UGCマーケティングがZ世代に効く理由。信頼される口コミが生まれる条件

新商品が気になったとき、公式サイトを開く前にSNSの検索窓へ商品名を打ち込む。研究員たちと話していると、この行動はもう説明のいらない当たり前になっています。企業がどれだけ言葉を磨いても、Z世代が最後に参照するのは実際に使った人の言葉です。
UGCマーケティングを考える出発点は、手法の前に、この信頼の構造を理解することにあります。

Z世代がUGCを信じる理由|企業の言葉は割り引かれる

UGCとはユーザー生成コンテンツ、つまり生活者が自分の意思で投稿した口コミやレビュー、写真や動画のことです。生まれたときから広告に囲まれて育ったZ世代は、企業の発信は良い面しか言わないという前提を早くから身につけています。だから宣伝の言葉は自動的に割り引かれる。
一方でUGCは、売る側と利害関係のない他者の実体験として受け取られます。Z世代マーケティングの議論で口コミの重要性が繰り返し語られるのは、この非対称があるからです。

比較軸 企業の発信 UGC
発信者 ブランド自身 実際に使った生活者
語られる内容 長所が中心 長所も短所も混ざる
受け取られ方 宣伝として割り引かれる 実体験として参照される
企業の関与 すべて設計できる 設計できない。条件を整えることはできる

失敗レビューの価値|悪い口コミが信頼をつくる

研究員の買い物の様子を見ていて印象的なのは、低評価レビューから先に読む人の多さです。星5だけが並ぶ商品ページはむしろ警戒されます。デメリットまで書かれた投稿こそ、本当に使った人の証拠として重みを持つ。
ここに企業側の発想の転換が要ります。悪い口コミを消したり隠したりするほど、残った良い口コミの信頼まで一緒に下がっていきます。乾燥肌には合わなかったという一文が、脂性肌の読者にとっては購入の決め手になることさえあるのです。

完璧な商品説明は疑われ、正直な失敗談は信頼される。情報の価値が内容だけでなく発信者の立場で決まる。これがZ世代の情報環境の前提です。

UGCが生まれる3つの条件|余白・ハッシュタグ・真似しやすさ

UGCは偶然の産物ではありません。生まれやすい商品と生まれにくい商品があり、研究所で話題にのぼる事例を観察していくと、条件はおおむね3つに整理できます。

  • シェアしたくなる余白がある。完成されすぎず、自分なりの使い方やアレンジを語る余地が残っている
  • ハッシュタグが設計されている。短くて打ちやすく、ほかの話題と混ざらない固有の言葉が用意されている
  • 真似しやすい。投稿の型が見えていて、自分にも撮れる、自分も書けると思える

逆に、説明されないと良さが伝わらない商品や、投稿の正解が見えない商品はUGCが伸びません。作り込まれた世界観より、真似できる型のほうがUGCには効きます。

企業がUGCを作ろうとすると失敗する逆説

ここで多くの企業がつまずきます。UGCが効くと分かった瞬間、報酬を払って投稿を量産させたくなる。しかしUGCの価値の源泉は利害関係のなさです。お金で作った瞬間に、信じられていた理由そのものが消えます。
Z世代はやらせへの嗅覚が鋭く、不自然に褒めるだけの投稿はすぐ見抜かれます。2023年10月には景品表示法のステマ規制も施行され、広告であることを隠した投稿は法的にも許されなくなりました。発覚したとき失うのは、その商品の評判だけでなくブランド全体への信頼です。

UGCは広告枠のように買えません。買えないからこそ信じられている。この順序を忘れた施策から崩れていきます。

インフルエンサー投稿とUGCはどう違うのか

混同されがちですが、フォロワーの多い発信者によるPR投稿と、一般の生活者による自発的なUGCは、受け取られ方がまったく違います。Z世代はPR表記のある投稿を頭ごなしに否定はしないものの、仕事としての発信と本音の発信を分けて読んでいます。
むしろ強く効くのは、自分と距離の近い人の言葉です。フォロワー数の多さより、生活の地続き感が信頼の根拠になる。この構造はインフルエンサーへの信頼の分析とも重なりますが、UGC施策を考えるうえでも同じ原則が働きます。

UGC活用の実務ステップ|観察から始める

では企業は何から手をつければいいのか。順番はシンプルです。

  • まず観察する。自社名や商品名でSNSを検索し、誰がどんな言葉で語っているかを集める
  • 語られている言葉を活かす。生活者の表現を商品ページや売り場のコピーに反映する
  • 動線を整える。公式ハッシュタグや撮りたくなる仕掛け、投稿の型をそっと提示する
  • 生まれた投稿に反応する。公式アカウントが拾い、許諾を得て紹介する
  • 指名検索やハッシュタグ投稿数の推移を観測し、次の企画に返す

どの段階でも主役は生活者です。企業の役割は舞台を整えることであって、台本を書くことではありません。Z世代向けマーケティングの全体設計のなかでも、UGCは信頼そのものを扱う中核の打ち手になります。

若者研究所では、現役の学生研究員へのインタビューや定点調査を通じて、Z世代のリアルな口コミ行動を企業のマーケティングと商品開発に接続しています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

UGCマーケティングとは何ですか?

ユーザー生成コンテンツ、つまり生活者が自発的に投稿した口コミやレビュー、写真や動画を企業のマーケティングに活かす手法です。広告と違い、実際に使った人の言葉として受け取られるため、購買の意思決定に強く影響します。

なぜZ世代はUGCを重視するのですか?

生まれたときから広告に囲まれて育ち、企業の発信は良い面を中心に伝えるものだと理解しているためです。利害関係のない生活者の実体験は割り引かずに参照でき、悪い点まで書かれたレビューほど信頼されやすい傾向があります。

企業がUGCを増やすにはどうすればよいですか?

報酬を払って投稿を作らせるのではなく、UGCが生まれる条件を整えることが基本です。シェアしたくなる余白を残し、短く検索しやすいハッシュタグを用意し、真似しやすい投稿の型を示したうえで、生まれた投稿に公式が丁寧に反応していきます。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。