して、最も自分の考えに近い候補者を選択した感じです。

各候補者についてPerplexityに聞く

すごいAIネイティブだし、スマート(笑)。AIに全頼みではなくて、ニュース記事を見たり友達と話したり複合的に投票先を決めてるんだね。

気になったのは、生成AIをChatGPTとPerplexityとGrokでどうして使いわけてるの?

ChatGPTは何でも屋って感じで使いました。ざっくり情報を整理して全体像を知るために使いました。

 

ChatGPT-4oの出力は即時性や出典確認がちょっと弱いので、その部分はニュースや一次情報に強いPerplexityで補強した感じです。

 

「候補者が最近どんなこと言ったのか」は候補者のSNSが一番情報が早いので、XのAIのGrokでリアルタイムの動向を調べました。

 

それぞれのAIツールの得意分野が違うので役割分担させてる感じです。

最終的に、どこからは自分の意思で決めたの?

さすがに、AIにだれに投票すべきかまではAIに聞きませんでした。

 

AIに集めてもらった情報と自分が持っている情報を照らし合せて候補者を3人ぐらいに絞りました。その上で、自分の考えに合う人を選んで、投票しました。

 

オールドメディアでは求める情報は得られない

無責任に票を入れるわけにはいかないけど、全部調べたら大変というのが一番大きいです。

 

正直、僕は政治に対しては諦めている部分があるので、そこまで関心が高くはない方だと思います。

 

でも、国民の義務でもあるし、自分の意見が反映されるかもしれない。それって一般人の唯一の機会でもあるので、候補者を選ぶための情報の質を効率よく高める手段として使いました。

普通に調べてもオールドメディアにぶち当たるだけですよね。

 

オールドメディアは選挙の戦局を伝えるだけで、自分の選挙区の詳細な部分まで伝えくれないじゃないですか。

 

AIに集めてきてもらった情報の方が、自分が求めている情報に近くて良いなと思いました。

オールドメディア、って若者言葉として浸透しているのね……。

投票先を生成AI任せで決める人が増える?

Tくんはかなり先進的なタイプだと思うけど、そんなTくんから見て今後選挙でどういうことが起こると思う?

今後誰でもAIを使うようになったら、よくわからないからAIに聞いて投票先決めちゃえ、みたいな人、いっぱい出てきそうですよね。

 

AIも一定の基準で情報を取捨選択しているので、その基準に沿って選ばれた候補者に多くの人が投票し、結果的に「AIによる組織票」のような現象が起きるのではないかと感じています。

やっぱり人間って楽をしたい生き物だと思うので、こうやってなにも考えずにAIに任せの人ってますます増えそうだなと。

 

最近、AIだけ使ってメール書いたり仕事してたのがばれて怒られたーって言ってる先輩とかいてやばいなと思いましたし。

 

個人的には、そういう頭を使わない人と仕事をするのってイヤですね。人間なのかAIに染まったロボットなのかどっちなんだ(笑)って思います。

まとめ

Tくんから「AIによる組織票」というパワーワードが出てきたが、恐ろしいことである。

AIに質問して投票先を決める人が増えれば、自ずとポピュリスト政党の票が伸びる未来が目に見える。すでにそのような世界になっている気もする。

現状は投票先の検討に生成AIを使う人は「最後は自分で総合的に判断して投票先を決めるべき」と考えるような情報リテラシーが高い人たちではないか、と思う。

しかし、誰もがAIを使うようになれば「よくわからないからAI頼み」という人たちが政治に大きな影響を与えるようになるのではないだろうか。民主主義の未来やいかに。