Z世代マーケティングの教科書|刺さる手法・嫌われる広告・成功の型

テレビCMを打てば若者に届いた時代は終わりました。Z世代は1日の大半をスマートフォンとともに過ごしながら、広告だけを器用に避けていきます。それでも、気に入ったブランドには驚くほど深くお金と時間を注ぐのもこの世代です。
刺さるか、嫌われるか。その分かれ目には、はっきりとした型があります。

Z世代マーケティングはなぜ難しいのか|広告回避と世代内の多様性

最初の壁は広告回避です。物心ついたときからネット広告に囲まれて育ったZ世代は、画面のどこに広告が出るかを体で覚えています。スキップできるものは反射的にスキップし、できないものは視界から外す。広告らしさを感知した瞬間、内容を見る前に心を閉じるのです。

もうひとつの壁が、世代内の多様性です。Z世代とひとくくりに呼ばれますが、実際の関心はコミュニティ単位で細かく分かれています。K-POPに熱中する学生と、キャンプ道具を自作する学生では、見ているメディアも憧れる人も重なりません。
マス広告のように全員へ一斉に届ける発想は、この世代には構造から合いません。まずZ世代の特徴を押さえたうえで、どのコミュニティの誰に届けたいのかを絞り込むことが出発点になります。

Z世代に届く経路の全体像|SNS・口コミ・推し・偶然の発見

Z世代がモノやサービスと出会う経路は、大きく4つに整理できます。

経路 特徴 企業側の打ち手
SNSのおすすめ表示 TikTokやリールのフィードで偶然出会う。本人は探していない 広告ではなくコンテンツとして流通する設計にする
友人・知人の口コミ もっとも信頼される。閉じたグループチャットの中で広がる 語りたくなる体験と、共有しやすい仕掛けを用意する
推しの発信 好きな発信者や推しが使っているものは素直に受け入れられる 関係性の深い相手と継続的に組む
SNS内検索 買う前にハッシュタグやマップで実物とレビューを確かめる 検索されたときに出てくる投稿の量と質を育てる

共通するのは、企業の公式発信が起点ではないことです。
誰の口を通って届くか、どんな文脈で目に入るか。それが内容そのものと同じくらい効きます。プラットフォームごとの使われ方はZ世代のSNSの使い分けで詳しく分析しています。

嫌われる広告の共通点|若者ぶる・説教くさい・ステマ感

研究員に嫌いな広告を挙げてもらうと、答えは驚くほど揃います。パターンは3つです。

パターン Z世代の受け取り方
若者ぶる 流行語やネットミームを無理に使う広告は、消費されている感覚だけが残る。流行の賞味期限にも間に合っていないことが多い
説教くさい こうあるべきだと上から語る広告は、内容が正しくても反発される。価値観の押しつけにもっとも敏感な世代
ステマ感 広告なのに広告と明かさない発信は、発覚した瞬間にブランドごと信頼を失う

ステマについては2023年10月に景品表示法による規制が始まり、広告であることを隠す表示は法律違反になりました。ただ、Z世代の目は法律より厳しいのが実際のところです。PR表記があっても、本心で薦めていない投稿は温度で見抜かれます。
取り繕うより、企業として正直に語るほうが結果的に好かれます。

広告の話題になると、若者研の座談会は一気に辛口になります。

ある研究員は「広告だと気づいた瞬間、脳がスキップ姿勢に入る」と表現しました。ただ、その直後に「でも好きなブランドの投稿なら、広告でも見るし保存する」とも言うのです。

嫌われているのは広告そのものではなく、関係のない割り込みです。先に関係をつくれたブランドだけが、広告さえコンテンツとして見てもらえる。この非対称性がZ世代マーケティングの出発点だと考えています。

UGCが効く理由|つくり込んだ宣伝より他人のリアル

UGCは、一般の生活者が自発的に投稿するコンテンツのことです。Z世代の購買において企業広告よりUGCが信頼されるのには理由があります。
投稿者が自分と同じ立場だから。盛る動機がないから。そして、良い点も微妙な点も両方書いてあるからです。

日経トレンディが2021年のヒット商品1位に選んだのは、TikTok売れという現象でした。その象徴になった地球グミは、企業の広告ではなく、食べる動画の連鎖だけで品切れが続く社会現象になりました。
買う前にSNSで検索し、実際に使っている人の投稿で確かめてから決める。この確認行動が習慣になっている世代だからこそ、検索したときに出てくるUGCの量と質が売上を左右します。Z世代の消費行動の根っこにあるのは、失敗したくないという慎重さです。

インフルエンサー起用の注意点|フォロワー数より関係性

インフルエンサー施策でもっとも多い失敗が、フォロワー数だけで起用を決めることです。100万人に薄く届くより、1万人に深く信頼されている人のほうが行動を動かすことは珍しくありません。

見るべきはフォロワーとの関係性です。

  • コメント欄に会話があるか。定型の絵文字だけが並ぶアカウントは要注意です
  • 普段の発信と商材の文脈が合っているか。唐突な案件投稿にはフォロワーが一番先に気づきます
  • 過去の案件の頻度はどうか。広告だらけのアカウントは、その人自身の信頼が目減りしています
  • 本人が本当に使いたいと思っているか。契約より先に、商品を好きになってもらう工程を挟めるかどうかで結果が変わります

共創とアンバサダーの設計|ファンを作り手の側に巻き込む

単発の投稿依頼より一歩踏み込んだ手法が共創です。ブランドのファンであるユーザーをアンバサダーとして迎え、製品開発の段階から関わってもらう設計を指します。

有名なのはワークマンです。同社のアンバサダーは無報酬ですが、素材や色を選ぶ段階から開発に参加し、自分の意見が製品になる体験を得ています。選定基準もフォロワー数ではなく、ブランドへの愛着と投稿の質です。
ここから学べる設計原則は3つあります。金銭ではなく参加の実感で報いること。キャンペーン単位ではなく年単位の関係を築くこと。発信の内容を企業が管理しすぎないこと。
言わされている言葉は届きません。本人の言葉で語れる余白を残すことが、共創の生命線です。

バズを目的にした瞬間に失敗が始まる|研究所からの逆張り

バズらせてほしいという相談をよくいただきます。気持ちは分かりますが、私たちはまず、その目的設定を疑うところから始めます。

研究所でくり返し話しているのは、バズは結果であって目的ではないということです。数字のために設計されたコンテンツは、その狙いの匂いごと見抜かれます。届けたい相手が決まっていないバズは、通り雨と同じで何も残しません。

バズを目的化すると、3つの罠にはまります。
ひとつ、瞬間的な認知は取れても、誰に何が残ったのか説明できない。ふたつ、過激さで注目を狙うほど炎上と隣り合わせになる。みっつ、バズの再現を求められ続け、施策がギャンブルになる。
地球グミのようなヒットは狙って再現できるものではありません。再現できるのは、語りたくなる商品体験と共有されやすい導線を、地道に整えることだけです。

ブランディングと世界観の一貫性|単発の企画より積み重ね

Z世代は企業を一つの人格として見ています。広告だけかっこよくても、公式アカウントの返信が事務的だったり、働く人の評判が悪かったりすれば、全体で一つの矛盾として受け取られます。

だからこそ効くのが、世界観の一貫性です。色やトーンといった表層だけでなく、何を良しとするブランドなのかという価値観が、商品にも投稿にも店頭にも通っていること。
キャンペーンごとに人格が変わるブランドは記憶に残りません。逆に、一貫した世界観は、ファンが友人にブランドを説明するときの言葉になってくれます。口コミの最初の一文を企業がデザインする行為こそがブランディングだと、私たちは考えています。

効果検証の考え方|再生数ではなく態度の変化を見る

Z世代向け施策の効果測定は、再生数やインプレッションだけでは判断を誤ります。おすすめフィードでは、興味のない動画でも数秒は再生されてしまうからです。

見るべきは態度の変化を示す指標です。

  • 保存数。あとで見返す価値があると判断された証拠で、いいねより購買に近い行動です
  • コメントの質。定型の反応ではなく、自分の言葉で書かれた感想が増えているか
  • 指名検索とSNS内検索の推移。ブランド名で探されるようになったか
  • UGCの自然発生数。企画が終わったあとも投稿が続いているか

単発のキャンペーンごとに勝ち負けを裁くより、四半期や年の単位で態度指標の推移を追うほうが、実態に合った評価になります。

若者理解の解像度を上げる|データの向こうにいる当事者と話す

ここまでの型はどれも、対象への理解が浅いまま使うと空回りします。SNS分析やアンケートの数字は、何が起きているかは教えてくれますが、なぜ刺さったのかまでは教えてくれません。
そのなぜは、当事者との対話からしか出てきません。

研究員と話していると、大人が立てた仮説が最初の10分で崩れる場面に何度も立ち会います。そして仮説が崩れる瞬間こそ、マーケティングの精度が上がる瞬間です。
グループインタビューや定点観測など具体的な進め方は若者リサーチの方法にまとめています。まずは1回、ターゲットと同じ世代の生の声を聞く場をつくることから始めてみてください。

若者研究所では、100人以上の現役学生研究員によるグループインタビューや定点調査、企画の壁打ちを通じて、企業のZ世代マーケティングと商品開発を支援しています。調査設計から一緒に考えてほしい方は若者リサーチの依頼を、世界観づくりから伴走してほしい方はブランディング支援をご覧ください。企画がまだ固まっていない段階のご相談も歓迎です。お問い合わせからお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代マーケティングで最初にやるべきことは何ですか?

ターゲットの絞り込みです。Z世代の関心はコミュニティ単位で細分化しているため、世代全体ではなく、どのコミュニティの誰に届けたいかを決めることが出発点になります。そのうえで、その層が信頼している経路と発信者を調べます。

Z世代に嫌われる広告にはどんな特徴がありますか?

無理に流行語を使って若者ぶる広告、上から目線で説教くさい広告、広告であることを隠したステマ的な発信の3つが代表的です。いずれも見抜かれた時点で内容にかかわらず反発され、ブランドへの信頼も下がります。

インフルエンサーはフォロワー数で選んではいけないのですか?

フォロワー数は参考程度にとどめるのが安全です。重要なのはフォロワーとの信頼関係で、コメント欄に会話があるか、普段の発信と商材の文脈が合っているかを確認します。少人数でも深く信頼される発信者のほうが行動を動かします。

Z世代向け施策の効果はどう測ればよいですか?

再生数やインプレッションだけでなく、保存数、コメントの質、指名検索の推移、UGCの自然発生数といった態度の変化を示す指標を見ます。単発の企画ごとではなく、四半期や年単位で推移を追うと実態に合った評価ができます。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。