ドンキはなぜ若者に人気なのか?夜の遊び場と宝探し感が生む回遊消費

夜10時を過ぎたドン・キホーテをのぞくと、客層の若さに驚かされます。カゴを持たず、買うものも決めず、友だちと棚のあいだをぶらぶら歩く。研究員に聞いても、ドンキは買い物に行く場所というより、なんとなく行く場所だという答えが返ってきます。
このなんとなくの中身にこそ、いま若者に選ばれる店舗の条件が詰まっています。

夜のドンキは若者の遊び場になっている

ある大学2年の研究員は、バイト終わりに友だちと合流すると、まずドンキに向かうと話してくれました。目的は特にありません。お菓子の新商品を眺め、コスメを試し、パーティーグッズで笑い、最後に飲み物だけ買って店を出る。
カラオケほどお金はかからず、ファミレスほど長居のプレッシャーもない。深夜まで開いていて駅から近く、ワンコインでも何か買える。ドンキは夜のすきま時間を埋める遊び場の選択肢になっています。

買うものが決まっている日は、逆にドンキには行かないかもしれない。何もない日に行くのがドンキ。
そう話す研究員の言葉が、この店の使われ方を端的に表しています。買い物は目的ではなく、遊びに行った結果なのです。

宝探し感|目的買いではなく回遊を楽しむ

ドンキの代名詞といえば圧縮陳列です。天井まで積み上がった商品、棚の隙間を埋める謎の雑貨、通路にせり出すワゴン。効率よく買うという点では明らかに不便なのに、若者はこの不便さをむしろ楽しんでいます。
何がどこにあるか分からないからこそ、思いがけない商品に出会える。検索して最短で買う消費とは正反対の、宝探しのような体験です。Z世代の消費行動を見ていると、彼らは効率と偶然を場面ごとにはっきり使い分けていることが分かります。

目的買い型の店 回遊型の店
代表例 コンビニ、ドラッグストア ドンキ、古着屋、雑貨屋
来店動機 必要なものがある 何かあるかもしれない
価値の中心 早い、近い、確実 出会い、驚き、話のネタ
滞在時間 短いほどよい 長いほど楽しい

プチプラコスメの聖地であり韓国カルチャーの入口

回遊の中でも特に吸引力が強いのが、コスメと韓国系の売場です。数百円から試せるプチプラコスメがまとまって並び、SNSで話題の商品が手書きPOPつきで積まれている。高校生にとっては、デパコスの前にまず通う場所になっています。
韓国コスメや韓国のお菓子、ラーメンの品揃えも厚く、K-POPやドラマで韓国に興味を持った若者が、専門店や現地に行く前に最初に手を伸ばす棚でもあります。

失敗しても数百円という価格は、試すことのハードルを大きく下げます。安いから買うのではなく、安いから冒険できる。この違いが、初めてのジャンルに触れる入口としてのドンキを支えています。

情報密度の高い売場はSNSのタイムラインに似ている

ドンキの売場を歩く体験は、SNSのタイムラインをスクロールする感覚によく似ています。視界に飛び込んでくる大量の商品、思わず突っ込みたくなる変な雑貨、手書きPOPの一言。情報が過剰なくらい詰まっているから、歩いているだけで飽きません。

欲しいものを検索するのではなく、流れてくるものの中から拾い上げる。この動きは、SNSの投稿をたどりながら買うものを決めていくたぐる消費と同じ構造です。ドンキの売場は、いわばオフラインに実装されたタイムラインなのです。SNSで見かけた商品を実物で確かめる場としても機能していて、オンラインの話題と店頭が循環しています。

若者に選ばれる店舗の共通条件

ドンキの人気を分解していくと、若者に選ばれる店舗の条件がいくつか見えてきます。

  • 買わなくても成立する。滞在そのものが楽しい
  • 低単価で失敗できる。冒険のコストが小さい
  • 偶然の出会いが売場に設計されている
  • 写真や話のネタになる要素がある
  • 夜やすきま時間など、若者の生活時間に開いている

裏を返せば、品揃えと価格だけで勝負する店は、比較サイトとECに置き換えられやすいということです。実際、古着屋や韓国系ショップなど若者でにぎわう店は、どれもこの条件のいくつかを満たしています。ドンキは特殊な成功例ではなく、若者の消費行動の原理を分かりやすく体現した例だといえます。

研究所でよく話題になるのは、若者が店に求めるものがコンテンツに近づいているということです。品揃えの豊富さではなく、フィードとしての面白さ。ドンキはそれをSNSが生まれる前から実装していた店なのだと捉えています。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、若者が店やブランドを選ぶ理由を掘り下げています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

ドンキはなぜ若者に人気なのですか?

目的の買い物がなくても楽しめる回遊型の売場であることが大きな理由です。圧縮陳列がもたらす宝探し感、プチプラコスメや韓国商品の充実、深夜まで開いている気軽さが、夜のすきま時間を過ごす場所として支持されています。

若者はドンキで何を買っているのですか?

お菓子や飲み物、プチプラコスメ、韓国のお菓子やラーメンなど低単価の商品が中心です。数百円で試せる価格帯が新しいジャンルに挑戦するハードルを下げていて、買い物そのものより売場を歩く時間を楽しむ傾向があります。

若者に選ばれる店舗の共通条件は何ですか?

買わなくても滞在が楽しいこと、低単価で失敗できること、偶然の出会いが売場に設計されていること、写真や話のネタになる要素があること、夜など若者の生活時間に開いていることが挙げられます。品揃えと価格だけの勝負はECに置き換えられやすくなっています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。