リセールバリュー消費とは?売る前提で買うZ世代の実質レンタル感覚

メルカリで売ることを決めてから、買うものを選ぶ。Z世代の買い物を見ていると、この順番の逆転に気づきます。欲しいから買うのではなく、手放すときの値段まで計算してから財布を開く。リセールバリューを軸にした消費は、もう一部のフリマ上級者だけの習慣ではありません。

売る前提で買う|購買はレジで終わらない

研究所の学生研究員と話していると、買い物の意思決定にあらかじめ売却価格が組み込まれていることに驚かされます。スニーカーを買う前にフリマアプリで相場を検索し、値崩れしにくい色やモデルを選ぶ。ライブのグッズも、あとで買い手がつく定番アイテムかどうかを確かめてから列に並ぶ。
彼らにとって購買はレジで完結しません。買って、使って、出品して、次の誰かに渡すところまでがひとつのサイクルです。Z世代の消費行動の中でも、この売却込みの意思決定は特に構造的な変化だと私たちは見ています。

買値と売値の差だけ払う|実質レンタルという金銭感覚

たとえば1万円のアイテムを買い、しばらく使って7,000円で売れたら、実質の負担は3,000円。Z世代はこの引き算を日常的にやっています。商品の値札ではなく、買値と売値の差額こそが本当のコストだという捉え方です。
これは所有というより、レンタルに近い感覚だといえます。手元にあるあいだの利用料を払っている、と言い換えてもいいでしょう。

研究員のひとりは、高いものほど安心して買えると話していました。定番ブランドほど二次流通の相場が安定していて、差額が小さく済む。安いものを買って価値がゼロになるより、高いものを高く売るほうが合理的だという逆転の発想です。

この計算高さは、単なる節約志向とは違います。限られたお金で経験の回転数を上げるための知恵であり、Z世代の金銭感覚を象徴する行動のひとつです。

箱は捨てない|付属品が資産になる日常

売る前提の暮らしは、部屋の中の習慣も変えます。象徴的なのが箱です。スマホの空き箱、スニーカーの箱、家電の緩衝材。親世代が真っ先に捨てていたものを、Z世代は丁寧に保管します。箱や付属品の有無で売値が変わることを、経験から知っているためです。

  • スマホは箱と未使用のケーブルをセットで保管する
  • 衣類のタグは切らずに残し、出品時の写真に写す
  • 説明書や保証書はまとめてクリアファイルへ入れる
  • 限定品は紙袋まで取っておく

モノを大切にしているようでいて、実際には資産価値を守るメンテナンス行動です。所有期間はいわば在庫期間であり、コンディション管理の丁寧さがそのまま売値に跳ね返ります。

リセールに強いモノ、弱いモノ|選ばれる条件

売る前提の目線は、新品を選ぶ段階からすでに働いています。二次流通で価値が残るものと残らないものの違いは、おおよそ次のように整理できます。

観点 リセールに強い リセールに弱い
ブランド 指名検索される定番ブランド 知名度の低いブランド
デザイン 定番色でベーシックな型 一過性の流行デザイン
状態 箱とタグと付属品が完備 本体のみで使用感が強い
供給 限定やコラボで数が少ない いつでも新品が安く買える

同じ予算なら、あとで価値が残るほうを選ぶ。だから定番ブランドの定番色に人気が集中し、値崩れしにくいという評判がさらに次の買い手を呼び込みます。リセールバリューは人気の結果であると同時に、人気の原因にもなっているのです。

メーカーへの示唆|二次流通まで含めて商品を設計する

二次流通は長らく、メーカーにとって新品の売上を奪う存在と見なされてきました。しかし売る前提で買う世代が消費の主役になるなら、話は逆です。高く売れるという安心感そのものが、新品を買う理由になるからです。

研究所では、リセールバリューを第二の価格と呼んでいます。定価と並んで、手放すときにいくらになるかがブランドへの信頼を左右する時代が来ています。

具体的には、次のような設計が考えられます。

  • 捨てたくなくなる、保管しやすい箱や付属品のデザイン
  • シリアル番号や刻印など、正規品を証明しやすい仕組み
  • 安易な値引きを避け、定価への信頼を守る価格運用
  • 公式の下取りやリユースで二次流通を自社に取り込む導線

値引きで売り切るブランドは二次流通の相場も崩れ、次の新品購買で選ばれにくくなります。逆に価格を守り抜くブランドは、フリマアプリでの高値が新品の背中を押してくれる。手放される瞬間まで含めてブランド体験を設計できるかどうかが、これからの分かれ目です。

若者研究所では、現役の学生研究員へのインタビューや定点調査を通じて、こうした消費行動の変化を企業のマーケティングや商品開発につなげる支援をしています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

リセールバリュー消費とは何ですか?

購入する時点で将来の売却価格まで考慮し、買値と売値の差額を実質的なコストとして捉える消費行動です。フリマアプリの普及を背景に、若い世代を中心に広がっています。

Z世代はなぜ商品の箱や付属品を捨てずに保管するのですか?

箱やタグ、付属品がそろっていると二次流通での売却価格が上がりやすいためです。所有している間も商品の資産価値を守る意識があり、説明書や保証書、紙袋まで丁寧に保管する人が増えています。

リセールバリューの高さはメーカーにとってどんな意味がありますか?

手放すときに高く売れるという安心感が、新品を購入する後押しになります。安易な値引きを避けて定価への信頼を守ることや、公式の下取りやリユースの仕組みを整えることが、ブランド価値の維持につながります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。