抹茶ブームはなぜ世界的な品薄を招いたのか|海外Z世代と日本への逆輸入

ニューヨークのカフェで抹茶ラテを待つ行列。TikTokで再生され続ける、茶筅で抹茶を点てる動画。いま抹茶は、日本文化の枠を越えて世界の若者の日常に入り込んでいます。その熱狂は産地の供給力を上回り、日本国内で抹茶が品薄になるという逆転現象まで起きました。海外Z世代は抹茶の何に惹かれ、このブームは日本の若者に何をもたらしているのでしょうか。

世界的な抹茶ブームの現在地|輸出はほぼ倍増、国内は品薄

抹茶を含む緑茶の輸出額は、2025年におよそ721億円と前年からほぼ倍増したと報じられました。日本経済新聞も、ラテや菓子など多彩な商品が世界で広がる一方、国内では品薄が続くと伝えています。
京都の宇治では老舗の店頭に外国人観光客の行列ができ、一人あたりの購入数に制限をかける店も出てきました。抹茶は碾茶という茶葉を石臼で挽いて作られます。収穫前に日光を遮る覆下栽培など手間のかかる工程が必要で、生産者の高齢化も重なり、需要が急増しても簡単には増産できません。ブームが不足を生む構造は、ここから来ています。

抹茶が世界に広がるまで|ハーゲンダッツからTikTokへ

抹茶フレーバーの大衆化には長い助走がありました。1996年にハーゲンダッツが抹茶味のアイスクリームを発売したことが転機の一つとされ、2001年にはスターバックスが日本で抹茶クリームフラペチーノを売り出します。苦くて渋い茶道のお茶だった抹茶が、甘くて親しみやすい味の選択肢へと姿を変えた時期です。
その後、海外のスターバックスでも抹茶ラテが定番化し、SNS時代に入ると鮮やかな緑色がフォトジェニックな素材として再発見されました。TikTokでは自宅で抹茶を点てる動画が人気ジャンルになり、抹茶は飲み物であると同時にコンテンツになったのです。

海外Z世代を捉えた3つの魅力|ヘルシー、映え、儀式性

海外の若者が抹茶を支持する理由は、大きく3つに整理できます。

魅力 海外Z世代の受け止め方
ヘルシー コーヒーより穏やかに感じられるカフェインと、スーパーフードとしての健康イメージ
映え 鮮やかな緑色がラテやスイーツで際立ち、SNSに投稿したくなる
儀式性 茶筅で点てるプロセスそのものが、丁寧な暮らしを演出するモーニングルーティンになる

注目したいのは3つ目の儀式性です。湯を沸かし、粉をふるい、茶筅を振る。この一連の所作が、慌ただしいデジタル生活の対極にある時間として価値を持ちました。
米国では美容や健康への意識が高い層に、韓国や中国ではK-POPアイドルの影響も受けたトレンドとして、それぞれ違う文脈で受け入れられているのも面白いところです。

研究所で話していると、海外の抹茶人気は日本文化への憧れだけでは説明できないと感じます。彼らは和を消費しているのではなく、自分たちのウェルネス文化の道具として抹茶を選んでいる。この主客の逆転こそが、ブームの本質ではないでしょうか。

日本の若者への逆輸入|和の飲み物から世界のMATCHAへ

海外で火がついたトレンドが日本の若者に逆輸入される流れは、いまや定番になりました。中東発のスイーツが日本で流行したドバイチョコと同じ回路です。
日本のZ世代にとって抹茶は、祖父母の世代の渋い飲み物ではなく、海外セレブが飲むおしゃれなMATCHAとして再入場してきました。海外のカフェ文化を経由したことで伝統の重さが抜け、トレンドとしての軽やかさをまとったわけです。国産の文化が外を一周して新鮮に見えるこの現象は、2026年の若者トレンドを読み解くうえでも重要な補助線になります。

インバウンド消費の主役へ|体験としての抹茶

訪日外国人にとって、抹茶は日本で体験したい食文化の筆頭格です。茶道体験や抹茶スイーツの食べ歩きは、SNSでシェアしやすい旅のコンテンツとして人気を集めています。
ここでも鍵になるのは体験です。ただ買って帰るのではなく、自分で点てた、産地で飲んだという物語ごと持ち帰る。お土産の抹茶菓子が売れるのも、帰国後に体験を再生し周囲に共有するためのメディアとして機能しているからだと考えられます。

食品業界への示唆|ブームを文化に変えるために

世界的な抹茶ブームから、食品やマーケティングに関わる人が学べることは少なくありません。

  • 味だけでなく、色と所作まで含めて設計する。映えと儀式性は商品開発の変数になる
  • 健康文脈への翻訳を用意する。伝統や本格ではなく、ウェルネスの言葉で語る
  • 供給の持続性を最初から考える。ブームが不足を生めば、価格高騰と代替品の流入を招く

抹茶が一過性の流行で終わるか、コーヒーのような世界の定番に育つかは、これからの数年で決まります。若者がどんな文脈で商品を手に取るのかを見誤らないことが、その分かれ目になるはずです。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、食品業界のトレンド分析と商品開発を支援しています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

なぜ世界で抹茶がブームになっているのですか?

健康志向に合うスーパーフードとしてのイメージ、SNS映えする鮮やかな緑色、茶筅で点てる所作の儀式性という3つの魅力が、海外の若い世代に支持されているためです。海外のスターバックスなどで抹茶ラテが定番化したことも背景にあります。

抹茶不足はなぜ起きているのですか?

抹茶の原料となる碾茶は、日光を遮る覆下栽培や石臼で挽く工程など手間がかかり、急な増産が難しいためです。世界的な需要の急増に生産者の高齢化も重なり、国内で品薄や価格高騰が起きています。

海外の抹茶ブームは日本の若者にどんな影響を与えていますか?

海外のカフェ文化を経由したことで、抹茶が伝統的な渋い飲み物ではなくおしゃれなトレンドとして再認識されています。海外で流行したものが日本に逆輸入されて広がる流れは、若者の消費で定番になりつつあります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。