4月、新品のランドセルには教科書と並んで、学校支給のタブレット端末が収まっています。宿題は紙のドリルから学習アプリへ、保護者への連絡はプリントから配信へ。2010年以降に生まれたα世代にとって、これが入学初日から当たり前の風景です。学びの中身も、親が財布を開く先も、上の世代とは静かに入れ替わりつつあります。
GIGAスクール世代|1人1台端末が変えた教室の前提
転換点は、文部科学省が2019年に打ち出したGIGAスクール構想です。全国の小中学生に1人1台の端末と高速ネットワークを整備する計画は、当初2023年度までかける予定でしたが、コロナ禍の一斉休校を受けて一気に前倒しされ、2021年度にはほぼすべての公立小中学校に端末が行き渡りました。
板書を写す、紙のテストを返してもらうといった動作の一部が、調べて共有する、その場で採点されるに置き換わった教室。豪マクリンドル研究所が2010年から2024年生まれと定義するα世代は、学校教育のデジタル化と成長期が丸ごと重なった、日本で最初の世代です。
2020年度という節目|プログラミング必修化と英語の教科化
| 年度 | 変わったこと | 対象 |
|---|---|---|
| 2019年度 | GIGAスクール構想が始動し、1人1台端末の整備が始まる | 小学校・中学校 |
| 2020年度 | プログラミング教育が必修化、5・6年生で英語が教科化 | 小学校 |
| 2022年度 | 情報Iが必修科目になる | 高校 |
| 2025年1月 | 大学入学共通テストで情報の出題が始まる | 大学受験生 |
2020年度の学習指導要領改訂で、小学校のプログラミング教育が必修になりました。専用の教科が増えたわけではなく、算数や理科の授業の中でプログラミング的思考を育てる建て付けです。同じ年度に5・6年生の英語は成績のつく教科へ格上げされ、外国語活動の開始は3年生に引き下げられました。
この線路は高校まで一直線につながっています。2022年度に必修化された情報Iは、2025年1月の大学入学共通テストから出題が始まりました。いま小学生のα世代が大学を受ける頃、プログラミングも英語も、選ばれた子の特技ではなく全員の前提になっている計算です。
習い事の勢力図|水泳の牙城に英語とプログラミングが迫る
学研教育総合研究所の小学生白書2023によると、小学生の習い事の1位は水泳で27.0%。2位が受験や補習のための塾で19.3%、3位が英会話教室で15.4%と続きます。定番の強さは健在ですが、ランキングの中身は制度の変化を素直に映します。
象徴はプログラミング教室です。同研究所のランキングに2017年に初めて姿を見せ、2020年度の必修化を追い風に少しずつ順位を上げてきました。学校で必修になるものを、先回りして習わせる。この動きは、教科化の前から過熱していた英会話とまったく同じ道筋です。
ミレニアル親の優先順位|学歴の一点張りからスキルの分散投資へ
α世代の親の中心は、米ピュー・リサーチ・センターの定義で1981年から1996年生まれにあたるミレニアル世代です。就職氷河期の余韻とリーマンショックを社会に出る前後で浴び、学歴が安泰を保証しない現実を肌で知る世代でもあります。だから教育への投資も偏差値一本には賭けず、英語、プログラミング、お金の知識といった実利あるスキルへ分散させるのです。
共働きが標準になったことも選び方を変えました。送迎の要らないオンラインレッスンや、学童と習い事が一体になったサービスが伸びるのは、子どものためであると同時に、親の時間設計の問題だからです。ミレニアル親の子育て観そのものは別の記事に譲りますが、教育に限れば要点は絞れます。
ミレニアル親にとって教育とは、いい学校へ入るための積み立てではなく、変化に耐えるスキルの分散投資。習い事のポートフォリオは、親自身が味わった不安の裏返しだと研究所は見ています。
教育費のいま|金額より配分が動いている
文部科学省の令和5年度子供の学習費調査では、公立小学校に通う子ども1人あたりの学習費総額は年間およそ33万6千円。大半を占めるのは、塾や習い事に代表される学校外活動費です。
目を引くのは金額そのものより配分の変わり方です。通信教育は紙の教材からタブレットへ、単語カードはAI型ドリルへ。生まれたときから人工知能がそばにいるAIネイティブの学び方に、家庭の教材が追いついていく構図です。かける総額を無限には増やせない共働き家庭ほど、費用対効果の見えるものへ寄せる判断が早くなります。
α世代の学びを調査するには|親子をセットで見る
教育や通信教材の商品開発でα世代を捉えるとき、子ども単体のアンケートでは足りません。財布と契約の意思決定は親が握り、毎日使い倒すのは子ども。当研究所が親子ペアのインタビューや家庭での観察を組み合わせるのは、契約時の建前と実際の使われ方のずれこそが改善の種だからです。タブレット教材を選んだのは親でも、3か月後に続いているかどうかを決めるのは子どもの指です。子どもに聞く調査には独特の設計が要るため、子ども調査のやり方は別途まとめています。
若者研究所では、現役の学生研究員のネットワークに加え、親子ペアでのインタビューや定点調査を通じて、教育・通信業界の商品開発とマーケティングを支援しています。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
α世代の教育は上の世代と何が違いますか?
小中学生に1人1台端末を整備するGIGAスクール構想が2021年度までにほぼ完了し、2020年度からは小学校でプログラミング教育の必修化と英語の教科化が始まりました。学校教育のデジタル化と成長期が丸ごと重なった点が、Z世代までとの大きな違いです。
α世代に人気の習い事は何ですか?
学研教育総合研究所の小学生白書2023では、1位が水泳、2位が塾、3位が英会話教室でした。定番が上位を占める一方、2020年度の必修化を追い風に、プログラミング教室が2017年の初登場以降少しずつ順位を上げています。
小学生の教育費は年間どのくらいかかりますか?
文部科学省の令和5年度子供の学習費調査によると、公立小学校に通う子ども1人あたりの学習費総額は年間およそ33万6千円です。その大半を、塾や習い事に代表される学校外活動費が占めています。


