若者の本音が聞きたくて座談会を開いたのに、集まったのは当たり障りのない優等生コメントばかり。企業のマーケティング担当者から、そんな相談をよく受けます。若者研究所では現役の学生研究員が集まる座談会を日常的に回していますが、その経験から言えるのは、座談会の成否は話し始める前の設計でほぼ決まるということです。
若者座談会が「発表会」になってしまう理由
大人が主催する座談会で若者の口が重くなるのは、人見知りだからではありません。
会議室に通され、スーツの大人に囲まれ、目の前に録音機を置かれる。この時点で多くの若者は、ここは正解を答える場だと理解します。学校の授業や就活の面接で鍛えられた、期待に応えるモードに切り替わってしまうのです。
つまり若者座談会でまず考えるべきは、話させる技術ではなく、この正解モードをどう解除するかという場づくりです。
設計の基本|人数・時間・メンバーの組み合わせ
座談会は若者リサーチの入り口として選ばれやすい手法ですが、設計を省くとただの雑談会で終わります。研究所の座談会は少人数が基本です。人数が増えるほど一人あたりの発言時間は減り、声の大きい参加者の意見に場が引っ張られやすくなるからです。
| 人数 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 3〜4人 | 深掘りしたいテーマ。恋愛やお金など話しにくい話題 | 相性が悪いと会話が続かない |
| 5〜6人 | トレンドの探索。意見の幅を広く見たいとき | 発言量の偏りをモデレーターが調整する |
| 7人以上 | アイデア出しやワークショップ形式 | 本音の深掘りには不向き |
メンバー構成にもコツがあります。全員初対面よりも、友人同士のペアを一部に混ぜると、日常会話に近いテンションが早く生まれます。
ただし全員が同じ仲良しグループだと内輪の文脈に閉じてしまうため、知り合いと初対面が混ざる比率を意識して集めます。時間は本題だけで90分も話せば十分で、それより長いと後半の発言は薄くなっていきます。
場づくりの実務|研究所の座談会で毎回やっていること
学生研究員との座談会で、私たちが毎回欠かさない準備があります。
- 机は対面ではなく囲む配置にして、お菓子と飲み物を先に開けておく
- 本題の前に10分ほど雑談する。最近買ってよかったものなど答えやすい話題から
- モデレーターが先に自己開示する。自分の失敗談を話すと場の温度が一気に変わる
- スマホを禁止しない。むしろ実際の画面を見せてもらう起点として活用する
- 敬語を強要しない。ふだんの話し言葉のままでいいと最初に伝える
研究所でよく話題になるのは、若者は質問には身構えるけれど、雑談には本音を混ぜてくるということです。座談会の設計とは、質問の時間を雑談の空気で包み込む作業だと私たちは考えています。
問いの立て方|「なぜ」と正面から聞かない
なぜそれが好きなのかと聞かれた若者は、その場でそれらしい理由を作文してしまいます。本人に嘘をつくつもりはなく、聞かれたから理由をひねり出しているだけです。
研究所の座談会では、理由ではなく行動の再現を聞きます。最後にそれを買った日のことを順番に話してもらう。そのときスマホで何を見ていたかをたどってもらう。実際のSNSの画面やカメラロールを見せてもらう。
行動の記憶を具体的に再現してもらうと、本人も意識していなかった判断の瞬間が会話の中にふっと現れます。
発言が止まったときの立て直し方
どれだけ設計しても、場が固まる瞬間はあります。そこで焦って次の質問に進むのが、いちばんもったいない対応です。
研究所でよく使う立て直しは三つ。まず、書いてから話す。付箋やチャットに各自の答えを書いてもらってから口頭で共有すると、声の大きさに左右されず全員の意見が出ます。次に、少数派を拾う。みんなと違う答えを書いた研究員に先に振ると、同調の連鎖が切れます。そして、モデレーターがあえて的外れな仮説をぶつける。大人の解釈はそれ違うんだよなと訂正したくなる気持ちが、いちばん熱のこもった発言を引き出してくれます。
社内でやるか、外部と組むか
座談会は会議室と録音の準備さえあれば社内でも開けます。ただ、自社の社員が聞き手になると、参加者は商品を褒めるモードに入りやすく、批判的な本音は出にくくなります。参加者集めを社員の知り合いに頼ると、属性が偏る問題もあります。
継続的に若者の声を聞く仕組みを作りたいなら、目的から手法を逆算する調査設計に立ち返るのが近道です。仮説検証のために、より構造化された聞き方をしたい場合はグループインタビューという選択肢もあります。
若者研究所では、100人以上の現役学生研究員とともに、座談会や定点調査を通じて企業のマーケティングと商品開発を支援しています。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
若者の座談会は何人くらいで実施するのがよいですか?
深掘りしたいテーマなら3〜4人、意見の幅を広く見たいなら5〜6人が目安です。人数が増えるほど一人あたりの発言時間が減り、声の大きい参加者に場が流されやすくなります。7人以上はアイデア出しなどワークショップ形式に向いています。
座談会で若者の本音が出ないときはどうすればよいですか?
質問を重ねる前に、付箋やチャットに答えを書いてから話してもらう方法が有効です。声の大きさに左右されず全員の意見が出ます。また、みんなと違う意見を持つ参加者に先に発言してもらうと、同調の連鎖が切れて本音が出やすくなります。
若者座談会は社内でも実施できますか?
会議室と録音の準備があれば社内でも実施できます。ただし自社の社員が聞き手になると、参加者が商品を褒めるモードに入りやすく、批判的な意見は出にくくなります。率直な声が必要な場合は、第三者のモデレーターや外部の調査パートナーと組む方法があります。


