デプスインタビューでZ世代の本音を掘る|90分の設計と質問の実例

Z世代に1時間インタビューしたのに、出てきたのは当たり障りのない答えだけだった。そんな声をメディアやマーケティングの現場からよく聞きます。彼らが心を閉ざしているのではなく、聞き方の構造が本音の出る形になっていないことがほとんどです。1対1でじっくり掘り下げるデプスインタビューは、その壁を越えるための手法です。

デプスインタビューが向くテーマ|1対1でしか出てこない話がある

デプスインタビューは、モデレーターと対象者が1対1で60分から90分ほど対話する定性調査です。周囲の目がないぶん、集団の場では決して出てこない話に届きます。特に向いているのは次のようなテーマです。

  • お金、外見、恋愛、家庭環境など、友人にも話しにくいテーマ
  • 進路選択や推し活の遍歴のような、時間をかけて聞く個人の物語
  • 本人もまだ言語化できていない購買の深層動機

とくに3つ目が重要です。人は自分の購買理由を後付けで説明します。安かったからという答えの奥に、承認欲求や不安の回避が隠れていることは珍しくありません。そこまで潜るには、1人の文脈を丁寧にたどる時間が必要です。

グループインタビューとの使い分け

複数人で話してもらうグループインタビューとは、得意分野がはっきり分かれます。

  デプスインタビュー グループインタビュー
形式 1対1で60〜90分 4〜6名で90〜120分
向くテーマ 言いにくい話と個人の深層動機 流行の共有度と反応の幅
得られるもの 1人の文脈と物語 世代内の相場観と温度差
弱点 人数を稼げない 同調圧力で本音が薄まる

Z世代は場の空気を読む力が高いぶん、集団では多数派に寄せた発言をしがちです。仮説を広く拾う段階ではグループ、1人の内面を検証する段階ではデプスと、調査のフェーズで使い分けるのが基本です。

90分の設計|前半はラポール形成に惜しみなく使う

デプスの成否は最初の20分でほぼ決まります。若者研究所で設計するときの標準的な流れはこうです。

  • 最初の15〜20分。調査と関係のない雑談から入り、ここは評価される場ではないと感じてもらう。ラポール形成の時間
  • 中盤の40分。生活の文脈を時系列で聞く。テーマにいきなり入らず、日常の中にテーマがどう現れるかをたどる
  • 終盤の30分。核心の深掘り。前半で本人が使った言葉を引用しながら、矛盾や引っかかりを一緒に見ていく

時間が足りなくなるのを恐れて前半の雑談を削ると、90分すべてが建前で終わります。遠回りに見える序盤こそが本体です。

Z世代特有の工夫|沈黙と「別に」の扱い方

Z世代とのデプスには固有のコツがあります。ひとつは沈黙を埋めないこと。考えている沈黙に大人が助け舟を出すと、相手はその選択肢に乗って自分の言葉を手放してしまいます。10秒待つ勇気がモデレーターには要ります。
もうひとつは「別に」を終点として扱わないことです。

研究員と話していて感じるのは、「別に」は拒絶ではなく、まだ言葉になっていないという合図だということです。別にって思ったとき頭に何が浮かんでいたか、と一段降りて聞くと、そこから語りが始まることがよくあります。

正解を探らせないことも大切です。企業の調査だと分かると、彼らは期待されている答えを高い精度で返してきます。あなたの答えがそのまま価値なのだと最初に伝えることが、遠回りのようでいちばんの近道です。

質問設計の実例|なぜを聞かず、場面を再生してもらう

質問は理由を尋ねる形から、事実を尋ねる形に変換します。なぜと聞かれた瞬間、人はもっともらしい理屈を作ってしまうからです。

  • なぜ買ったのですか、ではなく、買う直前にスマホで何を見ていましたか
  • そのブランドが好きな理由は、ではなく、最初に知ったのはいつどこでしたか
  • SNSをどう使っていますか、ではなく、昨日の夜に最後に開いたアプリは何でしたか

具体的な場面を再生してもらい、そこに映っている感情を一緒に言葉にしていく。デプスの深掘りとは、詰問ではなく再生と翻訳の作業です。

プロに依頼するときのポイント

自社で実施することもできますが、Z世代相手のデプスは対象者のリクルーティングとモデレーションの難度が高い手法です。依頼するときは次の点を確認してください。

  • 対象者と年齢の近い聞き手、またはZ世代の扱いに慣れたモデレーターがいるか
  • 謝礼目当ての調査慣れした人ではなく、テーマに合う対象者を集められるか
  • 発言録の要約ではなく、行間の解釈まで踏み込んだ分析を出せるか

デプスは調査全体の一部です。何を集団で聞き、何を1対1で掘るのかという若者リサーチ全体の設計から相談できる相手を選ぶと、得られる結果の質が大きく変わります。

若者研究所では、現役の学生研究員と経験豊富なモデレーターの体制で、Z世代のデプスインタビューを設計から分析まで支援しています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

デプスインタビューとグループインタビューはどちらを選べばよいですか?

テーマの性質で決めます。お金や外見など人前で言いにくい話や、個人の購買動機を深く掘りたい場合は1対1のデプスインタビューが向きます。流行の共有度合いや反応の幅を広く知りたい場合はグループインタビューが適しています。仮説探索はグループ、深掘り検証はデプスという順で併用する方法も有効です。

Z世代へのデプスインタビューは何分くらいが適切ですか?

60分から90分が目安です。前半の15分から20分は本題に入らず雑談で信頼関係を作り、中盤で生活の文脈を時系列に聞き、終盤に核心を深掘りする構成にすると、建前ではない語りが出やすくなります。時間を惜しんで序盤の雑談を削ると、全体が表面的な回答で終わりがちです。

対象者が別にとしか答えてくれないときはどうすればよいですか?

別にという言葉は拒絶ではなく、まだ言語化できていない合図であることが多いです。答えを急かさずに沈黙を待ち、その瞬間に頭へ浮かんでいたことを具体的な場面ベースで尋ねると、本人の言葉が出てきやすくなります。理由を直接問い詰めない姿勢が大切です。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。