プリクラはなぜ再ブーム?若者が盛りに求めるスマホ時代の新しい価値

ゲームセンターの奥、白いカーテンの向こうからシャッター音と歓声が聞こえてきます。撮り終えた女子高生が手にしているのは、名刺より小さなシールが並んだ1枚のプリ。スマホには何千枚も写真が入るのに、彼女たちは数百円を払ってこの1枚を選びました。プリクラがいま、再び若者の放課後に戻ってきています。

プリクラ再ブームの現在地|誕生30周年に行列が戻った

プリントシール機は2025年7月に誕生30周年を迎え、セガとフリューが記念プロジェクトとしてプリの歴史30年を公開しました。東洋経済オンラインの報道によれば、市場規模は最盛期から大きく縮んだ一方で、令和の10代女子の86%がプリ機を利用しているといいます。撮る人が絶えたことは、実は一度もないのです。
メーカーの動きも活発です。プリ機シェア約9割のフリューは2025年12月、平成に一世を風靡した姫と小悪魔、LADY BY TOKYO、Meluluといった伝説機種のデザインと写りを期間限定で再現する企画を展開しました。2000年ごろに市場を離れたセガも、2020年に20年ぶりの再参入を果たしています。研究所が定点観測している若者トレンドの中でも、プリ機は平成リバイバルの主役級と言っていい存在です。

プリクラ30年史|プリント倶楽部から盛りの時代へ

始まりは1995年7月。ゲーム会社のアトラスがセガと組んで世に出したプリント倶楽部でした。30年の歩みを整理すると、浮き沈みの激しさに驚かされます。

時期 出来事
1995年 アトラスとセガがプリント倶楽部を発売
1996〜97年 テレビ番組で紹介され社会現象に。累計出荷は約2万2000台へ
2000年前後 ギャル文化と融合し、プリ帳を交換する文化が定着
2000年代半ば デカ目や美肌など加工競争が激化し、盛りの概念が確立
2010年代 スマホと自撮りアプリの普及で市場が縮小。撤退が相次ぎフリューがほぼ一強に
2020年 セガが20年ぶりに再参入
2025年 誕生30周年。平成の伝説機種が復活し再ブームが可視化

皮肉なのは、プリ機を追い詰めたスマホカメラこそが、いまの再評価の前提になっていることです。無料で無限に撮れる時代が来たからこそ、有料で有限の1枚が特別なものに変わりました。

スマホで無限に撮れるのに、なぜ有料の1枚なのか

学生研究員と話していると、プリ機を選ぶ理由は大きく3つに整理できます。

  • 儀式になること。お金を入れてブースに入り、限られた回数で撮り切る。この段取りの重さが、放課後をイベントに変えます
  • 物として残ること。シールには手ざわりと厚みがあり、財布や手帳に貼れば思い出が物理的にそこにあり続けます
  • 一人では成立しないこと。自撮りと違ってプリは誰かと入るのが前提で、誰と撮ったかまで含めて記録になります

プリクラの価値は写真の出来ではなく、取り消せない1枚を一緒に残したという事実にあります。無限に撮れて無限に消せるスマホカメラには、この取り返しのつかなさが作れません。

データではなくシールで受け取るからこそ、失敗した1枚さえ笑い話として手元に残る。デジタル全盛の世代は、その不自由さを楽しみとして再発見しています。

韓国プリと平成レトロ|二つの流れの合流点

再ブームの追い風は国内だけではありません。韓国発のセルフ写真館やフォトブースが日本の街に増え、友だちと箱に入って撮るという体験そのものが再び日常になりました。韓国では無加工風に写る機種が人気を集める一方で、盛れる日本式プリの感覚を取り入れた機種が逆輸入される循環も生まれています。
もう一つの流れが平成レトロです。平成ギャルのメイクと同じく、リアルタイムを知らないZ世代にとってプリ機は懐かしさではなく未知の新作として届いています。古いものを新しい感性で楽しむニュートロの構造が、ここでもそのまま働いているわけです。

令和の盛り|別人になるためではなく、空気を残すために

ただし、いまの若者は平成のプリをそのまま遊んでいるわけではありません。落書きは控えめ、表情は笑顔でピースのニコパチ、印刷したシールは透明のスマホケースに挟んで持ち歩く。デカ目全盛期のような別人級の加工ではなく、その日の空気ごと写る雰囲気盛りが選ばれています。
背景にはSNSの変化があります。作り込みすぎた写真は、ストーリーズで気取らない日常を見せ合う感覚と相性がよくありません。ほどよく現実に近く、それでも少しだけ良く写る。盛りの目的は、理想の自分になることから、いまの自分たちをいい感じに保存することへ移りました。

若者研究所の見立て|不便と有限が次の価値になる

プリクラ再ブームが企業に教えてくれるのは、無料で無限で便利の反対側にこそ若者の心が動くという事実です。あえて回数を絞る。あえて物として渡す。あえて誰かと一緒でないと完結しない設計にする。30年前に生まれた機械が令和に愛され続ける理由は、そのままデジタル時代の体験設計のヒントになります。

若者研究所では、現役の学生研究員によるグループインタビューや定点調査を通じて、プリ機のような体験型トレンドの裏にある若者の本音を掘り下げています。商品やサービスの企画に若者のリアルな声を取り入れたい方は、若者リサーチのご依頼お問い合わせからお気軽にご相談ください。

よくある質問

プリクラはいつ誕生しましたか?

1995年7月に、ゲーム会社のアトラスがセガと組んで発売したプリント倶楽部が元祖です。テレビ番組で紹介されたことをきっかけに女子高生の間で大流行し、1997年までに累計出荷約2万2000台の社会現象になりました。

プリクラが再ブームになっているのはなぜですか?

平成レトロの流行と、韓国発のセルフ写真館やフォトブースの人気が重なり、友だちと撮って形に残す体験が見直されているためです。スマホで無限に撮れる時代だからこそ、有料で撮り直しのきかない1枚に特別な価値が生まれています。

今の若者のプリクラの遊び方は昔と何が違いますか?

落書きは控えめにして、印刷したシールを透明のスマホケースに挟んで持ち歩く遊び方が主流です。別人のように見せる強い加工よりも、その日の雰囲気ごと自然に残る盛りが好まれるようになっています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。