whooとは?位置情報を常時共有し続けるZ世代のつながりの正体

放課後の駅前で、たったいま改札を出たと友達に連絡を打つ。そんな手順が、高校生の待ち合わせからほとんど消えました。スマホの地図を開けば、友達のアイコンが駅からこちらへ動いてくるのが見えるからです。位置情報共有アプリwhooの画面の中で、若者たちは今日も互いの居場所を眺めながら暮らしています。

whooとは|Zenlyの空白を埋めた日本発の位置情報共有アプリ

whooは、地図の上で友達と現在地を共有し続けるアプリです。開発したのは日本のスタートアップ、株式会社LinQ。世界の若者をつかんだフランス発の位置情報アプリZenlyが終了へ向かう2022年12月にリリースされ、行き場を探すユーザーの受け皿として一気に広がりました。

画面の中心には友達のアイコンが浮かぶ地図があり、機能はZenlyの体験を丁寧になぞっています。

  • 友達の現在地と移動の様子がリアルタイムで地図に映る
  • 同じ場所にどれくらい滞在しているかが分かる
  • 相手のスマホのバッテリー残量まで見える
  • ゴーストモードで位置をあいまいにしたり固定したりできる
  • チャットや足あとなどSNS的な機能もそろう

バッテリー残量の共有は一見不思議な機能ですが、返信が来ない理由が電池切れだと分かる、Zenly時代から愛されてきた発明です。

Zenlyの終了と後継争い|位置情報共有アプリの変遷

前提になるのがZenlyの喪失です。日本の中高生の生活インフラになっていたZenlyは、親会社である米国Snapの経営再建に巻き込まれ、2023年2月にサービスを終えました。その後の後継争いの経過は、そのまま位置情報SNSの歴史になっています。

アプリ 提供元 歩み
Zenly フランス発・Snap傘下 日本の若者に深く浸透したが2023年2月にサービス終了
NauNau 日本のSuishow 後継候補として急成長したのち、位置情報などが外部から閲覧できた問題で2023年10月にサービス停止
whoo 日本のLinQ 後継争いを制して定着。ヴァリューズの調査では月間ユーザー数が他の位置情報アプリの2倍以上
Life360 米国発 家族の見守り用途が中心で、友達同士の常時共有とは文脈が異なる

流れを決定づけたのはNauNauの脱落でした。運営会社が公表した調査結果では、300万人以上のユーザーの現在地などが外部から閲覧できる状態だったとされ、居場所という究極の個人情報を預かる信頼が崩れました。
一方のwhooは伸び続けています。データ分析企業ヴァリューズの調査によれば、ユーザー数は2024年5月からの2年でおよそ2倍になり、利用者の約1割を40代が占めるまでになりました。子どもの見守りに使う親世代へ裾野が広がった格好です。

監視ではなく同じ部屋|常時共有を受け入れる心理

居場所を四六時中見られて平気なのか。大人がまず抱くこの疑問こそ、whooを理解する入り口です。研究所の学生研究員に尋ねると、返ってくる答えは拍子抜けするほど穏やかで、見られている感覚はほとんどないと言います。
彼らにとって地図上のアイコンは、教室の後ろの席に友達がいる気配に近いものです。話しかけなくても、そこにいると分かる。バイト先にいるから既読が付かないと察しが付く。塾に残る友達を見て、自分も参考書を開く。言葉を交わさないまま、存在だけが行き来しています。

位置情報の常時共有は、既読も返信も文章も要らない、いちばん身軽なコミュニケーション。地図の上で隣り合うことが、若者にとってオンライン上の同じ部屋になっている。研究所ではそう捉えています。

この感覚は、無加工の日常を送り合うBeRealや、24時間で消えるストーリーズの使われ方と地続きです。作品として投稿を仕上げるのではなく、生活の気配をそのまま流し合う。Z世代のSNS利用の重心は、発信から気配の共有へと動いています。

無防備ではない|ゴーストモードという距離の調整

ただし、誰にでも居場所をさらしているわけではありません。whooでつながるのは、LINEを知っているより一段深い間柄だけ。数人から十数人の本当に仲のいい友達に絞るのが標準的な使い方です。
そのうえで、ゴーストモードが距離の微調整に使われます。位置をあいまいに見せる、特定の相手にだけ固定する、テスト期間や受験期はまとめて止める。見られるかどうかではなく、誰にどこまで見せるかを自分で設計しているわけです。

whooの友達リストは、実質的にいまの親友リスト。居場所を渡すという行為が、Z世代の親密さを測るいちばん正直な通貨になっています。

広く浅いフォロー関係に義理のいいねを配り続ける消耗がSNS疲れと呼ばれるいま、whooの中には盛る必要も演出もない、選び抜かれた内輪だけがあります。常時共有はつながりの拡大ではなく、むしろ厳選の結果なのです。

企業は何を読み取るべきか|気配でつながる世代

whooの定着が示すのは、若者のつながりの基準が、何を発信するかから、どれだけ気配を共有し合えるかへ移ったという変化です。フォロワー数のような広く浅い関係より、居場所まで見せ合える狭く深い関係に、時間と信頼が注がれています。
企業にとって、これは発信量の勝負が効きにくくなる話でもあります。放課後にどこへ寄るか、休日に誰とどこで過ごすか。その意思決定は仲間の地図をのぞき合う内輪の中で連鎖しており、外から広告で割り込む余地は狭まっています。問われるのは、選び抜かれた内輪の会話に上がるだけの実体があるかどうかです。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、位置情報アプリのような新しいつながりの実態を企業のマーケティングと商品開発につなげています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

whooとはどんなアプリですか?

地図上で友達と現在地をリアルタイムに共有するアプリです。日本の株式会社LinQが開発し、Zenlyの終了後にZ世代を中心に広がりました。滞在時間やバッテリー残量の共有、位置をあいまいにできるゴーストモードなどの機能があります。

Zenlyはなぜ終了したのですか?

Zenlyを買収していた米国のSnapが経営再建のためにサービスの整理を進め、2023年2月に提供を終了しました。日本の若者に広く使われていたため、whooやNauNauなどの後継アプリへユーザーが一斉に移りました。

位置情報を常に共有するのは危険ではありませんか?

共有相手を仲のいい友達だけに絞り、ゴーストモードで見せ方を調整すれば、リスクは抑えられます。一方で過去にはNauNauで利用者の位置情報が外部から閲覧できた問題も起きており、共有範囲の設定と信頼できるサービス選びが欠かせません。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。