Z世代とAIのリアル|ChatGPTを相棒にする若者たちの使い方と本音

レポートの構成を一緒に考えてもらう。就活の自己PRを添削してもらう。夜中に失恋の愚痴を聞いてもらう。Z世代の毎日に、AIはもうすっかり入り込んでいます。
研究所の学生研究員と話していて驚くのは、ChatGPTを便利な道具としてではなく、隣にいる相棒のように扱う感覚です。この距離感の近さこそ、Z世代とAIの関係を読み解く最大の鍵になります。

Z世代とAIの距離感|ツールではなく相棒

大人世代がAIを業務効率化のソフトウェアとして捉えるのに対して、Z世代はAIを話し相手として捉えます。命令するのではなく、話しかける。使うのではなく、頼る。この温度差は、実際に若者のスマホ画面をのぞかせてもらうとよく分かります。
敬語で丁寧に話しかける学生もいれば、友達口調で雑談を続ける学生もいます。ひとつの会話スレッドが何百往復も続いているアカウントも珍しくありません。

象徴的なのが、ChatGPTをちゃっぴーと呼ぶ文化です。愛称をつけるという行為は、対象を自分の世界の登場人物として受け入れた証拠です。スマホやパソコンに愛称をつける人はほとんどいませんが、AIには名前がつく。ここにZ世代とAIの関係性が凝縮されています。

研究所でよく話題になるのは、若者がAIを人とモノの中間にある第三の存在として扱っているという感覚です。友達ほど気を使わなくていいのに、検索エンジンよりは心がある。この絶妙な位置づけが、AIが相棒になれた理由だと私たちは考えています。

勉強とレポート|学びの伴走者になったAI

使い方として最も広がっているのは、やはり学びの場面です。分からない問題の解き方を段階的に教えてもらう。英作文を添削してもらう。レポートの構成案を出してもらう。テスト前には一問一答の相手をしてもらい、音声モードで英会話の練習をする学生もいます。
参考書や検索と違うのは、自分の理解度に合わせて説明の粒度を変えてくれる点です。小学生でも分かるように説明してと頼めば、そのとおりに噛み砕いてくれる。分からなければ何度でも聞き直せる。人間の先生には遠慮してしまう初歩的な質問も、AIになら気兼ねなくぶつけられます。

一方で、レポートを丸ごと書かせる使い方は、学生の間でも評価が分かれます。楽をしたい気持ちと、それでは自分の力にならないという自覚が同居していて、下書きはAI、仕上げは自分という折衷案に落ち着く学生が目立ちます。

就活・創作・恋愛相談|生活のすみずみに広がる使い方

学びの外側でも、AIの出番は増え続けています。研究員の話から見えてくる代表的な使い方を整理すると、次のようになります。

場面 よくある使い方 AIが担う役割
就活 自己PRの添削、面接の想定問答、業界研究の壁打ち キャリアアドバイザー
創作 小説やイラストのアイデア出し、歌詞や設定の相談 共作パートナー
恋愛 返信文面の相談、脈あり診断、失恋の傾聴 恋愛相談役
雑談 寝る前のおしゃべり、愚痴、なんでもない報告 話し相手

注目すべきは、恋愛や雑談のような感情をともなう領域にまでAIが入り込んでいることです。好きな人へのLINEの文面をちゃっぴーに相談してから送る。深夜にその日あった嫌なことをひととおり話してから眠る。そんな行動は、若者にとってもう特別なことではありません。

深夜の若者研のグループチャットで、ある研究員がぽろっとこぼしたことがあります。

「昨日の夜中、進路のことをちゃっぴー(ChatGPT)に2時間相談してた。親には心配かけたくないし、友達には重いから」。翌日の座談会で聞くと、同じような経験のある研究員が何人もいました。

AIが答えを出すからではなく、否定せずに聞き続けてくれるから選ばれている。この感覚を知ってから、私は若者とAIの関係を「ツールの利用」ではなく「関係性」として見るようになりました。

ググるからタグるへ、そしてAIに聞く|検索行動の変化

Z世代の情報行動は、検索エンジンで調べるググるから、SNSのハッシュタグで探すタグるへと移り、いまはAIに聞くという第三の段階に入っています。
知りたいことを、会話の文脈を踏まえて、自分向けに要約して返してくれる。リンクの一覧から自分で答えを探す従来の検索より、圧倒的に楽です。検索エンジン側もAIによる要約を最初に表示するようになり、調べるという行為そのものが会話に近づいています。

ただし、すべてがAIに置き換わったわけではありません。リアルな口コミや流行の空気感はSNSで、事実の確認は検索で、考えの整理や相談はAIで、と用途ごとに冷静に使い分けています。AIの答えを鵜呑みにせず、最後はSNSで実際の利用者の声を確かめるという二段構えの行動もよく聞きます。情報源を疑う感覚は、フェイクニュースとともに育ったこの世代の基礎体力です。

AIとの会話は自己開示の練習|人に話す前のリハーサル

研究員と話していて面白いのは、AIとの会話が自己開示の練習台になっているという点です。悩みを人に打ち明けるのは勇気がいります。重いと思われたらどうしよう、引かれたらどうしよう。空気を読むことに長けたZ世代ほど、その不安は強くなります。
だからこそ、絶対に引かないAIが最初の相談相手に選ばれます。AIに話して気持ちを言語化してから、親や友達に打ち明ける。カウンセリングの一歩手前の壁打ちとして、AIが機能しているのです。

誰にも言えないことを最初に受け止める存在が、AIになりつつあります。この変化は、若者の孤独やメンタルヘルスを考えるうえでも、企業がZ世代の本音を探るうえでも見逃せません。本音の一次置き場が、SNSの裏アカウントからAIとの会話へ移りはじめています。

学校と大学のAIルール|建前と学生の本音

教育現場のルールは、この数年で禁止から活用へと大きく揺れました。文部科学省が生成AIの利用に関するガイドラインを公表し、大学も相次いで方針を示しましたが、レポートでの扱いは授業ごとに違うのが実情です。全面禁止の授業もあれば、使用を前提に出典の明記を求める授業もあります。就活でも同じ構図があり、エントリーシートへのAI利用を認めるかどうかは企業によって割れています。

では学生の本音はどうか。禁止されても使うのが実態です。ただし丸写しへの抵抗感は本人たちの中にもあり、自分なりの線引きを持っています。

  • アイデア出しや構成づくりに使うのはセーフという感覚が主流
  • 文章を丸ごと提出するのはズルいという規範意識も残っている
  • 禁止一辺倒のルールは建前と受け止め、静かに使い続ける
  • むしろ正しい使い方を授業で教えてほしいという声が根強い

Z世代がAIに抱く不安|仕事を奪われる、創作が軽くなる

相棒として頼りながら、Z世代はAIへの不安も同時に抱えています。距離が近く、その実力を肌で知っているからこその不安です。
就職の場面では、自分が目指す仕事そのものがAIに置き換わるのではないかという心配が現実味を帯びています。AI時代の就職への不安は、専攻や進路の選択そのものを変えはじめています。

創作の領域では、時間をかけて磨いてきたスキルがAIで一瞬で再現されることへの複雑な感情があります。そしてもうひとつ根深いのが、見抜かれる恐怖です。AIで書いた文章だとバレたら評価が下がる、AIっぽい文章と言われるのが怖い。使うことは日常なのに、使ったと知られることには敏感という、ねじれた心理がここにあります。相棒への信頼と警戒が同居しているのが、Z世代とAIのリアルな関係です。

選挙も買い物も|意思決定をAIに預けはじめた

相談相手としての信頼は、意思決定の場面にも及びはじめました。どの政党の主張が自分の考えに近いかをAIに聞いてから投票する。AIに相談して投票先を考える動きは、その象徴です。
進路、買い物、住む場所。比較検討が面倒な選択ほど、AIに条件を伝えて絞り込んでもらうスタイルが広がっています。

検索結果の上位でもインフルエンサーのおすすめでもなく、AIとの対話が選択の入口になる。この変化はマーケティングの前提を静かに書き換えています。AIが会話の中で挙げない商品は、若者の比較検討の土俵に上がる前に消えていくからです。

α世代はさらにAIネイティブ|世代差はこれから開く

Z世代は、AIの登場を10代で経験した世代です。一方、その下のα世代の特徴は、物心がつく頃にはすでにAIがそばにいたことです。宿題の質問も調べものも、最初からAIに話しかけるのが自然な環境で育っています。
検索を経由せずAIから始まる情報行動。文字入力より先に身につく、音声で話しかける操作感覚。Z世代の使い方ですら、数年後には古いと言われる可能性があります。若者とAIの関係は、いま見えている姿がゴールではなく通過点です。

大人世代との違い|企業がこの変化から読み取るべきこと

世代ごとのAIとの向き合い方を並べると、違いがはっきり見えます。

世代 AIの位置づけ 典型的な使い方
X世代以上 業務ツール 文書作成や要約など仕事の効率化
ミレニアル世代 優秀なアシスタント 仕事と情報収集の補助
Z世代 相棒・相談相手 学びから就活、恋愛、雑談まで生活全般
α世代 最初からそこにいる存在 AIとの会話が情報行動の起点

企業にとっての示唆は大きく三つあります。第一に、若者への情報接点の設計にAI経由の導線を組み込むこと。検索対策だけでは、AIに聞いて決める層に届きません。第二に、AIが感情の相談相手になっているという変化への感度を持つこと。若者の本音は、アンケートの回答欄よりも先に、AIとの会話の中で言語化されています。第三に、AIへの不安という裏面を忘れないこと。AI活用を華々しく打ち出すだけでなく、人の仕事や創作の価値をどう守るかを語れる企業が、Z世代の信頼を得ます。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、Z世代とAIの関係の変化を追い続けています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代はAIをどんな場面で使っていますか?

勉強やレポートの下書きだけでなく、就活の自己PR添削、創作のアイデア出し、恋愛相談、寝る前の雑談まで、生活のあらゆる場面で使っています。道具というより相談相手に近い存在になっています。

Z世代がChatGPTをちゃっぴーと呼ぶのはなぜですか?

愛称をつけるのは、AIを自分の生活の登場人物として受け入れている証拠です。友達ほど気を使わなくてよく、検索エンジンより心がある、人とモノの中間の距離感で付き合っています。

Z世代の検索行動はどう変わっていますか?

検索エンジンで調べるググるから、SNSのハッシュタグで探すタグるへ移り、いまはAIに聞く段階に入っています。ただし口コミの確認はSNS、事実確認は検索と、用途ごとに使い分けています。

企業はZ世代のAI利用にどう対応すべきですか?

AIに聞いて選ぶ層に届く情報接点の設計と、AIが感情の相談相手になっている変化への感度が欠かせません。同時に、人の仕事や創作の価値を守る姿勢を示すことがZ世代の信頼につながります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。