深夜0時すぎ、BeRealの通知が鳴る。東京の大学生もパリの高校生も、同じ2分以内にいまの自分を撮って投稿します。TikTokでは同じ音源のダンスが渋谷とロサンゼルスとソウルで踊られ、同じミームに同じ絵文字で笑う。画面の中の若者たちは、国境を感じさせないほど似ています。ところがアプリを閉じたあとの価値観をのぞくと、日本と海外のZ世代は驚くほど別の顔を持っているのです。
共通の土台|世界のZ世代はここまで似ている
Z世代の区分には、アメリカのピュー・リサーチ・センターによる1997年から2012年生まれという定義がよく使われます。物心ついたときからスマホとSNSがあった、人類で最初の世代。この初期装備は世界共通です。
育った時代の空気も似ています。金融危機、パンデミック、気候変動。将来は計画通りに進まないという感覚を、各国の若者が同じタイミングで刻み込まれました。デロイトが毎年世界数十カ国で実施しているZ世代・ミレニアル世代調査でも、Z世代の懸念の筆頭は生活費で、気候変動への不安がそれに続きます。環境とお金の不安は、国境を越えた共通言語になりました。Z世代の基礎を押さえるほど、まず目につくのはこの共通点のほうでしょう。
日本と海外のZ世代の違い早見表|分かれるのは価値観の出し方
ところが行動をひとつ掘ると、選び方がはっきり分かれます。海外のZ世代と日本のZ世代の違いを表にまとめました。海外も一枚岩ではないので、ここでは欧米を中心に整理しています。
| 項目 | 海外のZ世代(欧米中心) | 日本のZ世代 |
|---|---|---|
| 自己主張 | 意見を言うことが人格の一部。企業やブランドにも直接声を届ける | 場の空気を優先。表立った主張より共感の共有 |
| 仕事 | 転職と副業でキャリアを組み立てる | 会社を信じていないのに、初職では安定を選ぶ |
| 社会との関わり | デモ、署名、寄付が日常の選択肢 | デモは遠い。買うもの、推すもので意思を示す |
| 恋愛 | デーティングアプリで出会うのが標準 | 恋愛の優先順位が下がり、失敗を避ける |
| お金 | インフレ直撃。いまを楽しむ消費と投資が同居 | 貯蓄と節約が基本。失敗しない消費 |
自己主張の違い|声を上げる若者と、空気を読む若者
欧米のZ世代は、意見を表明することを子どもの頃から求められて育ちます。授業で立場を問われ、SNSのプロフィールに支持する価値観を書き、ブランドの姿勢が気に入らなければ不買で応じる。アメリカのZ世代を見ていると、発信は権利というより習慣です。
日本はここが逆向きです。日本財団の18歳意識調査では、自分の行動で国や社会を変えられると思う若者の割合が、日本は調査対象国の中で繰り返し最下位となっています。2019年の9カ国調査では18.3%にとどまりました。教室では意見の主張より空気を読むことが評価されてきた環境の差が、そのまま数字に表れています。
仕事観の違い|転職で作るキャリアと、選び直される安定
アメリカでは在職のまま次の職場を探すジョブホッピングが当たり前で、2022年にはTikTok発の静かな退職という言葉が世界に広がりました。仕事は人生の中心ではないと言い切る若者が、実際に職場を移りながらキャリアと収入を積み上げていきます。
日本のZ世代も終身雇用を信じてはいません。それでも就職活動では大手と安定が根強く選ばれます。信じていないのに選ぶ。この一見矛盾した行動は、一度つまずくと敗者復活の道が細い日本の労働市場を、彼らが正確に見抜いていることの裏返しです。会社に人生を預けない点は世界共通で、分かれているのはその後の動き方だけです。
社会運動との距離|広場で声を上げるか、レジで投票するか
2019年9月、グレタ・トゥーンベリさんの呼びかけに応じた世界一斉の気候マーチには、各国で数百万人の若者が参加したと報じられました。2020年のBlack Lives Matterでも、街頭に立つZ世代の姿が運動の象徴になりました。海外の若者にとって、デモや寄付は特別な行動ではなく日常の選択肢です。
日本の若者はデモにほとんど参加しません。ただしそれを無関心と呼ぶのは早計です。応援したい相手の商品を選び、推しに課金し、共感した投稿をシェアする。意思表示は静かに、消費の形で行われています。
日本のZ世代は社会に無関心なのではなく、意思表示のチャネルが違う。海外の若者が広場で声を上げるなら、日本の若者はレジと推しの現場で一票を投じている。研究所ではそう見ています。
日本のZ世代だけを見ていると、世界の若者を見誤る
ここまでの違いは、グローバルに商品を出す企業にとって他人事ではありません。日本で組み立てたZ世代像をそのまま海外に持ち出せば、主張しない若者向けの控えめなメッセージは埋没します。逆に海外の成功事例を直輸入すれば、声高な社会性の押し出しが日本の若者には重たく映る。Z世代の価値観は、世界共通の土台と国ごとの出力の癖という二層でできているのです。
同じアプリを使っていることは、同じ価値観を持っていることを意味しない。画面の共通性が、中身の違いをかえって見えにくくしています。
だからこそ、どの国のZ世代に向けた企画でも、区分の知識だけで済ませず、現地の当事者の声を確かめる工程が欠かせません。
若者研究所では、100人以上の現役学生研究員へのインタビューや定点調査を通じて、日本のZ世代のリアルな価値観をグローバル企業のマーケティングと商品開発につないでいます。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
日本と海外のZ世代に共通する点は何ですか?
物心ついたときからスマホとSNSがある環境で育ち、金融危機やパンデミックを経験した点が共通しています。デロイトの国際調査では、生活費への不安と気候変動への関心が各国のZ世代に共通する関心事として挙がっています。
日本のZ世代は海外に比べて社会への関心が低いのですか?
関心が低いというより、意思表示の方法が違います。デモや寄付には距離がある一方で、共感できる企業の商品を選んだり推しを応援したりと、消費を通じた静かな意思表示を行う若者が目立ちます。
グローバル企業がZ世代向け施策で注意すべきことは何ですか?
Z世代を世界共通の一枚岩として扱わないことです。日本で作った控えめな若者像を海外に持ち出したり、海外の社会性の強い成功事例をそのまま日本に持ち込んだりすると、現地の若者の感覚とずれるおそれがあります。


