BeRealはなぜ流行り、どう使われているのか。消えるSNSの実態

昼休みや深夜、予告なく届いた通知から2分以内に、前面と背面のカメラで同時に撮った無加工の写真を友達に送る。フィルターはなく、いいね数の表示もない。そんな不便きわまりないSNSが、Z世代の日常にすっかり定着しました。フランス生まれのBeReal、通称ビーリアルです。

1日1回のランダム通知|BeRealの仕組み

BeRealは2020年にフランスで生まれた写真SNSです。仕組みは徹底してシンプルで、ユーザーができることを意図的に絞り込んでいます。

  • 1日1回、ランダムな時間に全ユーザーへ一斉に通知が届く
  • 通知から2分以内に、前面と背面のカメラで同時撮影して投稿する
  • 時間に遅れても投稿できるが、何時間遅れたかが友達に表示される
  • 撮り直しの回数も相手に見える
  • 自分が投稿しないと、友達の写真は見られない
  • リアクションはいいねではなく、自分の顔写真で作る絵文字RealMojiで返す

さらに特徴的なのが、残らないことです。フィードは毎日リセットされ、過去の投稿は本人だけが見られるアルバムに収まっていきます。盛れないうえに、積み上がりもしない。従来のSNSの文法をきれいに裏返した設計です。

盛れない設計|仕様が嘘をつけなくする

InstagramやTikTokが加工と編集の自由度を競ってきたのに対し、BeRealは盛るための手段そのものを仕様から削りました。並べてみると、思想の違いがはっきり見えます。

設計 従来の写真SNS BeReal
投稿のタイミング 好きなときに選べる 通知直後の2分間が基本
加工 フィルターや編集が前提 一切なし
撮り直し 何度でも可能で痕跡も残らない 回数が友達に表示される
評価軸 いいね数やフォロワー数 数値の競争がない
投稿の蓄積 プロフィールに残り続ける 毎日リセットされる

見栄えの良い瞬間を選んで切り取ることが、構造的にできない。だから写真には、散らかった机や寝起きの顔がそのまま写ります。その気の抜けた感じこそがBeRealの持ち味です。

なぜ流行ったのか|映え疲れへのカウンター

ブレイクの起点は2022年、アメリカの大学生の間でした。同じ年にはAppleが選ぶiPhoneアプリ・オブ・ザ・イヤーを受賞し、世界的なブームへ広がります。

背景にあるのは映え文化の飽和です。加工を重ねた完璧な投稿を見続け、自分もそれに合わせて盛り続けることへの疲労感は、SNS疲れとしてZ世代に広く共有されていました。BeRealはその疲れに対するカウンターとして刺さったのです。

盛ることが標準になった世界では、盛れないことが逆に新しい遊びになる。BeRealのヒットは、機能の足し算ではなく引き算がSNSの差別化になった、初めての大型事例だと研究所では捉えています。

日本での広がり|世界有数のBeReal大国に

日本で本格的に広がったのは2023年ごろからで、中高生と大学生を中心に浸透しました。BeRealの発表によると、2024年11月時点の国内月間アクティブユーザーは450万人で前年の1.7倍。2024年に世界で新規登録した1000万人のうち、およそ4人に1人が日本のユーザーだったといいます。日本は今や世界有数の主要市場です。

運営側にも動きがありました。2024年6月にはフランスのゲーム会社VoodooによるBeReal買収が発表され、買収額は5億ユーロと報じられました。日本では広告事業も始まり、ユニクロや資生堂といった大手ブランドが出稿しています。若者の内輪のアプリから、マーケティングの舞台へと局面が変わりつつあります。

実際の使われ方|思想より気楽な連絡帳

では日本の若者は、盛らない思想に共感して使っているのでしょうか。研究員と話していると、実態はもう少し軽やかです。

よく聞くのは、仲のいい友達が今どこで何をしているかがなんとなく分かるから、という声です。位置情報を付ければ、誰とどこにいるかまで見える。既読を気にする必要も、コメントを返す義務感も薄い。ストーリーズほど作り込まなくていい。
つまりBeRealは、映えの否定という看板よりも、内輪の気配をゆるく共有する連絡帳のような道具として使われています。

通知が鳴った瞬間にみんなでカメラを構える教室の風景がある一方で、あえて通知を無視して、放課後の遊びや推し活の場面まで投稿を取っておく遅れ投稿も定着しました。ルールに従うのではなく、ルールを自分たちの都合に合わせて使いこなしているわけです。

思想に共感したから使うのではなく、気楽だから使う。作り手が掲げた反SNSの哲学と、使い手の実利的な感覚のあいだにあるこのズレこそ、若者のSNS観を理解する手がかりになると考えています。

盛らない価値観の象徴|企業は何を読み取るべきか

BeRealの定着は、若者が完璧な見た目より等身大の実感を信用するようになった変化の象徴です。ただしそれは映えの終わりを意味しません。同じ人がInstagramでは作り込んだ投稿を続け、BeRealでは寝起きの顔をさらす。Z世代のSNSの使い分けの中に、盛る場所と盛らない場所が並存しているのです。

企業にとっての示唆は明確です。作り込んだ広告表現だけでは届かない領域が広がっており、等身大の見せ方や内輪感の設計が問われています。ユニクロや資生堂がBeRealに広告を出したのも、この文脈の中にあります。若者に何かを届けたいなら、盛らない場所で信頼される振る舞いを研究する価値は十分にあります。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、Z世代のSNS利用の実態を企業のマーケティングや商品開発につなげる支援をしています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

BeRealとはどんなアプリですか?

1日1回ランダムな時間に通知が届き、2分以内に前面と背面のカメラで同時撮影した無加工の写真を友達と共有するフランス発のSNSです。フィルターやいいね数の表示がなく、ありのままの日常を見せ合う設計になっています。

BeRealはなぜZ世代に人気なのですか?

加工した投稿で映えを競う従来のSNSに疲れた若者にとって、盛れない仕組みがかえって気楽だからです。仲のいい友達の飾らない日常が見られる、内輪のコミュニケーションツールとして受け入れられています。

日本ではどのくらい使われていますか?

BeRealの発表では、2024年11月時点の日本の月間アクティブユーザーは450万人に達し、前年の1.7倍に伸びました。日本は世界でも有数の主要市場となっており、国内では大手ブランドによる広告出稿も始まっています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。