Z世代マーケティングの成功事例|若者に選ばれたブランドの共通点

Z世代向けのマーケティング事例を探すと、TikTok活用やキャラクターコラボといった手法の話が並びます。ただ、実際にヒットした事例を買った側の目線で並べ直してみると、共通しているのは手法そのものではなく、若者との距離の取り方だと分かります。
地球グミ、ちいかわ、無印良品にGU。ジャンルがばらばらの成功例から、若者に選ばれるブランドの共通点を取り出していきます。

地球グミのTikTok売れ|広告なしで品切れが続いた

2021年、地球の形をしたグミ菓子、通称地球グミが全国の店頭から消えました。パキッと割って中身を吸い、青く染まった舌を見せる。この一連の動きを撮ったASMR動画が海外で流行し、日本のTikTokでも真似する投稿が連鎖したのがきっかけです。日経クロストレンドによれば関連動画の再生回数は5億回を超え、日経トレンディの2021年ヒット商品ベスト30では、この現象を含むTikTok売れが1位に選ばれました。

注目したいのは、メーカーが大きな広告を打って売れたわけではない点です。買った側にとって地球グミは、単なる輸入菓子ではなく、流行に参加するための小道具でした。
動画を見て、探して買って、自分も撮って投稿する。この一連の流れそのものが遊びになっていました。企業発の宣伝ではなく同世代の投稿だったからこそ、ここまで広がったといえます。

ちいかわコラボ|物語への愛着がそのまま消費になる

コンビニ、アパレル、飲食チェーンと、ちいかわのコラボは今も途切れません。マクドナルドのハッピーセットとのコラボでは、購入券の導入や個数制限、フリマアプリへの出品禁止の呼びかけといった対策が取られるほど需要が過熱しました。

人気の土台にあるのは、キャラクターのかわいさだけではありません。ちいかわの物語には、労働の報酬や資格試験、理不尽な出来事といった現実の苦さが混ざっています。かわいい見た目に癒やされながら、自分たちの生活と地続きの世界として共感されている。
コラボ商品を買うことは、グッズの購入であると同時に、好きな物語への愛着を形にする行為になっています。

無印良品とGU|世界観の一貫性が信頼になる

SNS発の爆発力とは対照的に、無印良品は静かな支持を集め続けています。装飾を削ぎ落とし、暮らしの道具に徹するという思想を数十年単位で変えていない。店に行けばいつも同じ世界観が待っている、この裏切らなさが安心感につながっています。

GUの強さは、トレンドを手頃な価格で試せることにあります。挑戦して似合わなくても痛手が小さい。買い物の失敗を避けたい気持ちが強い世代にとって、この試しやすさは大きな価値です。Z世代の消費行動に見られる失敗回避の傾向と地続きの現象といえます。

研究員と話していると、好きなブランドの理由を機能やスペックで説明する人はほとんどいません。出てくるのは、世界観が好き、裏切られたことがない、という言葉です。選ばれているのは商品単体ではなく、ブランドの人格なのだと感じます。

若者に選ばれたブランドの共通点|4つの要素

ここまでの事例を並べると、ジャンルは違っても刺さり方には型があることが見えてきます。

共通点 事例での表れ方
広告っぽくない 地球グミは企業発信ではなく同世代の投稿の連鎖で広がった
共感できる物語 ちいかわは現実の苦さを含む物語ごと愛されている
参加の余地 真似して投稿する、探して手に入れるという行動の入り口がある
世界観の一貫性 無印良品は思想を変えないことそのものが信頼になっている

4つに共通する軸は、ブランドが主役の座を降りていることです。若者を説得する相手ではなく、遊びや物語をともにつくる仲間として扱っている。Z世代マーケティングの全体を設計するうえでも、この視点が出発点になります。

事例をそのまま真似ると失敗する|自社への置き換え方

気をつけたいのは、バズは結果であって設計図ではないという点です。地球グミが売れたからとTikTokに広告を流しても、ちいかわが人気だからとキャラクターを起用しても、同じ結果にはなりません。

研究所でよく話題になるのは、若者は広告が嫌いなのではなく、広告ではないふりをした広告が嫌いだ、という感覚です。企業が仕掛けたと分かっていても、面白ければちゃんと乗ってくれます。

自社に置き換えるときは、手法ではなく問いから始めることをおすすめします。自分たちの商品に、思わず人に見せたくなる瞬間はあるか。共感してもらえる物語を持っているか。ユーザーが参加できる余白を残せているか。
この問いに答えるには、若者がいま実際に何を面白がっているかを知る必要があります。戦略の組み立て方はZ世代マーケティングの基礎で詳しく整理しています。

若者研究所では、現役の学生研究員によるグループインタビューや定点調査で、Z世代向けの商品開発とプロモーションを支援しています。事例の裏側にある若者の生の声を知りたい方は、若者リサーチのご依頼お問い合わせからお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代マーケティングで最も重視すべきことは何ですか?

広告らしさを抑え、共感できる物語と参加の余地を用意することです。Z世代は企業からの一方的な発信よりも同世代の投稿を信頼する傾向が強く、自分も関わりたくなる仕掛けがあるかどうかで広がり方が大きく変わります。

TikTok売れとはどのような現象ですか?

TikTok上のユーザー投稿をきっかけに商品が爆発的に売れる現象です。日経トレンディの2021年ヒット商品ベスト30で1位に選ばれ、地球グミなどの菓子から化粧品まで幅広いジャンルで起きたことが知られています。

Z世代向けの施策で企業がやりがちな失敗は何ですか?

流行した手法の表面だけを真似ることです。バズは結果であって設計図ではないため、自社の物語や世界観と切り離した施策は広告らしさが先に立ち、かえって若者から距離を置かれる原因になります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。