就活のESはAIで書くと見抜かれる?人事と学生の攻防と通る使い方

エントリーシートの締切前夜、生成AIに「ガクチカを400字にまとめて」と打ち込む。いまの就活生にとって、これは珍しい行動ではありません。
一方で読み手の人事も、AIの気配がする文章を毎日浴びています。書く側と評価する側、双方がAIを手にした就活でいま何が起きているのか。学生研究員たちの実感を交えて読み解きます。

就活生はESのどこでAIを使っているのか

物心ついたときから検索とスマホがあり、大学在学中に生成AIが日常になったAIネイティブ世代にとって、就活はAIがもっとも役に立つ場面のひとつです。研究所の学生研究員に聞いても、使い方はほぼ共通しています。

  • ESの下書き。設問と自分の経験を渡して、たたき台を出させる
  • ガクチカの棚卸し。サークルやアルバイトの経験をAIに質問させながら整理する
  • 面接の想定問答。ESを読み込ませて、聞かれそうな質問と深掘りの流れを予測させる
  • 企業研究。中期経営計画やIR資料を要約させ、志望動機の材料にする

注目したいのは、全文をAIに書かせる学生が意外と少ない点です。むしろ「そのまま出したら落ちる」という感覚は、使い込んでいる学生ほど強く持っています。

人事が「AIっぽい」と感じる文章の特徴

採用側の話を聞くと、AIが書いたと断定するのは難しい一方、違和感を覚える瞬間ははっきりしています。その正体は、おおむね次の3つに集約されます。

特徴 人事の目にどう映るか
構成が均質 結論、根拠、学びの順序が整いすぎて、他の応募者と同じ骨格に見える
具体が欠けている 固有名詞や数字、失敗の描写がなく、誰の人生にも当てはまる文章になる
自分の言葉でない 多様なステークホルダー、価値を創出といった、学生が普段使わない語彙が並ぶ

つまり見抜かれているのはAIの使用そのものではなく、自分の経験を通っていない文章です。
書類は通っても、面接で深掘りされた瞬間に言葉が続かなければ、文章だけ整えていたことが相手に伝わってしまいます。

見抜く側もAIを使う|攻防はいたちごっこに

評価する側も手をこまねいているわけではありません。応募が集中する企業では、ESの読み込みや一次選考の補助にAIを使う動きが以前からあります。学生がAIで書き、企業がAIで読む。その光景はすでに現実のものです。

AIが生成した文章を判定するツールも存在しますが、精度には限界があり、人が書いた文章を誤って疑うリスクも指摘されています。だからこそ採用の現場では、書類の比重を下げ、面接や適性検査、実際の課題で人物を見る方向に軸足を移す企業が出てきました。
ESが書類の完成度を競う場から、面接で話す内容の予告編へ変わりつつあると言ってもいいかもしれません。

通るESにするAIの使い方|壁打ちと構成整理に留める

では、どう使えば武器になるのか。研究員たちが手応えを感じている使い方には共通点があります。

  • 書かせるのではなく、質問させる。「この経験について面接官として10個質問して」と壁打ち相手にする
  • 経験の棚卸しに使う。答えた内容をAIに整理させると、自分では気づかない強みが言語化される
  • 構成だけ借りる。骨格はAIに任せても、固有名詞とエピソードは必ず自分の記憶から書く
  • 最後に音読する。面接で自分の口から話せない表現は、すべて自分の言葉に置き換える

AIに書かせた文章が落ちるのではなく、AIにしか書けない内容しか手元にない状態が落ちる。研究所ではそう捉えています。

AI利用は不公平か|就活の公平性という論点

ここで避けて通れないのが公平性の問題です。有料版のAIを使える学生とそうでない学生、使いこなす情報感度を持つ学生とそうでない学生。差がつくのは事実です。

ただ、就活にはもともとES添削サービスやOB訪問、就活塾といった、持てる者に有利な仕組みが存在してきました。AIはむしろ、こうした支援を低価格で万人に開いた面もあります。
問われるべきはAIの存在ではなく、AIを前提にしていない選考設計の方ではないか。研究所ではそんな議論になることが多いです。AIに仕事を奪われる不安と地続きの話でもあり、就活はその不安と可能性が最初に交差する場所になっています。

ESはAIとの共同作業を前提に変わっていく

生成AIの利用を禁止しても、確実に検出できない以上は建前になります。実際に、利用を認めたうえでAIとどう協働したかを見ようとする企業も現れ始めました。
問われる力が、整った文章を書く力から、自分の経験を素材として差し出しAIと対話しながら磨く力へ移っていく。それはAIネイティブの学生たちが社会に出てから発揮する働き方の、予行演習でもあります。

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よくある質問

AIで書いたエントリーシートは人事に見抜かれますか?

AIが書いたと断定するのは難しい一方、構成が均質で、固有名詞や失敗談などの具体がなく、学生が普段使わない語彙が並ぶ文章には違和感を持たれやすいです。書類を通過しても、面接で深掘りされて答えられなければ、経験に裏打ちされていないことが伝わります。

就活でAIを使うのはやめたほうがいいですか?

使うこと自体が問題になる場面は減っており、大切なのは使い方です。文章を丸ごと書かせるのではなく、経験の棚卸しや構成の整理、想定問答の壁打ち相手として使い、最終的な表現は自分の言葉で書き直す方法が向いています。

企業側も採用選考でAIを使っていますか?

応募が集中する企業を中心に、エントリーシートの読み込みや一次選考の補助にAIを活用する動きがあります。あわせて書類の比重を下げ、面接や適性検査、実際の課題を通じて人物を評価する方向に選考を見直す企業も出ています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。