つけまつげに囲みアイライン、細眉、まぶたのラメ。平成の渋谷を彩ったギャルメイクが、いまZ世代の顔に戻ってきています。プリクラでギャルポーズを決め、制服にルーズソックスを合わせる高校生も、もう珍しくありません。当時を知らないはずの世代は、なぜこのメイクに惹かれるのでしょうか。
ギャルメイク再流行|いま何が起きているのか
象徴的な出来事が、ギャル雑誌eggの復活です。最盛期には50万部を発行し、2014年にいったん休刊した伝説の雑誌が、2019年に復刊して新世代ギャルの受け皿になりました。
TikTokやInstagramを開けば、ギャルメイクのハウツー動画が次々に流れてきます。カラコンにつけまつげ、デカ目に見せる囲みラインの引き方まで、平成のテクニックが令和の画面の中で日々共有されているのです。
研究所が定点観測している若者トレンドの中でも、ギャルカルチャーの復権はこの数年ずっと観測が続いているテーマです。
再流行の中身|つけま・囲みライン・細眉・ラメ
ただし、平成のメイクがそのままコピーされているわけではありません。研究員のポーチをのぞかせてもらうと、当時の道具立てを令和の感覚で編集し直している様子がよくわかります。
| 要素 | 平成のギャルメイク | 令和のリバイバル版 |
|---|---|---|
| つけまつげ | 上下に重ねてボリューム最優先 | 束感を足す部分づけで自然に盛る |
| アイライン | 黒でぐるりと囲み目力を強調 | ブラウンの囲みで抜け感を残す |
| 眉 | 極細のシャープなアーチ | 細めでも角を落としたやわらかい曲線 |
| 肌 | 日サロで焼いた小麦肌が主流 | 白肌のままギャルを名乗るスタイルが台頭 |
| ラメ | 大粒でギラギラと輝かせる | 涙袋に繊細な粒で光を集める |
とくに注目したいのが肌です。平成ギャルの象徴だった日サロ焼けは主流にならず、白肌のままギャルを名乗るスタイルが広がりました。形を忠実に再現するのではなく、盛るという姿勢だけを受け取り、自分たちの美意識に合わせて作り替えているわけです。
平成を知らないから新しい|Z世代の逆転構造
ここで押さえたいのは、いまの10代後半から20代前半にとって、平成ギャルは懐かしいものではないという事実です。ガングロやヤマンバが渋谷を席巻していたころ、彼らはまだ生まれていないか、物心がついていません。記憶の中に元ネタが存在しないのです。
つまりZ世代にとってギャルメイクは、再会ではなく初めての出会いです。親世代が青春で通過した文化が、子ども世代には未知の新作として届く。この逆転構造こそ、再流行を読み解く鍵になります。
研究員と話していて驚くのは、ギャルメイクを昔のものと認識していないことです。TikTokで流れてくる盛れるメイクの一種であり、韓国メイクや地雷系と並ぶ選択肢のひとつ。歴史としてではなく、フラットな品揃えの棚に平成が並んでいる感覚です。
Y2Kとニュートロ|懐かし可愛いの文脈
この現象は日本だけで起きているわけではありません。2000年前後のファッションを指すY2Kは、K-POPアイドルの衣装をきっかけに世界中の若者へ広がりました。ローライズデニムや小さなサングラスと並び、平成ギャルの装いも再評価の対象になっています。
韓国では新しさと懐かしさを掛け合わせて楽しむニュートロという言葉が定着し、古いものを新しい感性で消費するスタイルが当たり前になりました。平成ギャルメイクの再流行は、この世界的な流れの日本版といえます。2026年の若者トレンドを見渡しても、レトロの再解釈は数年単位で続く息の長いテーマです。
メイクの奥にあるもの|ギャルマインドへの憧れ
もう一段深いところに、精神性への憧れがあります。人の目を気にせず、好きな自分で堂々といる。落ち込んでも気持ちをアゲていく。そんなギャルの生き方は、同調圧力やSNSの相互監視に疲れた若者にとって、解放のモデルに映ります。
ギャルの思考法をビジネスに持ち込む動きも生まれました。合同会社CGOドットコムは自分軸、直感性、ポジティブ思考の3つをギャルマインドと定義し、ギャル式ブレストという手法を日産自動車や札幌市といった企業や自治体に提供して注目を集めています。
Z世代が本当に欲しいのは、つけまつげそのものではなく、つけまつげを堂々とつけられる心の強さなのだと感じます。メイクは、その精神をまとうためのスイッチとして機能しているのです。
美容業界への示唆|懐かしさは翻訳して届ける
平成ギャルメイクの再流行が教えてくれるのは、過去の資産はそのままでは売れない、という点です。支持されているのは当時の完全再現ではなく、白肌ギャルのように令和の美意識へ翻訳されたアレンジ版でした。リバイバルを企画に活かすなら、次の3点が出発点になります。
- 再現ではなく再解釈。当時の要素を今の美意識で編集し直す
- 主役は当時を知らない世代。前提知識ゼロで伝わる見せ方にする
- 道具だけでなく、その奥にある気分や精神性まで含めて提案する
若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、トレンドの裏側にある若者の本音を掘り下げています。コスメやファッションの企画に若者のリアルな声を取り入れたい方は、若者リサーチのご依頼やお問い合わせからお気軽にご相談ください。
よくある質問
平成ギャルメイクとはどんなメイクですか?
つけまつげや黒の囲みアイライン、細い眉、ラメを重ねて目元を強調するメイクです。1990年代後半から2000年代にかけて渋谷を中心としたギャル文化の中で広がり、雑誌のeggが象徴的な存在でした。
なぜZ世代の間でギャルメイクが再流行しているのですか?
当時を知らない世代にとっては懐かしさではなく新しさとして映ることが大きな理由です。Y2Kファッションの世界的な流行や、自分らしく堂々と生きるギャルマインドへの憧れも再流行を後押ししています。
再流行しているギャルメイクは平成当時と同じですか?
同じではありません。日サロで焼いた小麦肌ではなく白肌が主流になり、アイラインは黒ではなくブラウンで抜け感を出すなど、令和の美意識に合わせて再解釈されたアレンジ版が支持されています。


