SNS疲れはなぜ起きるのか。Z世代の距離の取り方と対処の実態

夜、寝る前にインスタを開いて、気づけば40分。楽しんでいたはずなのに、スマホを置いた瞬間にどっと重たい気分になる。研究所の学生研究員と話していると、この感覚を口にする人が本当に多いのです。
SNS疲れという言葉はもう目新しくありませんが、疲れの中身を分解してみると、単なる使いすぎでは説明できない構造が見えてきます。

SNS疲れの正体|使いすぎではなく気の使いすぎ

SNS疲れと聞くと、長時間の利用による目や脳の疲労を想像しがちです。けれど研究員の話を聞いていくと、疲れの中心にあるのは時間ではなく気疲れです。
誰かの投稿に反応すべきか、自分の投稿がどう見られるか、返信をいつ返すか。画面を見ている間じゅう、小さな判断と気配りが途切れなく続いています。

この気疲れは、大きく3つに分けて考えると輪郭がはっきりします。

  • 他人と自分を比べてしまう比較疲れ
  • 返信の速さと温度に縛られる既読疲れ
  • 見られている自分を演じ続けるキャラ維持疲れ

比較疲れ|他人のハイライトと自分の日常を並べてしまう

SNSに流れてくるのは、友人の旅行、内定報告、恋人との記念日。つまり他人の人生のハイライトシーンです。
一方で、それを見ている自分はベッドの上の日常にいる。編集済みの他人と、無編集の自分。この非対称な比較が延々と続くのが、フィードを眺めるという行為の正体です。

頭では加工も演出もあると分かっている。それでも指は止まらず、見終わったあとに自分だけ置いていかれたような感覚が残る。ある研究員はこの状態を次のように表現していました。

楽しくて見てるんじゃなくて、見逃すのが怖くて見てる。で、見たら見たで落ち込む。何やってるんだろうって思います。

既読疲れ|返信の速さが誠意の指標になった

LINEの既読は、本来ただ読んだことを知らせる仕組みです。ところが実際には、読んだのに返さない人という烙印を避けるための監視装置として働いてしまっています。
既読をつけたら早めに返すべき。すぐ返せないなら通知だけ見て開かない。こうした暗黙のマナーが積み重なり、メッセージひとつ開くにも体力が要るようになりました。

グループLINEになるとさらに複雑です。全員が既読なのに誰も返さない沈黙。スタンプだけで流れていく会話。抜けたいけれど抜けたら角が立つ。この宙づり状態が、通知が鳴るたびに小さなストレスとして積もっていきます。

キャラ維持疲れ|アカウントの数だけ自分がいる

Z世代の多くは、本アカのほかに趣味アカや親しい友人だけの鍵アカなど、複数のアカウントの使い分けをしています。便利な仕組みである一方、それぞれの場所で期待されるキャラを演じ分ける負荷も生まれました。
本アカでは明るくポジティブに。趣味アカでは詳しい人として。鍵アカでは面白い愚痴役として。どの顔も嘘ではないのに、全部を維持しようとすると消耗します。
投稿する前に、これはこのアカの自分らしいかと自己検閲する癖がつくと、発信そのものが億劫になっていきます。

Z世代の距離の取り方|辞めるのではなく減らす

興味深いのは、これだけ疲れていてもアプリを消す人は少数派だという点です。研究員たちの対処行動を観察すると、退会という選択ではなく、関係を切らずに刺激だけを下げる工夫が主流になっています。

対処法 やり方 効いている疲れ
ミュート フォローは外さず投稿だけ非表示にする 比較疲れ
時間制限 スクリーンタイムでアプリの利用上限を決める だらだら見の防止
見る専 投稿もいいねもせず眺めるだけに徹する キャラ維持疲れ
裏アカ避難 ごく少人数の場所に本音の発信を移す 既読疲れとキャラ維持疲れ

なかでもミュートは象徴的です。ブロックやフォロー解除は相手に伝わるリスクがありますが、ミュートなら関係を保ったまま情報だけ遮断できる。人間関係のコストを増やさずに心を守る、実に合理的な選択です。
本音の置き場所を移す動きについては、裏アカ文化の記事で詳しく掘り下げています。

それでも手放さない理由|疲れる場所は居場所でもある

ここまで読むと、そんなに疲れるならやめればいいのにと思うかもしれません。けれどZ世代にとってSNSは、娯楽である以前に友人関係と情報のインフラです。検索も、流行の把握も、友人との連絡も、すべてがこの上に載っている。
だからこそゼロにするのではなく、音量を調整する。Z世代のSNSの使い方を見ても、プラットフォームごとに距離感を変えながら付き合い続ける姿が浮かびます。

疲れたからやめる、ではなく、疲れない使い方に自分で作り替えていく。この調整力こそ、SNSネイティブ世代の成熟だと研究所では捉えています。

企業やメディアがZ世代に向き合うときも、この温度感は無視できません。熱量の高い発信が、疲れている相手には騒音になることもある。ミュートされない距離感の設計が、これからのコミュニケーションの鍵になります。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点観察を通じて、SNSとの付き合い方の変化を追い続けています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

SNS疲れとはどのような状態ですか?

長時間の利用による疲労だけではなく、他人との比較や返信への気遣い、見られ方の管理など、SNS上の人間関係に気を使い続けることで生まれる精神的な消耗を指します。

Z世代はSNS疲れにどう対処していますか?

アプリをやめるのではなく、特定の相手をミュートする、スクリーンタイムで利用時間を制限する、投稿せずに見る専に徹する、本音の発信は少人数の裏アカに移すなど、関係を保ったまま刺激を減らす工夫が中心です。

SNS疲れを感じてもやめられないのはなぜですか?

Z世代にとってSNSは娯楽であると同時に、友人との連絡や情報収集を担う生活のインフラだからです。完全に断つと人間関係や情報から切り離されてしまうため、使い方を調整しながら付き合い続けるほうが選ばれやすくなります。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。