Z世代のインフルエンサー観。誰を信じ、PR投稿をどう見ているか

フォロワー数十万人の有名インフルエンサーを起用したのに、Z世代がまったく動かなかった。そんな相談が研究所にもよく届きます。
若者たちと話していると、彼らが信じる相手の条件は驚くほど一貫しています。有名かどうかではなく、自分に近いかどうか。この感覚を押さえないままインフルエンサー施策を組むと、認知は取れても購買にはつながりません。

大物より「自分に近い人」を信じるという構造

テレビCMに出るようなタレントや登録者数百万人クラスの発信者は、Z世代にとって遠い世界の住人です。憧れの対象にはなっても、あの人が使うなら自分もとはなりにくい。
むしろ信頼されるのは、生活圏が重なるマイクロインフルエンサーや、同じ学校や同じ趣味の同世代です。予算感も部屋の広さも自分と地続きの人が良かったと言うから、参考になる。Z世代のSNSの使い方を見ても、彼らのタイムラインは有名人ではなく半径5メートルの他人で埋まっています。

発信者 Z世代の受け止め方
有名タレント・大物インフルエンサー 認知は広がるが遠い存在。購入の決め手にはなりにくい
マイクロインフルエンサー 生活が地続きで参考になる。ジャンル特化なら専門家として扱われる
友人・知人 最も信頼される。ストーリーズの一言が購買を動かす

友人のストーリーズ最強説

研究所で購買のきっかけを聞いていくと、最後に必ず出てくるのが友人のストーリーズです。24時間で消える気軽さゆえに、宣伝の意図がない本音として受け取られます。
企業が大きな予算をかけた広告より、友人が寝る前に上げた一枚のほうが強い。理不尽なようですが、これがZ世代の購買の現実です。しかもストーリーズは検索にもレコメンドにも残らないため、企業からは見えません。効いているのに計測できない、いわばダークソーシャルの中心にあるのがこの友人推薦です。

研究員たちの話を突き詰めると、信頼の源泉は、その人が自分に売る動機を持っていないことに行き着きます。友人のストーリーズが最強なのは、そこに営業成績も紹介報酬も存在しないからです。

#PRを見た瞬間の温度|正直な案件は許容される

では、PR投稿は嫌われているのでしょうか。実は単純な拒絶ではありません。#PRのタグを見た瞬間、たしかに温度は一段下がります。ただそれは切り捨てではなく、読み方が仕事モードに切り替わるだけです。
そこから先は中身で判断されます。惜しい点まで正直に書いてあるPRや、案件期間が終わった後も使い続けている様子が見えるPRは、むしろ好感を持たれます。一番嫌われるのは、普段の投稿と温度の違う不自然な絶賛です。ふだん辛口の人が急に手放しで褒め始めたら、フォロワーは一瞬で気づきます。

「案件」という言葉が日常語になった世代

これ案件でしょ。Z世代の日常会話には、この言葉が当たり前に登場します。広告業界の内輪用語だったものが、受け手側の共通語になった。これは彼らの広告リテラシーの高さをそのまま示しています。
重要なのは、案件だと見抜かれること自体はマイナスではない点です。マイナスなのは隠すこと。案件であることを公言した上で、それでも見たくなる投稿に仕上げる発信者が支持を集めています。案件すら芸にできるかどうかが、発信者の実力として値踏みされているのです。

ステマ規制後に変わったのは企業側の設計思想

2023年10月に景品表示法のステマ規制が始まり、広告であることを隠した投稿は法律違反になりました。ただ若者たちの感覚からすると、規制は彼らのリテラシーを後追いしたにすぎません。隠された広告は規制前からダサいものとして見抜かれ、発信者ごと信頼を失っていました。
変わるべきは企業側の設計です。バレないように仕込む発想を捨て、広告だと明かした上で信頼される中身をどう作るかに知恵を使う。この転換ができた企業から順に、Z世代との関係を築けています。

起用の成否を分けるのは選び方より任せ方

ここまでの信頼構造を踏まえると、企業がやるべきことは明確です。

  • フォロワー数より、コメント欄の会話の質を見る
  • 商品ジャンルと発信者の日常が重なっているかを確認する
  • PR表記を前提に、惜しい点も語れる余白を渡す
  • 投稿単体で終わらせず、友人間のストーリーズ拡散まで設計する

誰をどう選ぶかの実務はインフルエンサー起用の考え方で詳しく整理しています。土台としてSNS利用実態の理解も欠かせません。

若者研究所では、現役の学生研究員へのインタビューや定点調査を通じて、Z世代のリアルな信頼構造を企業のマーケティングと商品開発に接続しています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代はフォロワー数の多いインフルエンサーを信頼していますか?

認知のきっかけにはなりますが、購買の決め手にはなりにくい傾向があります。生活圏の近いマイクロインフルエンサーや友人の推薦のほうが、自分ごととして受け止められやすいためです。

Z世代はPR投稿を嫌っていますか?

PR表記を見ると受け止め方は一段冷静になりますが、拒絶されるわけではありません。惜しい点まで正直に書かれたPRや、案件の後も使い続けている様子が伝わる投稿は、むしろ好意的に受け止められます。

ステマ規制はZ世代向けマーケティングにどう影響しましたか?

2023年10月の景品表示法の規制で、広告であることを隠す投稿は法律違反になりました。もともと隠れた広告を見抜いて嫌う感覚が強い世代のため、広告と明示した上で信頼される内容を設計することが前提になっています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。