レポートの下書きも、献立の相談も、失恋の愚痴の聞き役も、同じチャット画面で済ませる。そんな学生がもう珍しくありません。若者研究所の学生研究員と話していても、生成AIは目新しいツールというより、スマホに最初から入っている機能くらいの温度感で語られます。実際のところ、Z世代はどれくらい、何のために生成AIを使っているのか。公開されている調査データに研究所の肌感を重ねると、輪郭がはっきり見えてきます。
20代の利用経験は44.7%|総務省の白書が示す世代差
総務省が2025年に公表した令和7年版情報通信白書によると、生成AIを使ったことがある人は日本全体で26.7%でした。前年の9.1%から3倍近くに伸びたとはいえ、まだ4人に1人という水準です。
ところが年代別に見ると、景色がまるで変わります。
| 年代 | 生成AIの利用経験率 |
|---|---|
| 20代 | 44.7% |
| 30代 | 23.8% |
| 40代 | 29.6% |
| 50代 | 19.9% |
| 60代 | 15.5% |
20代だけが飛び抜けて高く、ほぼ2人に1人が使った経験を持つ計算です。仕事で触れる機会が多いはずの40代が30代を上回っている点も目を引きますが、それでも20代との差は15ポイント以上あります。
大学生は6割超が毎日利用|民間調査が映す最前線
Z世代の中でも大学生に絞ると、数字はさらに跳ね上がります。on the bakery社が2025年に発表した大学生・Z世代対象の調査では、66.4%が生成AIをほぼ毎日利用すると回答しました。最もよく使うサービスはChatGPTで、約8割を占めています。
イマーゴが実施した大学生調査でも、週1回以上使う学生は約8割にのぼりました。
白書の「使ったことがある」と、民間調査の「毎日使う」。設問の違いはあるにせよ、この落差が示すのは、同じZ世代の中でも学生が突出した最前線にいるという事実です。授業でもゼミでも就活でも、まず生成AIに触れざるを得ない環境があり、そこから生活全体へ染み出していく。研究所で見ている浸透の順番も、まさにこの通りです。
勉強の相棒からAI彼氏まで|利用シーンの広がり方
研究員たちの使い方を聞いていくと、学業と生活の境目がほとんどないことに驚かされます。
- 授業の録音の文字起こしと要約、レポートの構成づくり
- 就活のES添削、面接の想定問答の壁打ち
- 献立や旅行プラン、プレゼント選びの相談
- 悩みごとの整理、雑談、ときには恋愛相談
イマーゴの調査でもAI彼氏や人生相談といった生活領域への広がりが確認されており、学生の実感と重なります。学業面での具体的な使いこなしはChatGPTを使った勉強法で詳しく扱っていますが、勉強はあくまで入口にすぎません。そこから先の生活領域にこそ、この世代らしさが表れます。
検索の代わりではなく壁打ち相手|研究員と話して見えた肌感
数字の外側で印象的なのは、生成AIとの距離感です。研究員たちは答えを教えてもらう機械としてではなく、考えを整理するための相手として使っています。
質問を投げて正解をもらうのではなく、モヤモヤを投げて言葉にしてもらう。Z世代にとって生成AIは検索エンジンの進化版というより、否定してこない壁打ち相手に近い存在です。
一方で、AIの答えを鵜呑みにしているわけでもありません。買い物や店選びの最終確認はSNSの口コミや実際の写真で行うという声が多く、AIとSNSに別々の役割を持たせる感覚は、AIネイティブと呼ばれるこの世代ならではのリテラシーだと感じます。
日本は世界に後れ、若者が先行|国際比較で見える構図
同じ白書の国際比較では、生成AIの利用経験は米国68.8%、ドイツ59.2%、中国81.2%。日本全体の26.7%は大きく見劣りします。
ただし日本の20代の44.7%だけを取り出せば、その差はぐっと縮まります。国全体としては出遅れているものの、若い世代が国内の利用をけん引し、世代交代とともに底上げされていく構図です。
言い換えれば、いまZ世代の使い方を観察することは、数年後の日本の標準的なAIとの付き合い方を先取りして見ることでもあります。
企業はこの実態をどう受け止めるか
ぐぐる前にAIに聞く若者が増えるほど、情報との出会い方は変わります。商品名やブランドがAIの回答に自然に登場するか。比較検討の壁打ちに耐えるだけの情報が公式サイトにあるか。SNSでの最終確認に足る実物の証拠があるか。若者向けのマーケティングは、この3点をセットで設計する段階に入っています。
若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、数字の裏側にある生の使われ方まで掘り下げ、企業のマーケティングと商品開発を支援しています。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
Z世代の生成AI利用率はどのくらいですか?
総務省の令和7年版情報通信白書では、20代で生成AIを使ったことがある人は44.7%と全年代で最も高い水準です。大学生に限った民間調査では毎日利用する人が6割を超えるという結果もあり、若い層ほど日常的に使う傾向が強まっています。
Z世代は生成AIを何に使っていますか?
レポート作成や要約といった学業用途に加えて、献立の相談、就活のES添削、悩みごとの壁打ち、恋愛相談のような生活領域まで幅広く使われています。正解を調べる道具というより、対話しながら考えを整理する相手として使う点が特徴です。
日本の生成AI利用率は海外と比べて高いですか?
総務省の調査では、日本で生成AIを使ったことがある人は26.7%にとどまり、米国の68.8%や中国の81.2%と比べて低い水準です。ただし20代に限れば44.7%と国内平均を大きく上回っており、若い世代が日本の利用をけん引しています。


