Z世代向けブランディングの進め方|共感される世界観と距離感の設計

Z世代向けのブランディングに取り組む企業から、似た相談が続いています。広告は打っている、SNSも更新している、それでも若者に届いている手応えがない。つまずきの原因はたいてい、ブランドを企業が伝えるものと捉えたまま設計している点にあります。Z世代にとってブランドは受け取るものではなく、使うものだからです。

Z世代にとってブランドは自分を表現する素材

どのブランドの服を着るか、どのカフェの写真をストーリーズに載せるか、どのコスメをポーチに入れるか。Z世代にとってこうした選択は、そのままプロフィールの一部として機能します。
ブランドを選ぶことが自己紹介であり、シェアすることが意思表示になる。だから彼らは、ブランドが何を語っているかと同じくらい、そのブランドを持つ自分が周りからどう見えるかを気にします。

SNSで自分をどう見せるかを思春期から練習してきた世代ならではの感覚で、背景にあるZ世代の価値観を押さえておくと、この後の設計がぶれません。ブランディングの出発点は、私たちのブランドは何者かという問いではなく、このブランドは若者の自己表現にどう役立つかという問いになります。この視点の転換はZ世代マーケティングの全領域に共通する前提です。

共感の入口は立派な理念より正直さ

パーパスやビジョンを磨き込んでも、それだけでZ世代の共感は生まれません。彼らが最初に見るのは、そのブランドが正直かどうかです。
できないことをできないと言う。失敗したら言い訳せずに認める。値上げするなら理由を隠さず説明する。こうした振る舞いの積み重ねが、掲げた理念よりも先に信頼をつくります。

研究所の学生研究員と話していて、好きなブランドの理由に立派な理念が挙がることはほとんどありません。挙がるのは、あそこは嘘をつかない、無理をしていない、という言葉です。

逆に、都合の悪い指摘を見なかったことにしたり、炎上した時にテンプレートの謝罪文を出したりする姿は、想像以上に細かく見られています。共感の入口は感動的なストーリーではなく、日々の誠実さにあります。

世界観の一貫性|SNSの中の人までがブランド

Z世代はブランドを面で見ています。広告のトーン、公式SNSの中の人の口調、店頭スタッフの接客、採用ページの文章。彼らの中ではすべてがひとつのブランド体験としてつながっていて、どこか一箇所でも矛盾すると、その違和感はスクリーンショットとともに一気に共有されます。

接点 従来のブランディング Z世代向けの設計
広告やビジュアル ここだけ作り込む 数ある入口のひとつ
SNSの中の人 運用担当に任せる ブランドの人格そのもの
接客やサポート対応 別部署の仕事 世界観の答え合わせの場
採用や社内の空気 ブランドと無関係 口コミで外に伝わる裏側

世界観の設計とは、ビジュアルのガイドラインを整えることではなく、あらゆる接点で同じ人格を保てる体制をつくることです。中の人の言葉づかいひとつまで、ブランドの一部として扱う必要があります。

距離感の設計|近すぎると冷める、媚びはバレる

Z世代に寄り添おうとして、若者言葉を多用したり、流行のミームに乗り続けたりする公式アカウントがあります。この距離の詰め方は、ほぼ確実に見抜かれます。友達のふりをして急に近づいてくる大人が敬遠されるのと、同じ構図です。

心地よく感じられるのは、ブランドとしての軸を保ちながら、話しかけられたらきちんと応じる距離感です。
自分から馴れ馴れしくはしない。それでもリプライには人格のある言葉で返す。トレンドに乗るのは自分たちの世界観と重なる時だけ。この抑制が、かえって信頼と憧れを生みます。

作る過程を見せるインサイド共創

完成品を磨き上げてから発表するより、作っている途中を見せるほうがZ世代には届きます。試作品の段階で意見を聞く。ボツ案も含めて開発の裏側を発信する。パッケージ案を投票で決める。
過程に関わった若者にとって、そのブランドはもう他人事ではありません。自分が育てたブランドとして、頼まれなくても周りに語ってくれます。

共創は宣伝の手法というより、ブランドと若者の関係そのものを変える仕組みです。関わってもらう余白を最初から設計に組み込んでおけるかどうかが、発売後の広がりを左右します。

ブランディングの効果は若者との対話で確かめる

認知率や好意度の数字を追うだけでは、Z世代の中でブランドがどう生きているかまでは分かりません。確かめるべきは、若者が自分の言葉でそのブランドをどう説明するか、誰に薦めたいと言うか、どんな場面で思い出すかです。
グループインタビューや定点的な対話の中でこそ、世界観が意図どおりに伝わっているか、距離感が心地よいものになっているかが見えてきます。数字で広さを、対話で深さを測るイメージです。

戦略全体の組み立て方や施策への落とし込みは、Z世代マーケティングの親ガイドで整理しています。

若者研究所では、現役の学生研究員との対話を通じて、世界観の設計から効果の確かめ方までを支援しています。ブランディングの相談お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代向けのブランディングで最初に見直すべきことは何ですか?

ブランドを企業が伝えるものと捉える発想を改めることです。Z世代はブランドを自分を表現する素材として選ぶため、若者の自己表現にどう役立つかという視点から世界観や発信を設計し直すと届きやすくなります。

Z世代に共感されるブランドの共通点はありますか?

正直であることです。できないことを認め、失敗した時に言い訳をせず、値上げなどの事情も隠さず説明するブランドは信頼されます。立派な理念よりも、日々の誠実な振る舞いの積み重ねが共感の入口になります。

Z世代向けブランディングの効果はどう確かめればよいですか?

認知率などの数字に加えて、若者との対話で確かめます。グループインタビューなどで、若者が自分の言葉でブランドをどう説明するか、どんな場面で思い出すかを聞くと、世界観や距離感の伝わり方が見えてきます。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。