オヤカクとは何か|内定辞退を防ぐ親確認が広がった背景と学生のリアル

内定を出した学生の親に、企業が電話や手紙で入社への同意を確かめる。就活の現場でオヤカクと呼ばれるこの動きが、採用の新しい常識になりつつあります。親確、つまり親への確認の略語です。学生本人はすでに納得しているのに、なぜ企業はわざわざ親の意向をうかがうのでしょうか。

オヤカクとは|内定後に企業が親へ入社の同意を確認すること

オヤカクとは、企業が内定を出した学生の保護者に対して、子どもの入社に同意しているかを確認する採用活動を指します。2010年代半ばごろから人事や採用支援の業界で使われ始めた言葉で、いまでは就活用語としてすっかり定着しました。

確認の方法はさまざまです。

  • 内定者の親に電話をかけて同意を確かめる
  • 内定通知や入社案内を親宛てにも郵送する
  • 入社承諾書に保護者の署名欄を設ける
  • 親向けの会社説明資料を用意して学生に持ち帰ってもらう

共通しているのは、採用の最終関門が学生本人ではなく親になっているという企業側の認識です。

広がった背景|売り手市場で主導権が学生に移った

オヤカクが広がった最大の要因は採用環境の変化です。少子化で若手人材の獲得競争は年々厳しくなり、リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査でも、大卒の求人はおおむね1倍を大きく上回る売り手市場が続いています。学生は複数の内定を持って企業を選ぶ側に回り、内定辞退は珍しいことではなくなりました。

企業からすれば、時間とコストをかけて口説いた学生に最後の最後で辞退されるのは大きな痛手です。そして辞退の理由をたどると、親の反対に行き着くケースが少なくない。だからこそ、内定を出した段階で親の同意まで取り付けておきたいという発想が生まれました。安定を重んじる親の目線と、やりがいや相性で選ぶZ世代の仕事観のずれが、オヤカクという言葉を生んだとも言えます。

親ブロック|たった一言で内定辞退が起きる

親が子どもの就職先に反対して内定辞退に至ることは、親ブロックと呼ばれます。ブロックの理由で目立つのは、知名度と安定性です。BtoBの優良企業や成長中のベンチャーであっても、親世代が名前を知らなければ「聞いたことのない会社で大丈夫なの」という反応になりがちです。テレビCMを打っている会社や公務員なら安心、という感覚は親世代に根強く残っています。

研究所で学生研究員と話していると、親の反対を押し切ってまで入社を貫くという声はむしろ少数派です。反対されたら考え直すかも、と自然に口にする。親は乗り越える壁ではなく、意思決定を一緒にするパートナーに近い存在です。

学生と親のリアルなやり取り|就活は家族のプロジェクト

いまの学生にとって、親は就活の最も身近な相談相手です。研究員たちの話を聞いていると、家族のLINEグループで選考の進捗を報告する、エントリーシートを親に読んでもらう、面接の前夜に想定問答に付き合ってもらう、といったエピソードが次々に出てきます。
内定が出たらまず親に電話するという学生も珍しくありません。親の側も、子どもから聞いた企業名を検索し、口コミサイトや年収の情報まで調べたうえで感想を伝えてきます。

反抗期がなかったと語る学生が多いこの世代にとって、親子は上下関係というより仲のよいチームです。就活は本人だけの勝負ではなく、家族のプロジェクトとして進んでいきます。

親世代と今の就活はここまで違う|すれ違いの正体

親の心配は、悪意ではなく経験の違いから生まれます。親世代が就活をした時代と現在とでは、前提がまるで異なるからです。

項目 親世代の常識 今の学生の感覚
雇用環境 大企業に入れば一生安泰 大企業でも先は読めない
会社の選び方 知名度と規模で選ぶ 働き方や相性で選ぶ
情報源 四季報や新聞、世間の評判 口コミサイトやSNS、社員の発信
転職 できれば避けたいもの キャリアの当然の選択肢

配属先や転勤の扱いも大きなすれ違いポイントです。会社に人事を委ねるのが当然だった親世代に対し、今の学生は配属ガチャという言葉に象徴されるように、入社後のキャリアの見通しを強く求めます。この溝を埋めないまま内定だけ出しても、家庭内の会話で足元をすくわれてしまうわけです。

企業のオヤカク対応|親向け資料から手紙、説明会まで

こうした状況を受けて、企業側の対応も進化しています。

  • 事業内容や福利厚生を親目線でまとめた保護者向けパンフレットの作成
  • 内定者の親に宛てた社長名の手紙や記念品の送付
  • 保護者を招いた会社説明会やオフィス見学会の開催
  • 研修制度やキャリアパスを丁寧に伝える内定者フォロー面談

ポイントは、親を説得の対象ではなく採用広報の受け手として扱うことです。子どもの人生を心配する気持ちに応える情報を届ければ、親は最強の入社の後押し役に変わります。逆に形だけの同意確認は、学生にも親にも見透かされます。若者の仕事選びの変化と親子関係の変化、その両方を理解した企業だけが、オヤカクを味方にできるはずです。

若者研究所では、現役の学生研究員へのインタビューや定点調査を通じて、就活生のリアルな意思決定プロセスを企業の採用活動やマーケティングに生かすお手伝いをしています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

オヤカクとはどういう意味ですか?

親確の略で、企業が内定を出した学生の保護者に対して、入社に同意しているかを確認する採用活動を指します。電話や手紙での確認、親向け資料の送付、入社承諾書への保護者署名欄の設置など方法はさまざまです。

親ブロックとは何ですか?

保護者が子どもの就職先に反対し、内定辞退につながることを指す言葉です。企業の知名度や安定性を重視する親世代の感覚から、名前を知らない企業への入社に不安を示すケースが目立ちます。

企業はオヤカクにどう対応すればよいですか?

保護者向けの会社説明資料の作成、内定者の親に宛てた手紙、保護者を招いた説明会や職場見学などが代表的です。親を説得の対象ではなく情報を届ける相手と捉え、事業内容や福利厚生を丁寧に伝えることが入社の後押しにつながります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。