部活帰りの電車で、制服の中学生がスマホの画面を友だちに向けています。のぞき込んだ相手が返したのは、めろい、のひとことでした。隣に立つ大人には、褒めたのか嘆いたのかすら分かりません。
いまの中学生は、2010年以降に生まれたα世代のいちばん上の学年にあたります。その流行を追いかけると、何が流行っているかより先に、流行の入口と速度が大人の想像と大きくずれていることに気づかされます。
流行語ランキング|半年後には上位が入れ替わる
まず言葉から見ていきます。ティーンの流行語を追いかける定点調査を時系列で並べると、入れ替わりの速さそのものが見えてきます。
| 調査 | 時期 | 上位の流行語 |
|---|---|---|
| ニコラ なんでもランキング | 2025年度版 | ケンチャーナ、あーね、〇〇界隈 |
| 渋谷トレンドリサーチ | 2026年春 | 〇〇で滅、めろい、好きすぎて滅 |
| 渋谷トレンドリサーチ | 2026年夏 | めろい、わほー、滅 |
女子中学生向け雑誌ニコラが読者およそ600人に聞いた2025年度版で上位だったケンチャーナやあーねは、翌年の調査ではもう姿を消しています。渋谷トレンドリサーチでは、2026年春に1位だった〇〇で滅が、夏には回答の15.2%を集めためろいに首位を譲りました。1年どころか半年で顔ぶれが変わる。これが中学生の流行語の時間感覚です。
言葉の中身|韓国語と一文字に圧縮された感情
顔ぶれは変わっても、選ばれる言葉には共通点があります。
ケンチャーナは韓国語で大丈夫という意味です。K-POPや韓国ドラマを字幕ごと浴びて育った世代にとって、韓国語は外国語というより第二の若者言葉になっています。めろいは心を奪われてとろけるさま、滅は感情が振り切れて滅びるほどだという誇張で、強い気持ちを短い音へ圧縮する発想は共通しています。わほーのように、意味より響きが先に立つ言葉も定番です。長い説明を省き、テンポよく共感を回すための道具として言葉が選ばれています。
入口の交代|教室からおすすめ欄へ
小学生の流行は、YouTubeやゲームで火がつき、最後は教室で確定します。中学生になると、この構図が入れ替わります。境目はスマホデビューです。中学入学は自分のスマホを持つ最大の節目で、流行の供給源が友だちの口コミからTikTokやInstagramのおすすめ欄へ切り替わります。
おすすめ欄の中身は一人ひとり違います。同じクラスでも、見ている動画も推しも別々です。だから中学生の流行は、学年全員が知っているものより、数人の仲間内でだけ盛り上がるものが主役になっていきます。
小学生の流行は教室で確定し、中学生の流行はおすすめ欄で確定する。研究所では、この入口の交代こそ思春期マーケティングの分水嶺だと考えています。
界隈という単位|学年全員が知るヒットは例外になった
ニコラのランキングに入った〇〇界隈という言葉は、この変化を中学生自身が言い当てたものです。K-POP界隈、ボカロ界隈、ゲーム実況界隈。趣味ごとの小さな圏内で流行が生まれ、圏外にはほとんど漏れません。
学年全員が同じドラマを見て、同じ歌を歌う状態はもう当たり前ではありません。企業から見れば、ひとつの広告で中学生全体へ届く時代の終わりを意味します。どの界隈に、どんな熱量で入っていくか。届け方の設計はそこから始まります。
遊びの回路|画面で知り、教室で再現し、画面へ返す
言葉以外の遊びも、起点はショート動画です。TikTokで広がったダンスや検証ネタを昼休みに再現し、うまく撮れたら今度は自分たちが投稿して画面の中へ返していく。見るだけだった小学生時代と違い、発信する側に回れることが中学生の遊びを性格づけています。
一方で、教室に持ち込めるモノの強さは変わりません。韓国発の文具やコンビニの新作スイーツのように、翌日みんなで買えるものは、界隈の壁を越えて広がる数少ない例外です。
ランキングの読み方|順位より差分を見る
中学生の流行を追う親や企業がやりがちなのは、最新ランキングの1位を覚えて安心することです。けれど半年で上位が入れ替わる世界では、覚えた瞬間から古びはじめます。見るべきは順位ではなく、どんな言葉が消え、どんな型が残ったかという差分です。
韓国語由来が増えているのか、感情の圧縮がさらに進むのか。差分を読めば、若者トレンドの次の波をある程度先回りできます。意味が分からない言葉を笑う側に回らず、なぜこの音が選ばれたのかを一緒に面白がることが、中学生を理解する最短ルートです。
若者研究所では、現役の学生研究員による定点調査やグループインタビューで、中学生をはじめとする10代のリアルな流行を企業のマーケティングと商品開発につないでいます。若者リサーチの依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
2026年に中学生の間で流行っている言葉は何ですか?
渋谷トレンドリサーチの2026年夏の調査では、めろいが1位、わほーが2位、滅が3位でした。心を奪われた気持ちや感情の高ぶりを短い音に圧縮した言葉が中心で、上位の顔ぶれは半年ほどで入れ替わります。
中学生の流行はどこから生まれますか?
中学入学前後のスマホデビューを境に、TikTokやInstagramのおすすめ欄が主な入口になります。趣味ごとの界隈と呼ばれる小さな集まりの中で広がるため、学年全員が知る流行は生まれにくくなっています。
中学生の流行を企業がマーケティングに活かすには何を見ればよいですか?
最新ランキングの順位を覚えるより、前回からの入れ替わりに注目することが大切です。韓国語由来の言葉が増えているかなど変化の方向を読むと、次に来る波を先回りしやすくなります。


