Z世代の早期離職はなぜ起きる?大卒3割が40年変わらないデータの読み方

4月1日の朝、真新しいスーツの新入社員が入社式の列に並びます。その同じ日の夕方、退職代行サービスのモームリには、もう会社に行きたくないという新卒からの相談が届く。毎年春にこの対比が報じられるたび、最近の若者はすぐ辞めるという嘆きが聞こえてきます。
ただ、この嘆きは半分しか正しくありません。データの上では、若者は40年近く前から同じくらい辞めていました。変わったのは数ではなく、辞め方と理由のほうです。

大卒の3割は40年前から辞めている|厚生労働省の統計が示す事実

厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況によると、2022年3月に卒業した大卒者のうち、3年以内に最初の会社を離れた人は33.8%でした。およそ3人に1人という水準です。
ところがこの3割、実は今に始まった数字ではありません。統計を確認できる1987年卒の時点ですでに28.4%。就職氷河期末期の2004年卒では36.6%と過去最高を記録し、その後もずっと30%前後を行き来しています。

卒業年 大卒の3年以内離職率 時代背景
1987年3月卒 28.4% 統計でさかのぼれる最も古い世代
2004年3月卒 36.6% 就職氷河期の末期。過去最高値
2021年3月卒 34.9% コロナ禍入社。16年ぶりの高水準
2022年3月卒 33.8% 直近の公表値。4年ぶりに低下

2000年代には、中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が3年以内に辞めることを指す七五三現象という言葉も生まれました。すぐ辞める若者は、親世代が新人だった頃から一定数いたのです。若者の根性が突然消えたわけではありません。

増えたのは離職ではなく露出|辞める姿が見えるようになった

数字が横ばいなのに、体感としてZ世代がすぐ辞めるように見えるのはなぜか。答えのひとつは、辞める瞬間が可視化されたことです。
かつての退職は、送別の挨拶とともに静かに消えていく個人の出来事でした。今は退職代行の依頼件数が春の風物詩として報じられ、退職エントリがSNSで拡散し、転職アプリの通知が毎日スマホに届きます。辞めるという行為そのものが、画面の中で流通するコンテンツになりました。

早期離職は増えたのではなく、露出が増えた。同じ3割でも、黙って去った親世代と、辞め方がタイムラインに映る今の世代では、世間の体感がまるで違います。研究所ではこれを離職の可視化と呼び、実数の変化とは切り分けて見ています。

理由の変質|きつくて辞めるから、成長できなくて辞めるへ

数字より大きく変わったのは、辞める理由の中身です。リクルートワークス研究所の古屋星斗さんは著書『ゆるい職場』で、労働時間の削減やハラスメント対策が進んだ結果、若手が不満ではなく不安で辞めるようになったと指摘しました。仕事がきつくて限界だからではなく、この会社にいて自分は成長できるのかという焦りが引き金になるのです。
研究所の学生研究員も、就職活動の段階からその不安を口にします。SNSを開けば同世代の活躍が流れ込み、転職サイトには自分の市場価値が数字で表示される。配属ガチャに外れたと感じた瞬間、ここで3年我慢するという時間は、投資ではなく機会損失に見え始めます。石の上にも三年という助言が届かないのは、根性の問題ではなく、三年という時間の重みが変わったからです。

辞める人と残る人は裏表|静かな退職という隣の選択肢

同じ損得の計算をしても、全員が辞めるわけではありません。転職市場で勝負するより今の会社で力を温存するほうが得だと判断すれば、辞めずに最低限だけ働く静かな退職が選ばれます。早期離職と静かな退職は正反対に見えて、根は同じです。会社に人生を預けず、自分の裁量で働き方を決めるという仕事観の、表と裏にすぎません。
だから、辞めた3割だけを数えて対策を立てると読み違えます。残った7割の中にも、心の置き場所をすでに社外へ移した層が静かに含まれているからです。

企業にできること|引き止めるのではなく、選ばれ直す

入口で見極めを厳しくしても、退職の意思を翻させようとしても、この流れは止まりません。企業が変えられるのは、若手が毎年更新する損得の計算のなかで、残るという選択肢が勝ち残れるかどうかです。学生研究員や若手OBとの議論からは、次のような条件が見えてきます。

  • 配属や異動の理由を本人に言葉で説明し、その先のキャリアの見通しを示すこと
  • 成長の実感を年単位ではなく数か月単位で確認できるよう、仕事の区切りを設計すること
  • 辞めた社員を裏切り者として扱わず、出戻りも歓迎できる関係を保つこと

3割が辞めること自体は、40年変わらない定数に近いものです。問われているのは、辞める姿が見える時代に、残る理由をどれだけ具体的に示せるかのほうだと研究所は考えています。

若者研究所では、現役の学生研究員や若手社会人へのインタビューと定点調査を通じて、Z世代の離職と定着の本音を企業の人事施策や採用ブランディングにつなげる支援をしています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代の3年以内離職率はどれくらいですか?

厚生労働省の調査では、2022年3月卒の大卒者で33.8%です。およそ3人に1人が3年以内に最初の会社を離れており、この水準は統計をさかのぼれる1987年卒の28.4%以降、大きくは変わっていません。

若者の早期離職は昔より増えているのですか?

ほぼ横ばいです。過去最高は就職氷河期末期にあたる2004年卒の36.6%で、直近の数字はそれより低い水準にあります。増えたのは離職の実数ではなく、退職代行の報道やSNSの退職エントリなど、辞める姿が目に見える機会だと考えられます。

Z世代が早期離職する主な理由は何ですか?

仕事のきつさへの不満よりも、この会社で自分は成長できるのかという不安が引き金になりやすいと指摘されています。SNSで同世代の活躍が常に見え、転職サービスで自分の市場価値が数字で示されることも、決断を早める要因になっています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。