Xの若者離れが進んでいる。そんな報道を見かけるたびに、研究所にも本当ですかと確認の連絡が届きます。ところが学生研究員のスマホを見せてもらうと、Xのアプリはほぼ全員のホーム画面に残っています。
離れたのか、それとも使い方が変わっただけなのか。数字と当事者の声の両面から確かめます。
X離れは数字に表れているのか
総務省が公表した令和6年度の情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査によると、Xの利用率は20代で78.0%と全年代で最も高く、10代でも62.1%にのぼります。前年度調査の20代は81.6%だったので、たしかに微減ではあるものの、8割近い水準はいまも保たれています。
利用率だけを見れば、若者がXを捨てたとは言えません。むしろ20代は今なおXの中心的な利用者層です。
それでもX離れという言葉が繰り返し語られるのは、利用率では捉えきれない変化が起きているからです。アカウントは持っている。アプリも毎日開く。でも自分からは投稿しない。この状態を離脱と呼ぶかどうかが、言説のズレの正体です。
買収や仕様変更が報じられるたびに検索が跳ねる時事的な言葉だからこそ、数字と実態を分けて見る必要があります。
消えたのは利用ではなく日常投稿
研究員へのヒアリングで一致するのは、Xに日常を書かなくなったという声です。今日あった出来事、ランチの写真、他愛のないぼやき。かつてTwitterの中心にあった雑多な自己開示は、鍵アカウントやInstagramのストーリーズ、ごく親しい友人だけの空間へ移りました。
不特定多数に見られる場所へ生活を置くことへの警戒感は年々強まっています。いまの10代は、炎上やスクショ拡散のリスクを物心ついた頃から間近に見て育った世代だからです。
投稿する場合も、名前と顔がつながる本アカウントではなく、趣味用のサブアカウントに限る研究員が目立ちます。就職活動やアルバイト先との関係まで想像したうえで、公開の場での発言には慎重になるのです。
研究員と話していると、Xは広場、ストーリーズは自室という感覚が伝わってきます。広場では発言せず、必要な情報だけ拾って静かに帰る。それが彼らの標準的な振る舞いです。
それでもXに残る役割|実況・推し活・検索
では何のためにXを開くのか。研究員たちの使い方を整理すると、大きく3つに絞られます。
| 役割 | 具体的な使い方 | 他のSNSで代替しにくい理由 |
|---|---|---|
| リアルタイム実況 | テレビ番組やスポーツ、ライブを見ながら感想の流れを追う | 同じ瞬間に集まる投稿の量と速度で他が追いつかない |
| 推し活 | アイドルやアニメの公式発表とファン同士の速報を追う | 公式アカウントと一次情報がXに集中している |
| 検索 | 電車遅延や通信障害、世間の反応をその場で調べる | 生の声が集まる即時性の高いデータベースとして機能する |
3つに共通するのは、発信ではなく受信の道具になっている点です。投稿は減ってもアクセスは減らない。X離れに見えて、実際に進んだのは見る専への移行です。
日常の居場所はどこへ移ったか
Xから消えた日常投稿の行き先は、24時間で消えるストーリーズと、少人数のグループチャットです。残らない。広がらない。親しい人にしか見えない。この3つの条件がそろう場所に、若者の自己開示は集まっています。
その背景にあるストーリーズ文化の心理を踏まえると、要点はひとつに絞られます。Z世代は発信をやめたのではなく、発信の宛先を選ぶようになった。アプリごとに見せる顔を切り替える使い分けは、Z世代のSNS利用の全体を貫く行動原理でもあります。
企業やメディアはこの変化とどう向き合うか
若者はもうXにいない。その前提でXを切り捨てるのは早計です。彼らは今もそこにいて、ただ黙って見ています。一方で、Xに若者の投稿が少ないからといって、関心まで消えたわけでもありません。
押さえておきたい点は2つあります。まず、Xで観測できる若者の声は実況と推し活に偏ったサンプルだということ。そして、日常の本音はストーリーズやクローズドな場にあり、外からは観測できないということ。見えない部分を知るには、当事者に直接聞くほかありません。タイムラインの表面だけで若者のSNS行動を判断すると、実態を大きく見誤ります。
若者研究所では、現役の学生研究員へのヒアリングや定点調査を通じて、SNSの表側からは見えない若者の本音を企業やメディアに届けています。若者リサーチのご依頼やお問い合わせはお気軽にどうぞ。
よくある質問
Z世代は本当にXを使わなくなったのですか?
総務省の令和6年度調査ではXの利用率は20代で78.0%、10代で62.1%と依然高い水準です。ただし日常の出来事を投稿する使い方は減り、実況や推し活、検索といった受信中心の道具に変わっています。
Z世代がXに投稿しなくなったのはなぜですか?
不特定多数に見られる場所に日常を置くことへの警戒感が強いためです。炎上やスクリーンショットによる拡散のリスクを避け、日常の発信は24時間で消えるストーリーズや親しい友人だけの空間に移しています。
若者向けのマーケティングでXは今も有効ですか?
有効です。若者の多くは投稿しなくても閲覧を続けており、テレビ番組の実況や推し活、検索の場として日常的に使われています。ただしXで見える若者の声は実況と推し活に偏るため、他の調査手法との併用が欠かせません。


