インフルエンサーの選び方|Z世代はなぜフォロワー数を見ないのか

インフルエンサー起用の相談を受けるとき、手元にあるのはたいていフォロワー数と単価が並んだリストです。ところが受け手のZ世代は、そのリストのどの数字も見ていません。投稿を開いて最初に判定するのは、この人はこの商品を本当に使ってそうか、というただ一点です。
若者研究所の研究員たちと話していても、起用する側と受け取る側の視線のずれは驚くほど大きいと感じます。

Z世代はフォロワー数ではなく「本当に使ってそうか」を見る

Z世代にとってインフルエンサーの投稿は、広告枠ではなく友人知人の近況の延長線上に流れてくるものです。だからこそ、紹介されている商品がその人の生活に馴染んでいるかどうかに敏感になります。
気になる投稿があればプロフィールに戻り、過去の投稿を遡り、このジャンルを普段から触っている人なのかを確かめる。この裏取りの動きは、Z世代マーケティングを考えるうえで前提に置くべき行動です。

研究所でよく話題になるのは、案件投稿かどうかは開いて数秒でわかる、という感覚です。文体が急に丁寧になる。写真の光が普段と違う。絵文字の使い方が変わる。受け手はそうした小さな違和感を積み上げて判定しています。

広告臭の境界線はPRタグではなく普段の投稿とのギャップ

誤解されがちですが、PRタグそのものはすでに嫌われる理由になっていません。2023年10月に景品表示法のステマ規制が始まって以降、タグを付けた案件投稿は当たり前の風景になりました。
嫌われるのはタグではなくギャップです。プチプラコスメばかり紹介していた人が突然ハイブランドの美容液を絶賛する。ゲーム実況者が脈絡なく脱毛サロンを勧める。普段の世界観から浮いた瞬間に、その投稿は広告として処理され、スワイプされて終わります。Z世代が嫌う広告に共通するのも、この文脈の断絶です。

マイクロインフルエンサーが信頼される構造

数万人規模のマイクロインフルエンサーが起用先として注目されるのは、単価が安いからではありません。信頼の構造が違うからです。

  • コメント欄が一方通行ではなく会話になっている。本人が返信し、常連のフォロワーがいる
  • ジャンルが絞られていて、その領域なら自腹で買い続けてきた説得力がある
  • 憧れの対象ではなく半歩先の人。自分でも真似できる距離感がそのまま参考になる

フォロワーが数百万人いる人の投稿はテレビCMに近い受け取られ方をしますが、マイクロインフルエンサーの投稿は詳しい友人のおすすめとして届きます。同じ商品でも、どちらの文脈で紹介されるかで意味が変わるのです。

キャスティング資料でわかること|受け手が見ていること

事務所やツール会社の資料に並ぶ数字と、受け手の判定基準は別物です。両方を並べてみると、起用前に確かめるべき点が浮かび上がります。

観点 資料に載っている情報 受け手のZ世代が見ている点
規模 フォロワー数 フォロワーの中に自分と似た人がいるか
反応 エンゲージメント率 コメント欄が会話になっているか
実績 PR案件の本数 案件が続いても世界観が崩れていないか
相性 得意ジャンルのタグ その商品を自腹で買いそうな人か

起用前に確認したいチェックリスト

候補者のアカウントを、受け手の目線でもう一度眺め直してみてください。見るべきは次の5点です。

  • 直近3か月の投稿に、その商品ジャンルが案件以外で自然に登場しているか
  • PR投稿と通常投稿で、文体や写真のトーンが変わっていないか
  • コメント欄に本人の返信があり、フォロワーとの関係が続いているか
  • 競合商品の案件を短い期間に掛け持ちしていないか
  • 台本がなくても、その商品カテゴリについて自分の言葉で語れそうか

引っかかる項目が複数あるなら、フォロワー数がどれだけ立派でも見送る判断が要ります。数字は社内で予算を説明する材料にはなりますが、受け手の信頼までは買えません。

起用後は「言わせない」勇気が信頼をつくる

起用が決まった後にも落とし穴があります。訴求ポイントを詰め込んだ台本を渡すほど、投稿はその人自身の言葉から離れていきます。
先に商品を渡し、生活の中で使ってもらう期間を取る。言ってほしいことではなく、使って感じたことを聞く。気になった点も少しだけ混ぜてもらう。遠回りに見えて、この余白こそが投稿を広告ではなくおすすめに変えます。

研究員と話していると、正直にここは微妙と言ってくれる人のほうが次のおすすめも信じられる、という声が繰り返し出てきます。全部を褒める投稿は、むしろ信頼を削っているのかもしれません。

若者研究所では、現役の学生研究員がインフルエンサー投稿をどう受け取っているかを、グループインタビューや定点調査で企業のマーケティングに橋渡ししています。起用候補の見え方を受け手側から検証したいときは、若者リサーチの依頼お問い合わせからお気軽にどうぞ。

よくある質問

インフルエンサーを選ぶときにフォロワー数はどのくらい重視すべきですか?

フォロワー数は届く範囲の目安にはなりますが、受け手の信頼には直結しません。その人が商品を本当に使っていそうか、普段の投稿との一貫性があるかを先に確認するほうが、起用の失敗を減らせます。

PRタグを付けるとZ世代に嫌われますか?

PRタグそのものが嫌われることはほとんどありません。2023年10月のステマ規制以降、タグ付きの案件投稿は当たり前の光景になっています。嫌われるのは、普段の投稿とかけ離れた商品や口調で紹介するギャップのほうです。

マイクロインフルエンサーを起用するメリットは何ですか?

フォロワーとの距離が近く、コメント欄で会話が生まれているため、投稿が詳しい友人のおすすめのように受け取られやすい点です。ジャンルが絞られていることで、紹介する商品への説得力も生まれやすくなります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。