α世代マーケティング入門|10年後の主役に今から届くアプローチ

うちの商品はまだ子どもには関係ない。そう構えている間に、α世代は着々とブランドの好き嫌いを固めています。2010年ごろから2020年代半ばに生まれたα世代は、いちばん上がもう中学生。10年後には自分の財布を持って市場の主役になります。そしてそのとき選ばれるブランドの候補は、小学生である今、すでに絞り込まれつつあります。

なぜ今からα世代か|ブランドの刷り込みは小学生から始まる

子どもの頃に慣れ親しんだ味やロゴを、大人になっても選び続ける。お菓子や飲料に限らず、文房具から自動車まで、幼少期の記憶は購買行動に長く影を落とします。
α世代で変わったのは、刷り込みが起きる場所です。テレビCMの前ではなく、YouTubeのゲーム実況や好きな配信者の一言を通じて、ブランドは子どもたちの記憶に入り込みます。親も企業も知らないうちに、子どもの中で好きなブランドが育っていく。この構造を放置したまま10年後を迎えると、気づいたときには比較の土俵にすら乗れていません。
この世代がどんな環境で育ち、何を大切にしているのかは、α世代の特徴で掘り下げています。

購買は親子の共同決定|おねだりの構造を読み解く

α世代は自分のお金をほとんど持っていません。だから購買の単位は個人ではなく親子になります。
子どもが欲しがり、親が財布を開く。単純に見えて、ここには交渉の構造があります。

  • 子どもはYouTubeや友達経由で欲しいものに出会う
  • 値段や使い方まで調べて、親を説得する材料を自分で集める
  • 親は安全性や教育上の価値、家計への影響で判断する

つまりα世代マーケティングとは、子どもの欲しいと親の買ってもいいを同時に設計する仕事です。子どもだけに刺さっても、親が納得する理由がなければレジまでたどり着きません。親だけを見た商品は、肝心の子どもが使ってくれず長続きしません。

研究所でファミリー調査に立ち会うと、親へのプレゼンが上手な小学生に驚かされます。おねだりはもはや交渉です。子どもの熱量と親の判断基準、この両方を見ない限り、キッズ市場の購買は理解できません。

接点はYouTube・ゲーム・学校|テレビの外側にいる子どもたち

α世代に届けようとテレビCMを打っても、そもそもテレビをほとんど見ない家庭が増えています。接点は大きく3つに整理できます。

接点 子どもの過ごし方 マーケティングの入り口
YouTube ゲーム実況や好きな配信者を繰り返し視聴する 実況の中で自然に扱われる商品設計、配信者とのタイアップ
ゲーム マインクラフトやフォートナイトで友達と遊ぶ ゲーム内コラボ、アイテムやワールドの提供
学校 一人一台の端末で調べ学習をする 学習コンテンツなど教育文脈での出会い

学校が接点になったのはα世代ならではです。文部科学省のGIGAスクール構想で小学生が一人一台の端末を持ち、気になったことをその場で検索する習慣が当たり前になりました。調べれば分かる、が前提の消費者が育っています。

子どもだましが通じない世代|検索して比べる小学生

派手なパッケージとおまけで釣る。かつてのキッズマーケティングの定番は、α世代には通用しにくくなっています。気になった商品はすぐ検索し、レビュー動画を確かめ、友達の評価と突き合わせる。大人顔負けの比較検討が、小学生の日常に組み込まれています。
ゲーム実況で本音のレビューを浴びて育った世代は、広告と本音の区別にも敏感です。取り繕った宣伝文句は見抜かれ、下手をすると仲間内でダサいものとして共有されます。子ども向けだからと品質や説明の手を抜くことが、いちばんのリスクになりました。

キッズマーケティングの倫理と規制|信頼を失わない線引き

子どもに向けたマーケティングには、大人向けにはない責任が伴います。判断力が発達途上にある相手へ、広告と分からない形で売り込むことは許されません。最低限、次の線は守る必要があります。

  • 広告であることを子どもにも分かる形で明示する
  • ガチャのように射幸心をあおる仕組みに頼らない
  • 個人情報の取得は保護者の同意を前提にする
  • 親に内緒で、と促す表現を使わない

日本でも景品表示法にステルスマーケティング規制が加わり、子ども向けの表現に対する視線は年々厳しくなっています。忘れてはいけないのは、親が子ども以上に企業の姿勢を見ていることです。子どもへの誠実さはそのまま親からの信頼になり、長く効くブランド資産に変わります。

α世代マーケティングで失敗しやすいパターン

研究所に寄せられる相談で目立つのは、すでに走り出した施策の軌道修正です。つまずき方には型があります。

  • Z世代向け施策の流用。α世代はZ世代の弟や妹ではなく、育った環境が異なる別の世代です
  • 子どもだけ、あるいは親だけを狙う。共同決定の構造を外すと売れません
  • 子どもとはこういうものだろう、という大人の思い込みで企画する
  • 一度話題化して終わる。刷り込みは継続的な接点でしか育ちません

抜け道はシンプルで、当事者に聞くことです。ただし子どもへの調査は、保護者の同意の取り方から質問の言葉選び、集中力が続く時間まで、大人向けとは設計がまるで違います。設計の考え方は若者への調査手法にまとめています。

若者研究所では、子どもとその保護者を対象にした親子インタビューやファミリー調査で、キッズ向け商品の開発とマーケティングを支援しています。若者リサーチのご相談お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

α世代とはいつ生まれた世代ですか?

おおむね2010年代前半から2020年代半ばに生まれた世代を指します。オーストラリアの調査会社を率いるマーク・マクリンドル氏が提唱した呼び名で、Z世代の次にあたります。生まれたときからスマートフォンやタブレットが身近にある点が特徴です。

α世代向けのマーケティングはなぜ今から必要なのですか?

ブランドの好き嫌いは子ども時代の体験で形づくられ、大人になってからの購買行動にも影響するためです。α世代が自分の財布を持つ10年後に選ばれるには、小学生である今から接点を育てておく必要があります。

子ども向けの調査ではどんな配慮が必要ですか?

保護者の同意を前提にすること、子どもが理解できる言葉で質問すること、集中力が続く短い時間で設計することが基本です。誘導的な聞き方を避け、無理に答えさせない姿勢も欠かせません。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。