オンラインインタビュー調査のやり方。Zoomで本音を引き出す設計

夜9時、Zoomの画面に映る大学生は、自分の部屋のベッドにもたれて話しています。壁には推しのポスター、手元には飲みかけのペットボトル。会場のインタビュールームでは決して見えない生活の断片が、最初から画面に映り込んでいるのです。オンラインインタビュー調査の設計は、この距離感の違いを理解するところから始まります。

オンラインインタビュー調査とは|コロナ以降に定着した定性調査のかたち

ZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールを使い、画面越しに対象者へ話を聞く定性調査です。1対1のデプスも複数人のグループも、いまはオンライン実施が当たり前の選択肢になりました。
転機は2020年4月の緊急事態宣言です。会場に人を集める調査が一斉に止まり、業界はオンラインへ急旋回しました。日本マーケティング・リサーチ協会が感染予防対策ガイドラインを公開して対面が再開されたあとも、オンラインは元に戻らず、対面と並ぶ定番として残っています。Zoom社の発表によれば、1日あたりの会議参加者は2019年12月の約1,000万人から2020年4月には3億人へ跳ね上がりました。答える側の若者にとっても、カメラ越しに話すことはとうに日常です。

対面とオンラインの使い分け|何を見たいかで選ぶ

どちらが優れているかという問いの立て方では選べません。見たいものとテーマで使い分けます。

観点 対面 オンライン
非言語情報 姿勢や手の動きまで観察できる 表情と声のトーンが中心
向くテーマ 実物に触れる商品評価や試食 美容やお金など個人的な話題
対象者の幅 会場に来られる人に限られる 地方や海外の若者も呼べる
費用 会場費と交通費がかかる 会場費が不要で抑えやすい

手に取ってもらうパッケージ評価なら対面に分があります。一方で、美容やお金、家族のような一人で話したい話題は、オンラインのデプスインタビューが向きます。複数人の盛り上がりから探る場合の座組みはグループインタビューの設計と共通です。

若者はカメラ越しの方が話せることがある|研究所の現場知見

オンラインだと本音が出にくいのではと心配する声をよく聞きます。若者研究所の実感はむしろ逆です。答える側として企業の調査に参加してきた学生研究員に聞くと、初めて訪れるオフィスビル、マジックミラー、囲むように座る大人たち、その全部が緊張の材料だったと言います。

対面では最初の人の意見につい合わせてしまったけれど、オンラインで順番に指名される形だと、自分の言葉で話すしかなかった。答える側を経験した研究員のひとりは、そう振り返ります。

自分の部屋という完全なホームから参加できること。視線が合いすぎないこと。沈黙をチャットで埋められること。オンライン授業と就活のWeb面接を通ってきた世代にとって、画面越しは取り繕う場ではなく、素に近い場所です。

オンラインだから本音が出ないのではなく、会議室だから出ない本音がある。研究所ではそう考えています。

設計の実務|人数と時間はオンライン仕様に縮める

対面の設計をそのまま持ち込むと失敗します。画面越しは対面より集中が切れやすく、発言がかぶった瞬間に誰かが黙るからです。

  • グループは3〜4名まで。画面のマス目が増えるほど様子見が長くなります
  • 時間は60分を上限の目安に。延ばすなら途中に休憩を挟みます
  • 冒頭の15分は雑談に近いウォームアップに使います
  • モデレーターは相槌を声に出します。うなずきだけでは画面越しに伝わりません

調査目的の整理からリクルーティングまでの手順は若者リサーチの進め方と変わりません。オンライン特有なのは、この時間と人数の圧縮です。

機材・録画・同意の実務チェック

当日の進行より、前日までの準備が品質を左右します。最低限の確認項目を挙げます。

  • 録画と録音の同意は、依頼時の同意書と当日冒頭の口頭確認の二段階で取ります。利用目的と保管期限、社外に出さない範囲まで伝えます
  • 通信環境を事前に確かめます。スマホ参加は縦画面で表情が小さくなるため、できればPCでの参加をお願いします
  • イヤホンの使用を依頼します。スピーカーだと生活音やハウリングを拾います
  • 録画データはアクセス権を絞って保管し、納品後に削除する期限を決めておきます
  • 謝礼はオンラインギフトにすると、住所を預からずに済みます

費用の目安|会場費が消える分だけ組み替えられる

オンラインは会場費と対象者の交通費がかからないため、同じ人数なら対面より費用を抑えやすくなります。浮いた予算で対象者を増やす、対面のデプスを1本足して観察を補う、という組み替えも可能です。項目ごとの内訳は若者調査の費用で整理しています。
ただし安さだけで選ぶと、実物に触れられない、非言語情報が薄いという弱点をあとから思い知ります。目的が先、手段があと。この順番さえ守れば、オンラインインタビュー調査は若者の生活にいちばん近づける手法です。

若者研究所では、現役の学生研究員が設計から進行まで加わるオンラインインタビューで、企業のマーケティングと商品開発を支援しています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

オンラインインタビュー調査は対面より本音が出にくいですか?

出にくいとは限りません。自分の部屋から参加できるぶん緊張がやわらぎ、美容やお金のような個人的な話題ではかえって話しやすくなることがあります。実物に触れてもらう商品評価や試食は対面が向いています。

オンラインのグループインタビューは何人が適切ですか?

3名から4名に絞る設計をおすすめします。画面上の人数が増えるほど発言の順番待ちと様子見が長くなり、ひとりあたりの発言量が減るためです。時間は60分前後を目安にします。

録画の同意はどのように取ればよいですか?

参加依頼時の同意書と当日冒頭の口頭確認の二段階で取ると安心です。録画の利用目的、閲覧できる範囲、保管期限まで具体的に伝えることで、参加者も落ち着いて話せます。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。