Z世代のゲーム実態。フォートナイトがたまり場になった理由と課金の感覚

夜10時すぎ、静かなはずの子ども部屋から笑い声が漏れてきます。電話かと思えば、Discordの通話をつなぎっぱなしにして、フォートナイトの島に友達と降りている。学生研究員に平日の夜の過ごし方を聞くと、かなりの割合でこの光景に行き当たります。Z世代にとってゲームは、遊ぶものである前に集まる場所になっています。

ゲームで遊ぶよりゲームに集まる|フォートナイトという広場

Epic Gamesのフォートナイトは建築要素つきのバトルロイヤルとして知られますが、Z世代の使い方を見ていると勝敗はしばしば二の次です。銃を撃たずに雑談だけして解散する夜もあれば、クリエイティブモードの鬼ごっこの島へ流れることもあります。
2020年4月にはラッパーのトラヴィス・スコットがゲーム内ライブを開き、Epic Gamesの発表で同時参加者は1,230万人にのぼりました。同じ年の8月には米津玄師さんが日本人アーティストとして初めてフォートナイト内でライブを開催しています。もはや対戦ゲームというより、イベントも開かれる広場です。

Discordのつなぎっぱなし文化|たまり場は放課後からサーバーへ

集まりの土台にあるのがDiscordです。2015年にゲーマー向けの通話アプリとして生まれ、いまや友人グループごとにサーバーを持つのが当たり前です。SHIBUYA109 lab.が2023年に発表したZ世代のゲームに関する意識調査でも、ゲーム中に誰かとコミュニケーションを取る人は8割を超え、通話先はLINEに続いてDiscordが36%を占めています。
興味深いのは、ゲームが終わっても通話を切らないことです。片方は原神のデイリー消化、もう片方は明日の課題。画面は別々のまま、声だけがつながっている。かつての放課後の教室やコンビニ前と同じで、何かをするためではなく、そこにいるために集まっています。

社会学者のレイ・オルデンバーグは、家庭でも職場でもない第三の居場所の価値を説きました。Z世代はそれをオンライン上に建てたのだと研究所は捉えています。ゲームは遊びの道具ではなく、常設のたまり場です。

タイトルごとの役割分担|Apex・原神・スイカゲームは別の場所

同じゲームでも、生活の中で果たす役割はタイトルごとに分かれています。

タイトル 開発・運営 Z世代にとっての役割
フォートナイト Epic Games 友達と集合する広場。ライブも開かれるイベント会場
Apex Legends EA 固定メンバーで通う部活。腕前が共通言語
原神 HoYoverse 一人で浸る長編。推しキャラの供給源
スイカゲーム Aladdin X 実況で見て自分でも触る、話題の共有物

2019年の配信開始から1か月で5,000万人が遊んだとEAが発表したApex Legendsは、決まった仲間と毎晩通う場所です。うまくなる過程そのものが仲間との会話になります。一方の原神は一人でも完結し、キャラクターへの愛着が推し活に接続します。そしてスイカゲームは、集まる場所とも一人の世界とも違う、話題として流通するゲームでした。

スイカゲームの逆流現象|見るゲームから遊ぶゲームへ

スイカゲームは、家庭用プロジェクターを手がけるAladdin Xが2021年にSwitch向けへ出した240円のパズルで、発売からしばらくはほぼ無名でした。火が付いたのは2023年秋、人気配信者やVTuberの実況がきっかけです。視聴者が240円なら自分もと買い、遊んだ人がまた配信する循環が生まれ、Aladdin Xは累計ダウンロード1,100万本超を発表するまでになりました。
順序が肝心です。遊んでから見るのではなく、見てから遊ぶ。VTuberや切り抜き動画がゲームとの出会いの入り口になっていて、この流れはロブロックスで育つα世代でいっそう強まっています。

課金の金銭感覚|スキンは服、ガチャは推し活、買い切りは投資判断

お金の使い方にも独特の秩序があります。フォートナイトやApexのスキン課金は、たまり場に着ていく服に近い感覚です。強さに影響しなくても、フレンドの目がある以上は身なりとして意味を持ちます。原神のガチャは推しキャラを手元に迎えるための支出で、文法はアイドルの推し活とほとんど同じです。
対照的に、数千円の買い切りソフトには慎重です。実況で中身を確かめ、評判を調べ、セールを待つ。無料で始めて気に入った分だけ払う設計に慣れた世代には、先払いこそ心理的ハードルの高い支払いなのです。240円のスイカゲームが破格の伸びを見せた背景には、この金銭感覚があります。

1回数百円のガチャは迷わず回すのに、700円の買い切りには腰が引ける。矛盾に見えるこの行動は、推しや仲間との関係への参加費なら払い、単独の体験への先払いなら渋ると読むと筋が通ります。

企業がゲームの場に入るには|広告枠ではなく町内会として

Z世代に届きたい企業がゲームに注目するのは自然な流れです。ただし、そこはメディアである前に生活の場です。バナーを貼る発想で乗り込めば、たまり場に営業へ来た大人として扱われます。フォートナイト内に遊べる島を建てるブランドが増えているのは、住人としてふるまうほうが受け入れられると知っているからです。
スマホとAIに囲まれて育ったこの世代の夜は、SNSとゲームのたまり場でできています。若者に会いたければ、若者のいる場所へ、その場の作法で入ること。ゲームはその最前線にあります。

若者研究所では、現役の学生研究員が実際に遊んでいるタイトルやDiscordでの過ごし方を、グループインタビューや定点調査で企業のマーケティングと商品開発につないでいます。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代に人気のゲームには何がありますか?

フォートナイト、Apex Legends、原神、スイカゲームなどが代表的です。友達と集まるためのタイトル、一人でじっくり遊ぶタイトル、実況を見て話題として楽しむタイトルで役割が分かれているのが特徴です。

Z世代はなぜ通話をつなぎながらゲームをするのですか?

ゲームそのものより、友達と同じ時間を過ごすことが目的だからです。Discordなどの通話をつなぎっぱなしにして、別々のゲームや勉強をしながら声だけでつながる過ごし方が定着しています。放課後のたまり場がオンラインへ移ったと考えると分かりやすいです。

Z世代はゲームの課金にどんな金銭感覚を持っていますか?

使いどころに濃淡があります。スキンやガチャなど、友達に見られるものや推しに関わる課金には積極的な一方、数千円の買い切りソフトは実況や評判を確かめてから買う人が多く、先払いには慎重です。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。