Z世代の消費行動の特徴|推し活・タイパ・応援消費を読み解く

Z世代はお金を使わない世代だと言われがちです。しかし研究員たちの買い物の話を聞いていると、その見方は半分しか当たっていません。削るところは徹底的に削り、注ぐところには惜しみなく注ぐ。この極端なメリハリこそ、Z世代の消費行動を読み解く最大の鍵です。

Z世代の消費行動の全体像|削る消費と注ぐ消費

Z世代の消費は、平均値で見ると実態を見誤ります。日々の食費や衣服代はプチプラと古着で徹底的に抑える一方、推しのライブ遠征には数万円を迷わず払う。同じ人の中に節約家と浪費家が同居しているのです。
まず押さえたいのは、何を削り、何に注いでいるかという配分です。

削る消費 注ぐ消費
日常の衣服や身の回り品 推し活のグッズ・ライブ・遠征
車や時計など所有型のステータス 友人と行く旅行・カフェ・フェス
惰性の飲み会や付き合いの出費 好きだと確信できるジャンル全般
コンビニでのなんとなくの買い物 スキルアップなどの自己投資

この配分の背景には、そもそもどんな環境で育った世代なのかという前提があります。Z世代の特徴と合わせて眺めると、消費の輪郭がぐっと立体的になります。

タイパ意識の正体|倍速視聴とネタバレ消費

映画を倍速で観る、ドラマは切り抜きで済ませる、結末をネタバレサイトで確認してから本編を観る。こうした視聴行動に、コンテンツ好きの大人ほど眉をひそめます。稲田豊史氏の『映画を早送りで観る人たち』が話題になったのも、この違和感の裏返しでしょう。
ただ、研究員と話しているとタイパの本質は時間の節約ではないと感じます。彼らが恐れているのは、時間をかけたのに面白くなかったという失敗です。つまりタイパ意識の正体は、時間対効果の最大化というより失敗の回避に近い。ネタバレは答え合わせではなく、安心して観るための保険なのです。
この心理は動画に限りません。飲食店選びも旅行も、外れを引かないことが満足の前提条件になっています。

推し活と応援消費|消費がアイデンティティになる構造

アイドル、アニメ、VTuber、スポーツ選手、コスメブランド。推す対象は人それぞれですが、推しがいること自体はもはや若者の標準装備です。グッズを買い、ライブに遠征し、誕生日にはカフェを予約して祭壇を作る。
注目したいのは、これが単なる娯楽支出ではない点です。何を推しているかは、その人が何者であるかの表明になっています。推しのグッズを持ち歩くことはプロフィールの一部であり、同じ推しを持つ人とつながるための名刺でもあるのです。

Z世代にとって推し活は消費ではなく、自分という人間の輪郭を描く行為です。だから値段の高い安いでは動かず、応援の実感があるかどうかで財布が開きます。

応援消費という言葉が示すとおり、お金を払うこと自体が推しへの貢献であり、参加の証明になります。CDを複数枚買う、クラウドファンディングに参加する、公式が潤うように正規ルートで買う。売上に貢献できたという実感が、満足の中心にあります。

お金の話は、若者研の座談会でいちばん盛り上がるテーマのひとつです。

ある研究員は「服はGUとメルカリで抑えて、推しのライブには遠征込みで数万円かける」と話していました。節約の話と大胆な出費の話が、同じ人の口から数分の間に出てくるのです。

財布はひとつなのに、判断基準はふたつある。「自分の物語に関係あるか」という軸を知らないと、Z世代の消費は矛盾だらけに見えてしまいます。

モノ消費よりコト消費・イミ消費へ

所有そのものへの憧れは薄く、体験と意味に価値の重心が移っています。ブランドバッグより友人との韓国旅行、家具より音楽フェス。写真や動画として残り、SNSで共有できる体験は、思い出であると同時に自分の物語の素材になります。
食の分野はこの傾向が最もわかりやすい領域です。トッピングを自分で選ぶ麻辣湯のカスタム性や、ありのままの食卓を肯定するガールディナーのように、何を食べたかより、どう食べてどう共有したかが消費の中身になっています。
さらに、その買い物に社会的な意味があるかを問うイミ消費も広がりました。地元の店を応援する、被災地の商品を選ぶ、フードロス削減につながる選択をする。買うことが小さな意思表示になる感覚です。

買う前の情報行動|SNS検索と口コミの読み方

Z世代の買い物は検索から始まりますが、その検索窓はGoogleとは限りません。コスメならInstagramとTikTok、飲食店なら地図アプリと動画、ガジェットならYouTubeのレビュー。ハッシュタグで生活者の実例を集める、いわゆるタグ検索が起点になります。
特徴的なのは、企業発の情報をほとんど信用の担保にしていないことです。公式サイトは仕様確認のために見るもので、買う決め手は一般の人の口コミと使用感。しかも良い口コミだけでなく、低評価レビューを先に読むという行動もよく聞きます。悪い点を先に把握しておけば、買った後のがっかりを防げるからです。
そして最後の決め手になるのは、身近な友人の一言です。SNSの口コミで候補を絞り、友人の実体験で背中を押される。この二段構えが、Z世代の標準的な買い物の流れになっています。

失敗したくない心理と返品文化

限られた予算でやりくりしている以上、一度の買い物の失敗が重くのしかかります。だからZ世代は買う前に徹底的に調べ、それでも確信が持てなければ買いません。
一方で、ECの返品無料サービスやサイズ交換の仕組みは、この心理のセーフティネットとして機能しています。複数サイズを取り寄せて合わない方を返す、実際に試してから残すかを決める。店頭の試着室がオンラインに拡張された感覚です。
レンタルやサブスクリプションで所有する前に試す、少量サイズやトライアルセットから入るといった段階的な買い方も、同じ文脈にあります。いきなり本命を買わせるより、試せる入口を用意する方が結果的に早いのです。
企業側から見れば返品率の上昇はコストですが、返品しやすさが購入の意思決定を後押ししているのも事実です。失敗させない設計そのものが、Z世代向けの販売戦略になっています。

メルカリ前提の購買|二次流通が変えた買い方

Z世代の買い物には、買う前から売るときのことを考えるという特徴があります。フリマアプリで相場を調べ、リセールバリューが高いものなら定価でも買う。飽きたら売ればいいと考えれば、実質の負担は差額だけです。
この感覚は新品へのこだわりも薄めました。限定品や廃盤コスメを二次流通で探すのは当たり前で、新品と中古の心理的な境界は親世代よりずっと低くなっています。
近年はここに、ハイブランドの類似品を安価に楽しむデュープ消費も加わりました。本物への憧れを保ちながら、賢くそれらしさを手に入れる。見栄より納得を優先する、Z世代らしい消費の形です。

Z世代の金銭感覚|堅実さと推しへの投資の二面性

ポイ活を駆使し、家計簿アプリで支出を管理し、少額から投資を始める。金銭管理の面では、Z世代は歴代の若者の中でもかなり堅実な部類に入ります。景気の良い時代を知らず、終身雇用も年金も当てにできないと感じている世代ですから、守りが固くなるのは自然な流れでしょう。
ただしその堅実さは、推しへの支出と矛盾しません。研究員の話を聞いていると、彼らの中には財布が複数あるように見えます。生活の財布は1円単位でシビアに、推しの財布は青天井に近い。
この二面性を理解せず、節約志向だから安くすればよいと判断すると読み違えます。価格を下げても、推せない商品の財布は開かないのです。

サステナ意識のホンネとタテマエ

Z世代はサステナビリティへの感度が高い。マーケティングの現場でよく聞くフレーズですが、研究所ではこの通説を少し疑って見ています。
環境や人権への関心が高いのは確かです。学校教育でSDGsを学び、社会課題を自分ごととして語れる若者は着実に増えました。ところが研究員の本音を聞いていくと、サステナブルだから買うという行動は限定的です。優先されるのは価格、デザイン、推せるかどうか。エシカルであることは同点のときの決め手にはなっても、単独で財布を開かせる力はまだ弱いのです。

サステナ対応は、あれば加点、なければ減点という非対称な評価軸です。買う理由にはなりにくいのに、買わない理由には簡単になる。この非対称性を見誤ると、エシカル訴求は空振りします。

むしろ効いているのは、古着や二次流通のように、節約と楽しさを追いかけた結果としてサステナブルになっている消費です。正しさを説くより、賢くて楽しい選択肢の先に社会性を置く方が、Z世代の実態には合っています。

商品開発担当がZ世代の財布に入るには

ここまでの特徴を裏返すと、Z世代に選ばれる条件が見えてきます。

  • 失敗リスクを徹底的に下げる。お試しや返品のしやすさ、低評価レビューも隠さない誠実さ
  • SNSで語りたくなる要素を仕込む。カスタム性、写真映え、共有したくなる物語
  • リセールバリューまで含めて価値を設計する。長く使える、売れる、循環する
  • 応援できる理由を用意する。作り手の顔、ブランドの姿勢、買うことが貢献になる実感

重要なのは、これらを個別の施策として打つのではなく、商品そのものに織り込むことです。広告で推してもらうことはできません。推される商品には、推すに値する中身と物語があります。全体の打ち手への落とし込みは、Z世代マーケティングの視点から整理すると考えやすくなります。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、Z世代の消費のリアルを企業の商品開発とマーケティングにつなげています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代の消費行動の最大の特徴は何ですか?

削る消費と注ぐ消費のメリハリです。日常の出費はプチプラや二次流通で徹底的に抑える一方、推し活や友人との体験など自分にとって意味のある領域には惜しまずお金を使います。平均値ではなく配分で見ることが理解の近道です。

タイパ意識とは何ですか?

時間対効果を重視する感覚のことです。倍速視聴やネタバレの事前確認が代表例ですが、本質は時間の節約よりも、時間をかけたのに面白くなかったという失敗を避けたい心理にあります。

応援消費とはどのような消費ですか?

お金を払うこと自体が好きな対象への貢献になる消費です。推しのCDを正規ルートで買う、クラウドファンディングに参加するなど、売上に貢献できたという実感が満足の中心になります。

Z世代はサステナブルな商品を選びますか?

関心は高いものの、サステナビリティだけを理由に買う行動は限定的です。実際には価格やデザインが優先され、サステナ対応はあれば加点、なければ減点という評価軸になりやすい点に注意が必要です。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。