板チョコを割ると、中から緑色のピスタチオクリームと糸状の生地がざくざくとあふれ出す。2023年末から世界のSNSを席巻したドバイチョコレートに、いま餅を掛け合わせた派生スイーツが現れ、Z世代の間で新しいバズを生んでいます。その名もドバイチョコ餅。もちもちとザクザクがひと口の中で同居する、食感のハイブリッドです。
ドバイチョコ餅とは|もちもちとザクザクが同居する新食感
ドバイチョコ餅は、ドバイチョコレートの核であるピスタチオクリームとカダイフを、やわらかい餅生地で包んだスイーツです。カダイフは小麦粉から作る極細の麺状生地で、焼くとパリパリ、ザクザクとした独特の歯ざわりになります。中東ではクナーファという伝統菓子に使われてきた素材です。
外はもちもち、中はザクザク。かじると、性質のまったく違うふたつの食感が時間差で押し寄せます。さらに割れば、緑のクリームと金色の繊維がのぞく断面が現れる。味と食感と見た目、三つの驚きがワンパッケージになっているのがこのスイーツの強さです。
源流はドバイの一軒のショコラティエ|バズの起点
原点は、ドバイのチョコレートブランドFIX Dessert Chocolatierが2022年に発売した板チョコです。創業者のサラ・ハムーダ氏が、中東の伝統菓子クナーファをチョコレートに閉じ込める発想で生み出しました。
世界的なブームの引き金は2023年12月。インフルエンサーのマリア・ヴェヘラ氏がTikTokに投稿した実食動画が爆発的に拡散し、再生回数は1億回を超えたと報じられています。板チョコを割った瞬間にクリームがとろりとこぼれ、ざくっという咀嚼音が響く。この数十秒の映像がすべての始まりでした。
バズの構造|断面と音と、手に入らないこと
ドバイチョコ系スイーツの拡散には、はっきりした型があります。
- 断面映え。割ると現れる緑のクリームと繊維状のカダイフは、写真1枚で未知の食べものだと伝わります
- ASMR。ざくざくという咀嚼音そのものがコンテンツになり、味を知らない人まで巻き込みます
- 希少性。本家FIXの板チョコは現地でも入手が難しく、買えないからこそ模倣レシピやアレンジ商品が次々に生まれました
研究所でよく話題になるのは、いまの食トレンドは味より先に音と絵で欲望が立ち上がるということです。実食動画は感想を伝える食レポではなく、体験の予告編として機能しています。
韓国経由の上陸ルート|海外発フードが若者に届く経路
ドバイチョコ餅が日本の若者に届くまでの道のりは、近年の海外発フードの典型例です。海外のSNSで火がつき、韓国のコンビニやカフェが素早くアレンジ商品を量産し、新大久保が輸入窓口となって先行ブームが起き、最後に日本の大手コンビニが全国流通に乗せる。餅と組み合わせるアレンジも、韓国での商品化競争の中から広がりました。
| 段階 | 舞台 | 起きたこと |
|---|---|---|
| 発祥 | ドバイ | FIXの板チョコが原点になる |
| 拡散 | 世界のSNS | ASMR実食動画が1億回以上再生される |
| 商品化 | 韓国 | コンビニ各社がアレンジ商品を量産し、餅入りが人気化する |
| 中継 | 新大久保 | 韓国トレンドの輸入窓口として先行して話題になる |
| 定着 | 日本のコンビニ | 大手チェーンの商品化で誰でも買える状態になる |
韓国を経由してから日本で流行るこの構造は、麻辣湯のブームとも重なります。日本の若者にとって韓国は、世界のトレンドを自分たちの感覚に翻訳してくれるフィルターとして働いているのです。
コンビニ商品化の現在地|バズが手の届く場所に来た
2026年春にはドバイチョコ餅の日本本格上陸がメディアで報じられ、コンビニ各社の展開が一気に加速しました。
- セブンイレブンはもちもち食感のドバイチョコもちを発売
- ファミリーマートはロッテと組んだアイスのドバイスタイルチョコレートバーを展開
- ナチュラルローソンはドバイスタイルもちもちクッキーを投入
行列と転売の対象だった高級チョコが、コンビニで気軽に試せる商品に変わる。バズの熱が冷めないうちに大量流通へ翻訳するこのスピードは、タピオカ以降の流行対応で日本の小売が磨いてきた型でもあります。
食トレンドの寿命と企業の乗り方|研究所の見立て
タピオカ、マリトッツォ、カヌレ。若者発の食トレンドは寿命が短くなったと言われ続けてきました。ところがドバイチョコは、すぐ消えるという予想を裏切り、チョコから餅、クッキー、アイスへと形を変えながら売れ続けています。核にあるのがザクザク食感と断面という体験であって、特定の商品ではないからです。
企業がトレンドに乗るとき勝敗を分けるのは、流行の名前を商品に貼ることではなく、バズの核にある食感や断面を自社の得意な形式に翻訳できるかどうかだと私たちは見ています。
ドバイチョコ餅は、その翻訳が餅という日本人になじみ深い素材で行われた好例です。食の動きも含めた2026年の若者トレンドの全体像は、親記事で詳しく整理しています。
若者研究所では、現役の学生研究員への定点調査やグループインタビューを通じて、食トレンドの兆しをつかみ、企業のマーケティングや商品開発につなげる支援をしています。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
ドバイチョコ餅とはどんなスイーツですか?
ピスタチオクリームと、カダイフと呼ばれる極細の麺状生地を餅で包んだスイーツです。外はもちもち、中はザクザクという食感のコントラストが特徴で、韓国で人気になったあと日本のコンビニでも買えるようになりました。
ドバイチョコレートはなぜ流行したのですか?
ドバイのブランドFIX Dessert Chocolatierが2022年に発売した板チョコが原点で、2023年末にインフルエンサーの実食動画がTikTokで1億回以上再生されたことが世界的なブームのきっかけです。割ったときの断面と、ざくざくという咀嚼音が人気を呼びました。
ドバイチョコ餅はどこで買えますか?
セブンイレブンのドバイチョコもちをはじめ、コンビニ各社からドバイチョコ系の商品が発売されています。ファミリーマートのアイスバーやナチュラルローソンのクッキーなど、形を変えた商品も展開されています。


