海外Z世代に人気のブランドの共通点。古着とデュープに向かう買い物観

土曜の朝のロサンゼルス。若者が列を作るのは高級ブランドの旗艦店ではなく、量り売りの古着倉庫です。片手には40オンスの巨大なタンブラー、スマホには高級リップそっくりの1,000円コスメを紹介する動画が流れてきます。ロゴがそのままステータスだった時代の買い物とは、何かが決定的に違います。海外Z世代に人気のブランドを追いかけると、憧れから検証へというブランド観の地殻変動が見えてきます。

SHEINの急成長と批判|安さは買う理由になっても、誇る理由にならない

中国発のファストファッションSHEINは、2021年に米国でAmazonを抜き、最もダウンロードされたショッピングアプリになりました。数ドルのトップスが1日に数千点も追加される物量と安さで、Z世代の財布を一気につかんだのです。
風向きが変わったのは2022年。英チャンネル4のドキュメンタリーInside the Shein Machineが、委託工場での1日18時間に及ぶ労働実態を告発します。TikTokでは大量購入を披露する動画と同じ速さで、不買を呼びかける動画が広がりました。それでも売上は伸び続けています。安いから買う、でも胸は張れない。SHEINは憧れの対象ではなく、後ろめたさ込みの実用品という独特の位置に置かれています。

スリフト文化|古着は節約ではなく、目利きの証明

その後ろめたさの受け皿になったのが、thriftingと呼ばれる古着あさりです。米リセール大手ThredUpのレポートは、世界の中古衣料市場が2028年に3,500億ドル規模へ達すると予測しています。英国発の古着アプリDepopが2021年にEtsyへ約16億ドルで買収されたとき、利用者のおよそ9割は26歳未満でした。
新品のECでは誰かと同じ服が届きますが、古着は一点物です。安く手に入れたことは恥ではなく、掘り出し物を探し当てた目利きの証明になります。日本のZ世代がメルカリで育てたリセールの感覚と同じ構図が、海外ではひと回り大きな産業として回っているのです。

デュープ消費|偽物ではない、賢い代替品という発明

dupeはduplicateの略で、高級品に似た機能や見た目を持つ廉価品を指します。ロゴを偽る従来のコピー品と違い、デュープは本家の名前を挙げて、これはあの製品の代わりになると堂々と紹介されます。米調査会社Morning Consultの2023年の調査では、Z世代の49%がデュープを意図的に買った経験があると答えました。全成人の31%を大きく上回る数字です。
本家の対応も変わりました。レギンスで知られるLululemonは2023年、ロサンゼルスでデュープを本物と交換するイベントを開催し、模倣を訴えるのではなく本物の体験で迎え撃ちました。デュープ消費の広がりが突きつけるのは、ブランド名そのものには上乗せ価格を払わないという静かな意思表示です。

Stanleyタンブラーのバズ|買われたのは保温性能ではなく現象

逆に、名前の力がよみがえった例もあります。110年以上前から作業現場向けの魔法瓶を作ってきた米Stanleyは、40オンスのタンブラーQuencherがSNSで爆発的に売れ、CNBCによれば年商が2019年の7,300万ドルから2023年には7億5,000万ドルへと約10倍になりました。車が全焼してもQuencherだけが無事で、中の氷まで残っていた動画が拡散すると、同社の社長が投稿者に新車を贈り、さらに話題を呼びます。2024年にはスターバックスとの限定色を求めて、米量販店Targetの開店前に徹夜の列ができました。
Z世代が買ったのは老舗の格ではありません。いま起きている現象に自分も参加しているという感覚です。ロゴは目的から、合図に変わりました。

4つの潮流を並べる|ロゴ神話のあとに残る買い物の基準

潮流 象徴する事実 読み取れるブランド観
SHEIN 米国でダウンロード首位、労働告発で不買運動も 安さは買う理由でも、誇る理由ではない
スリフト 中古衣料市場は2028年に3,500億ドル予測 一点物を探す目利きが新しいステータス
デュープ Z世代の49%に購入経験 名前だけに上乗せ価格を払わない
Stanley 年商が4年で約10倍 モノではなく現象への参加を買う

4つはばらばらの流行に見えて、根は一つです。情報の非対称性が消えたこと。原価も、工場の内側も、そっくりな代替品も、検索すれば数秒で目の前に並びます。

海外のZ世代はブランドを信じなくなったのではありません。価値を決める権限がブランドから買い手へ移っただけです。ロゴはもう保証書ではなく、使いこなす素材の一つになりました。

日本ブランドへの示唆|検証に耐える正直さが次のブランディング

この変化は日本企業にとって追い風になりえます。素材や製造工程を静かに積み上げてきた日本のものづくりは、検証してから買う世代と相性がいいからです。問われるのは、憧れを演出する広告よりも、生産背景や価格の根拠を先回りして開示する正直さ、そして古着やデュープと比較された上でなお選ばれる理由の設計です。海外のZ世代の消費が数年遅れで日本に上陸してきた歴史を踏まえれば、準備の時間は長くありません。環境意識の強いヨーロッパの若者の間で、古着がすでに標準装備になっていることも見逃せません。ロゴ神話の終わりを嘆くより、検証されるほど強くなるブランドへ組み替える好機だと研究所は考えています。

若者研究所では、現役の学生研究員へのインタビューや海外トレンドの定点観測を通じて、Z世代のブランド観を企業のマーケティングと商品開発につないでいます。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

海外のZ世代に人気のブランドにはどんな特徴がありますか?

労働環境や環境負荷まで検証された上で選ばれる点が特徴です。古着やデュープと比較されてもなお選ばれる理由、つまり価格に見合う体験と正直な情報開示を持つブランドが支持を集めています。

デュープとは何ですか?偽物とはどう違いますか?

デュープはduplicateの略で、高級品に似た機能や見た目を持つ廉価品を指します。ロゴを偽造する偽物と違い、本家の名前を挙げた上で代替品として楽しむ買い方で、米国ではZ世代の約半数が購入経験を持つと調査で報告されています。

なぜ海外のZ世代は古着を好むのですか?

環境負荷への配慮に加えて、一点物を探し当てる楽しさと目利きの証明になる点が大きな理由です。中古衣料市場は今後も拡大が予測されており、古着は節約ではなくセンスの表現として定着しています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。