Z世代はなぜ電話が苦手なのか|着信が怖い5つの心理と職場の対応

スマートフォンは一日中手放さないのに、電話には出ない。矛盾しているように見えて、Z世代の中では筋が通っています。若者研究所の学生研究員に聞くと、着信音が鳴った瞬間に体がこわばる、知らない番号はまず検索してから折り返すか決める、という声が次々に出てきます。
電話が怖いのは甘えでも社会性の欠如でもありません。育ってきた通信環境がつくった、世代の必然です。

電話が標準ではなかった|Z世代が育った通信環境

Z世代にとって、連絡手段の初期設定はテキストです。家に固定電話がなかった、あっても自分宛ての電話を取り次いだ経験がない、という研究員は珍しくありません。連絡はLINEで完結し、通話するとしても、事前にテキストで都合を確かめてからが礼儀。
つまり彼らの世界では、予告なしの音声着信は日常の連絡手段ではなく、例外的な緊急手段なのです。この前提の違いは、Z世代の特徴を理解するうえで最初に押さえたいポイントです。

観点 電話 テキスト
タイミング 相手の状況に割り込む 好きなときに読める
記録 残らない さかのぼって確認できる
返答 その場で即答 考えてから返せる
言い直し できない 送信前に推敲できる

心理その1|予告なしの割り込みに身構える

着信は、こちらの状況におかまいなしに飛び込んできます。課題の途中でも、動画を見ていても、電車の中でも。テキストなら自分のタイミングで開封できるのに、電話は今すぐ応答せよという合図として鳴り響く。
ある研究員は着信を、ノックなしで玄関のドアを開けられる感覚だと表現していました。自分の時間の主導権を奪われることへの抵抗感が、まず最初にあります。

心理その2|記録が残らないやり取りへの不安

日時や場所を口頭で伝えられて、聞き間違えたらどうするのか。メモを取り損ねたら、確認する手段がありません。テキストなら読み返せるし、スクリーンショットも残せる。
あとから言った言わないになるやり取りは、情報伝達の手段として信頼しきれない。検索と履歴が当たり前の環境で育った世代らしい、記録への感覚です。

心理その3|即答を迫られるプレッシャー

電話では沈黙が許されません。テキストなら数分考えてから返せる質問にも、その場で答えを出す必要があります。
SNSに投稿する前に文面を何度も練り直す習慣のある世代にとって、推敲ゼロの応答を求められる電話は、失敗の確率が高すぎるコミュニケーションです。うまく話せなかった記憶が一度でもあると、次の着信はさらに重くなります。

心理その4|敬語とビジネスマナーの緊張

お世話になっておりますから始まる一連の作法。保留の操作、取り次ぎの言い回し、切るタイミング。学校でも家庭でも練習する機会がなかったスキルを、社会に出た瞬間にぶっつけ本番で試されます。
間違えれば相手に失礼になり、会社の印象まで左右する。そう考えるほど受話器は重くなります。裏を返せば、苦手の正体が敬語運用の未経験にある以上、型の共有と場数で軽くできる部分でもあります。

心理その5|LINEで済むのにという合理性

そもそもその用件は、電話でなければ伝わらないのか。日程調整も資料の共有も、テキストのほうが正確で速い場面は多いはずです。
電話が怖いというより、電話を選ぶ理由が見当たらない。感情ではなく合理性で判断した結果、連絡手段の優先順位から電話が落ちている。この感覚を押さえると、単なる苦手意識とは別の顔が見えてきます。

研究所でよく話題になるのは、電話を避ける研究員ほど、親しい友人とは通話アプリで何時間も話しているという事実です。苦手なのは音声そのものではなく、コントロールできない状況と、失敗が許されない相手。ここを取り違えると、職場の対策も的を外します。

職場への示唆|根性論で克服させない設計へ

新人にまず電話番を任せる職場は、今も少なくありません。ただ、恐怖の構造を放置したまま場数だけ踏ませると、電話のたびに消耗し、離職の引き金にもなりえます。
有効なのは、本人の根性ではなく仕組みの側を変えることです。

  • 緊急は電話、記録が必要な用件はテキストと、使い分けの基準を明文化する
  • 社内の電話は、かける前にチャットで一報を入れる
  • 応対を任せるなら、想定問答のスクリプトと練習の機会をセットで渡す
  • 電話に出ないことを、人格や意欲の問題にすり替えない

電話を完全になくす必要はありません。声でしか伝わらない温度があることも、働くうちに彼らは学んでいきます。その前に、安心して失敗できる足場を用意する。Z世代社員との接し方を設計し直す起点として、電話問題はちょうどいい入口です。

若者研究所では、現役の学生研究員へのインタビューや定点調査を通じて、Z世代のコミュニケーション実態を企業のマーケティングや人事施策に届けています。若者リサーチのご依頼取材のお申し込みお問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代が電話を苦手に感じるのはなぜですか?

育った環境で連絡手段の基本がLINEなどのテキストだったためです。予告なく割り込まれる、記録が残らない、即答を迫られるといった電話の性質が、自分のペースで推敲してから返信する習慣と合わないことが主な理由です。

電話が苦手なのは甘えや社会性の欠如なのでしょうか?

いいえ。親しい相手とは通話アプリで長時間話す若者も多く、音声での会話そのものが苦手なわけではありません。コントロールできない状況や失敗が許されない相手との通話に負荷を感じているだけで、合理的な感覚の違いと捉えるのが適切です。

職場ではZ世代の電話への苦手意識にどう対応すればよいですか?

緊急時は電話、記録が必要な用件はテキストといった使い分けの基準を明文化することが有効です。電話をかける前にチャットで一報を入れる、応対のスクリプトと練習の機会を用意するなど、根性論に頼らない仕組みづくりが効果的です。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。