Z世代のエシカル消費は建前か本音か|意識と財布のギャップの正体

Z世代はサステナ意識が高い。マーケティングの現場で繰り返されるこの定説は、半分だけ本当です。
意識は確かにあります。ただ、財布は正直です。エシカルであることが購買の決め手になる場面は、企業が期待するよりずっと限られています。学生研究員たちの買い物の実態を見ていると、意識調査の数字を鵜呑みにした施策がなぜ空振りするのか、その構造がよく見えてきます。

サステナ意識が高い、は半分だけ本当

いまの10代から20代前半は、SDGsを学校の授業で習った初めての世代です。環境や人権への感度が上の世代より高いのは事実で、消費者庁の消費生活意識調査では、エシカル消費を実践している人の割合が言葉の認知度を上回るという逆転現象も報告されています。マイボトルを持ち歩き、古着を当たり前に着る。言葉を知らなくても、行動のレベルではすでに生活へ溶け込んでいるのです。

問題は、この意識の高さがそのまま購買に変換されると企業側が思い込むことです。アンケートで環境に配慮したいと答えることと、レジの前で割高なエシカル商品を手に取ることは、まったく別の行動です。

財布は正直|支持はあくまで条件付き

電通のエシカル消費意識調査では、エシカル商品を購入する理由の首位は、同じような商品を買うなら社会貢献につながるものがいい、というものでした。ここに本音が凝縮されています。
支持は無条件ではありません。同価格で同品質ならエシカルを選ぶ。しかし割高なら選ばない。研究所の学生研究員に聞いても、答えはおおむね一致します。数百円の差額があるなら、その分を推し活や友人との食事に回したい。それが偽らざる感覚です。

エシカルが効く場面、効かない場面

研究員たちの声を整理すると、エシカルが購買を左右する条件はかなりはっきり分かれます。

場面 エシカルの効き方 若者の本音
同価格で同品質の商品が並ぶ 選ぶ理由になる どうせ買うなら良いほうを
エシカル商品だけが割高 ほぼ効かない 差額は推し活に回したい
好きなブランドが取り組んでいる 愛着が深まる 好きでいてよかった
正しさを前面に訴求される 逆効果になりうる 説教されている気分になる

ギャップの正体|お金の問題だけではない

意識と行動のギャップは、可処分所得の少なさだけでは説明できません。研究員と話していると、少なくとも三つの構造が絡んでいます。

  • 効果が見えない。自分の一回の買い物が環境をどう変えたのか、実感できるフィードバックがない
  • 共有しにくい。コスメや推し活と違って、エシカルな買い物はSNSに投稿しても盛り上がりにくい
  • 失敗が怖い。割高な商品が品質で期待外れだったとき、後悔が二重になる

三つ目は根深い問題です。限られたお金で絶対に失敗したくないという心理はZ世代の消費行動の全体を貫く原則で、レビューを確かめ比較検討に時間をかける買い方と地続きにあります。エシカルという付加価値は、この慎重さの前ではむしろリスク要因にすらなり得るのです。

順序が逆|好きなブランドがエシカルだと嬉しい

ではエシカルは無意味なのかというと、そうではありません。効く順序が違うだけです。
エシカルだから買うのではなく、好きなブランドがエシカルだと嬉しい。先にあるのはブランドへの愛着で、エシカルは後からついてくる加点要素です。推しのアーティストが環境活動をしていたら誇らしくなる、あの感覚に近いと言えばイメージしやすいでしょうか。

研究所でよく出てくる言い方があります。エシカルは買う理由にはならないけれど、好きでい続ける理由にはなる。入口ではなく、ブランドとの関係を深める途中で効いてくるのだと。

サステナ訴求の落とし穴と、それでも取り組む意味

この順序を取り違えると、訴求は空振りします。典型的な落とし穴は三つです。

  • 正しさを主語にした広告。環境のために買いましょうという呼びかけは説教として受け取られやすい
  • 実態の伴わないやってる感。言行不一致への嗅覚は鋭く、グリーンウォッシュと見なされれば信頼ごと失う
  • エシカルを理由にした値上げ。趣旨に共感はしても、負担の押し付けと感じた瞬間に離れていく

建前と本音のダブルスタンダードを嫌う感覚はZ世代の価値観の中核にあり、サステナ訴求はその審査の目に真っ先にさらされます。
それでも取り組む意味はあります。エシカルは加点より減点で強く効くからです。取り組んでいても売上は急には伸びませんが、問題が発覚したブランドからは静かに、しかし確実に人が離れていきます。攻めの差別化ではなく、好きでいてもらい続けるための守りの投資。そう捉え直すと、サステナ訴求の設計は大きく変わるはずです。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点観測を通じて、意識調査だけでは見えない若者の本音を企業のマーケティングや商品開発へ橋渡ししています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代は本当にエシカル消費に関心があるのですか?

関心はありますが条件付きです。学校教育でSDGsを学んだ世代のため環境や社会課題への感度は高い一方、価格と品質が同等の場合に限ってエシカルな商品を選ぶ傾向が強く、割高な場合は通常の商品を選ぶことが多いのが実態です。

Z世代の意識と行動にギャップが生まれるのはなぜですか?

可処分所得の少なさに加えて、購買の効果が実感できないこと、SNSで共有しにくいこと、割高な商品で失敗したくない心理が働くことが重なっているためです。意識の低さではなく、構造的な理由によるものです。

企業がZ世代にサステナビリティを訴求する際の注意点は何ですか?

正しさを前面に出した説教調の訴求や、実態の伴わない取り組みは逆効果になります。まずブランドとしての魅力で選ばれ、そのうえでエシカルな姿勢が愛着を深めるという順序を意識し、一貫した行動で示すことが大切です。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。