TikTokと聞いて、若者がダンスを撮っているアプリを思い浮かべたなら、その像はもう何年も前のものです。研究員たちの話を聞いていると、いまのTikTokはテレビであり、検索エンジンであり、口コミサイトであり、ときには書店の平台でもあります。
何を見て、何を調べ、何を買っているのか。Z世代のTikTok利用実態を、生活の流れに沿って見ていきます。
Z世代のTikTok利用実態|垂れ流し・ながら見・寝る前の3つの型
まず押さえたいのは、TikTokを見る時間が場面ごとに分かれていることです。研究員たちの1日を聞いていくと、視聴にはおおむね3つの型があります。
| 視聴の型 | 場面 | 特徴 |
|---|---|---|
| 垂れ流し | 放課後や休日のまとまった時間 | 目的なくおすすめを眺め続ける。気づくと1時間たっている |
| ながら見 | 食事中・メイク中・移動中 | すき間時間を埋める。音だけ聞いている瞬間も多い |
| 寝る前 | ベッドの中 | 1日の締めくくり。やめどきを失って睡眠を削る自覚もある |
共通するのは、見ようと決めて開くのではなく、手が勝手に開いているという感覚です。番組を選ぶ工程がなく、開いた瞬間に何かが流れ始める。この摩擦のなさが、TikTokが生活に食い込んでいる最大の理由です。
おすすめ欄がすべて|フォローはほとんど意味を持たない
画面はフォロー中とおすすめに分かれていますが、研究員たちが見ているのはほぼおすすめ欄だけです。誰をフォローしているかより、アルゴリズムが自分をどう理解しているかが視聴体験を決める。だから彼らは、自分のおすすめ欄をまるで分身のように語ります。
興味のない動画は即座に飛ばし、好きなジャンルは最後まで見る。その積み重ねでおすすめ欄を育てる感覚があり、私のTikTokは私にしか作れないという意識が強い。友だち同士でおすすめ欄を見せ合って笑い合う遊びすらあります。
研究所でよく話題になるのは、Z世代にとってのパーソナライズが、気持ち悪さではなく心地よさとして受け取られていることです。自分より自分に詳しいおすすめ欄は、監視ではなく理解のしるしとして扱われています。
TikTok内検索|ハウツーとお店とレビューの入口
ここ数年ではっきり増えたのが、TikTokを検索窓として使う行動です。前髪の巻き方や一人暮らしの収納といったハウツー。気になる街のカフェや韓国旅行の屋台といったお店や場所。コスメや家電の正直レビュー。文字で読むより30秒の動画で見たほうが早い、という感覚が根っこにあります。
検索のきっかけは、おすすめ欄での偶然の出会いです。流れてきたカフェが気になったら店名で検索し、別の投稿者の動画を数本見比べて質感を確かめる。広告っぽさのない一般の人の投稿が判断材料になる。ググらない検索行動の中心には、Z世代のSNSの使い分けで見たとおりTikTokとInstagramが並んで座っています。
コメント欄も本編|動画とセットで読まれる文化
大人が見落としがちなのがコメント欄です。研究員たちは動画を見ながら、ほとんど反射的にコメント欄を開きます。理由を聞くと、動画の真偽や世間の温度感をコメントで確かめているのだそうです。商品紹介なら実際に買った人の感想や宣伝を疑う声が並び、面白動画なら大喜利のような返しが本編以上に笑える。
つまりコメント欄は、動画の答え合わせであり二次会でもあります。同じ動画を見た無数の人の反応をその場で共有できるため、テレビの実況に近い一体感がある。企業がTikTokを分析するとき、再生数だけ見てコメント欄を読まないのは、半分しか見ていないのと同じです。
TikTok売れ|発見がそのまま購買につながる
日経トレンディが2021年のヒット商品1位にTikTok売れを選んで以来、この言葉はマーケティングの定番になりました。地球グミの品薄、大塚製薬ファイブミニの再ブーム、筒井康隆『残像に口紅を』の重版。いずれも企業の広告ではなく、一般ユーザーの投稿から火がついています。
構造はここまで見てきた流れそのままです。おすすめ欄で偶然出会い、コメント欄で温度感を確かめ、検索で他の人の投稿を見比べて、納得したら買う。発見から検討までがアプリの中で完結するので、購買までの距離が驚くほど短いのです。
ただし、狙って起こせるものではないことも彼らはよく知っています。宣伝色が透けた瞬間に飛ばされるのがTikTokです。買い物の失敗を避けたい心理も含めて、Z世代の消費行動の全体像とつなげて捉える必要があります。
大人が誤解しがちな点|踊っているだけではない
企業やメディアの方と話していると、TikTokへの誤解は今も根強いと感じます。
- 誤解その1。TikTokはダンスと音楽のアプリ。実際は料理、勉強、就活、ニュース解説まで、生活のあらゆるジャンルが流れる総合メディアです
- 誤解その2。若者はみんな投稿している。実際は大半が見る専で、広く公開する投稿のハードルはむしろ高く感じられています
- 誤解その3。暇つぶしだから何も残らない。実際は保存機能でハウツーをためこみ、検索で何度も見返す実用ツールになっています
TikTokだけを切り出して分析すると、こうしたずれには気づけません。InstagramやXとの役割分担、すなわちZ世代のSNS利用の全体像の中にTikTokを置き直すと、踊るアプリという像がいかに一面的だったかが見えてきます。
若者研究所では、現役の学生研究員によるグループインタビューやSNSの定点観察を通じて、TikTok発のトレンドと若者のインサイトを企業のマーケティングや商品開発につなげています。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
Z世代はTikTokを1日のいつ見ていますか?
放課後や休日に目的なく眺め続ける垂れ流し、食事中や移動中のながら見、ベッドの中での寝る前という3つの場面に大きく分かれます。見ようと決めて開くというより、すき間時間に手が勝手に開いている感覚で使われています。
Z世代はTikTokで何を検索していますか?
前髪の巻き方や収納術のようなハウツー、カフェや旅行先のようなお店と場所、コスメや家電のレビューが中心です。文字で読むより短い動画で見るほうが早いという感覚があり、一般の人の投稿を複数見比べて判断する使い方が定着しています。
TikTok売れとは何ですか?
TikTokの投稿をきっかけに商品が爆発的に売れる現象で、日経トレンディの2021年ヒット商品ランキングで1位に選ばれた言葉です。企業の広告ではなく一般ユーザーの投稿から火がつくことが多く、発見から検討までがアプリ内で完結するため購買までの距離が短いのが特徴です。


