子どもに新商品を触ってもらいたい、小学生の生活実態を知りたい。そう考えて調査を企画した途端、大人向けの手順がほとんど通用しないことに気づきます。
許諾は誰から取るのか、何分なら集中が持つのか、自分の気持ちをまだ言葉にできない相手にどう聞くのか。若者研究所がα世代の調査で積み重ねてきた設計の考え方を、入口の許諾から実査の手法まで順に整理します。
子ども調査は大人向け調査の縮小版ではない
大人向けのインタビューを短くして、言葉を易しくすれば子どもにも使える。この発想がいちばんの落とし穴です。子どもを対象にした調査には、大人と地続きでない前提が3つあります。
- 本人だけでは調査が成立しない。参加の判断も当日の送り迎えも保護者が担うため、設計は常に親子セットで考えます。
- 集中できる時間が短い。大人なら1時間のインタビューに耐えられても、子どもは途中で飽きます。飽きた後の回答はデータになりません。
- 気持ちを言葉にする力がまだ育っていない。感想を尋ねても、楽しかった、の一言で終わるのが普通です。
調査対象となるα世代の特徴を押さえたうえで、この3つの前提に合わせて手法を選び直すところから設計が始まります。
保護者の許諾|同意は入口でていねいに取る
調査業界の自主ルールでも、子どもを対象にする調査では保護者の同意を得ることが原則とされています。ただし実務で大切なのは、同意書に判をもらうことではなく、保護者が安心して送り出せる状態を作ることです。
- 調査の目的、当日の流れ、撮影の有無、データの使い道を事前に文書で伝える
- 謝礼の内容と渡し方を先に明示する
- 途中でやめても不利益がないことを親子の両方に伝える
- 本人にも、参加したいかどうかを子ども自身の言葉で確認する
最後の項目は見落とされがちです。保護者が同意していても、本人が乗り気でなければ当日のデータは薄くなります。子ども向けの説明資料をひらがな中心で別に用意するだけで、会場の空気が変わります。
実査は短く|休憩を挟み、一度で欲張らない
子どもの集中は、大人が想定するよりずっと早く切れます。そして切れた瞬間から、回答は早く終わらせたいという動機で作られ始めます。
対策は構造で打ちます。1回あたりの時間を思い切って短くする、途中でからだを動かす休憩を挟む、聞きたいことが多いなら日を分けて複数回にする。長い1回より短い2回のほうが、得られるものは確実に濃くなります。
質問の順番にも工夫が要ります。最初に楽しい作業を置いて場に慣れてもらい、核心の質問は集中が残っているうちに済ませ、終盤は軽い感想に戻す構成が基本です。
言語化力に頼らない|観察と遊びベースの手法
なぜ好きなのと尋ねても、子どもは理由を説明できません。それは調査の失敗ではなく、問いの形が年齢に合っていないだけです。言葉の代わりに行動を見る手法に切り替えます。
| 手法 | やり方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 行動観察 | 商品やアプリを自由に使う様子を横で見る | 使いやすさの検証、最初のつまずきの発見 |
| 遊びベース | お絵かきや工作、ごっこ遊びに調査テーマを織り込む | 好き嫌いの理由、世界観の理解 |
| 選択式タスク | 実物やカードを並べて選んでもらう | パッケージやキャラクターの比較 |
| 親子ペアインタビュー | 保護者と並んで座り、一緒に話してもらう | 生活実態、購買の意思決定の把握 |
共通するのは、答えを口から引き出すのではなく、選ぶ、遊ぶ、触るという行動のなかに答えを表出させる発想です。
遊んでいる最中のつぶやきや、手が止まった瞬間こそメモの取りどころです。
研究所で子ども調査を設計するときの合言葉は、聞くより見せてもらう、です。子どもは言葉では大人に合わせられても、遊び方では嘘がつけません。
親子ペアインタビューの利点|ズレそのものがデータになる
子ども単独より成立させやすく、情報量も多いのが親子ペアの形式です。
第一に、子どもが安心して話せます。知らない大人と一対一で向き合う状況は、子どもにとってそれだけで非日常の緊張です。第二に、記憶や事実関係を保護者が補ってくれます。いつ買ったか、どのくらいの頻度で使っているかは親のほうが正確です。第三に、親の認識と子の実態のズレが見えます。もう飽きたと思っていましたと親が話す横で、子どもが夢中で遊び続けることがあります。このズレこそ商品開発のヒントです。
注意点はひとつ。親が子の代弁を始めたら、そっと本人に問いを返すことです。この子はこういうのが好きなんです、という語りが続くと、子どもは話す役割を手放してしまいます。
倫理配慮は調査の質と直結する
安心できる場でしか、子どもは本来の姿を見せません。倫理配慮は守りの手続きであると同時に、データの質を上げるいちばん確実な方法です。
- 写真や動画は撮影前に範囲を決め、目的外に使わない
- レポートでは個人が特定されない形に加工する
- 疲れや不機嫌のサインが出たら、予定より早くても切り上げる
- ほかの子との比較や優劣で子どもを傷つける聞き方をしない
調査全体の企画の立て方や手法選びの手順は若者リサーチの進め方で整理しています。子どもが対象の場合は、そこにここまで述べた許諾と実査の設計を重ねる形になります。
α世代の調査設計は若者研究所にご相談ください
子ども対象の調査は、設計の巧拙が結果をそのまま左右します。若者研究所は2010年の発足以来、Z世代とα世代の生活や心理を追い続けてきたシンクタンクです。現役の学生研究員100人以上のネットワークを生かし、若い世代を対象にした調査の設計から実査、分析までを一貫して支援しています。
遊びベースの実査設計、親子ペアインタビューの進行、保護者への許諾まわりの整備といった、子ども調査に固有の工程もまとめてお任せいただけます。若者リサーチのご依頼はもちろん、こんな調査はできるかという企画段階のお問い合わせも歓迎します。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
子どもへの調査には保護者の同意が必要ですか?
原則として必要です。調査業界の自主ルールでも、子どもを対象とする調査では保護者の同意を得ることとされています。同意書を交わすだけでなく、調査目的や撮影の有無、謝礼、データの扱いを事前に文書で伝え、子ども本人にも参加の意思を確認しておくと当日が円滑に進みます。
子どもへのインタビューは何分くらいが適切ですか?
年齢や個人差が大きいため一律の正解はありませんが、大人向けより大幅に短くするのが原則です。集中が切れた後の回答は精度が落ちるため、途中で休憩を挟む、聞きたいことが多い場合は日を分けて複数回にするなど、短い時間で完結する設計にします。
気持ちをうまく話せない子どもから本音を聞くにはどうすればよいですか?
言葉で理由を尋ねるのではなく、行動を観察する手法が有効です。商品を自由に使う様子の観察、お絵かきやごっこ遊びに調査テーマを織り込む遊びベースの手法、実物やカードを選んでもらう選択式タスクなどを組み合わせると、言語化力に頼らずに好みや使い方の実態をつかめます。


