2月のローソンで、からあげクンの箱がいつもより明らかに膨らんで棚に並びます。盛りすぎチャレンジの週は、研究所の学生研究員のタイムラインにも戦利品の写真が次々と流れてきます。ところが、フォローとリポストで豪華賞品が当たる抽選キャンペーンの話は、彼らの口からほとんど出てきません。この差がどこで生まれるのかを、実在の事例から考えます。
抽選キャンペーンが動かない理由|応募は遊びではなく作業
フォローして、リポストして、当選を待つ。この形式を、学生研究員の多くは見た瞬間に広告として処理します。応募する場合も、使うのは懸賞用のサブアカウントです。本垢のフォロワーに応募リポストを見せるのは、教室で懸賞ハガキを書く姿を見られるような気恥ずかしさがあるといいます。
つまり抽選型は、参加しても参加が可視化されない設計です。数字の上では拡散されても熱は乗らず、当選者以外の手元には何も残りません。Z世代マーケティングの文脈で語られる広告回避と、根は同じところにあります。
Z世代にとってキャンペーンの報酬は景品ではなく、投稿が一本書けることです。当選の確率ではなく、話のネタになる確率で参加が決まります。
盛りすぎチャレンジ|買うだけで投稿が一本できる
2023年2月に始まったローソンの盛りすぎチャレンジは、対象商品を価格そのままで約47%増量する企画です。応募条件も投稿の義務もありません。それでも開催のたびにSNSは写真であふれます。断面を定規で測る、通常品と並べる、本当に47%増えているか検証する。買った人が遊び方を発明できる余白が残されているからです。
ローソンの発表では、実施期間中の1店舗あたり平均来店客数は前年比で5%増え、2025年2月には過去最大の計31品まで拡大しました。研究所にも、発売週の朝にローソンをはしごした研究員がいます。手に入れたのは増量分のカロリーというより、昼休みに見せて笑える写真でした。
ハーゲンハート探し|ファンの遊びに公式があとから乗る
ハーゲンダッツのハーゲンハート探しは、蓋を開けた瞬間のアイスの表面がハート型に見えることがある、というファンの発見から生まれました。自発的な投稿がすでに広がっていたところへ、2016年夏、出逢えた人はラッキーという占い仕立てで公式が乗ったのです。同社のSNS担当者がSELECKのインタビューで語ったところでは、Instagramのハッシュタグ投稿は約4,000件にのぼり、最も反響の大きい企画になりました。2024年には苺のハーゲンハートとして再演されています。
同じ構造の先輩格が日清食品の10分どん兵衛です。2015年、芸人のマキタスポーツさんが披露した、5分ではなく10分待つ食べ方が広がると、日清は気づかず申し訳ありませんというお詫びの体裁で公式に追認しました。どちらも起点はユーザー側にあり、企業は遊びを取り上げず、乗っかる側に回っています。UGCを軸にした発想そのものです。
ハッシュタグ投稿の心理的ハードル|本垢は広告を貼る壁ではない
指定ハッシュタグを付けて投稿すれば応募完了。企画側には手軽に見えるこの条件が、実は最大の関門です。研究員に聞くと、本垢のタイムラインは自分の部屋の壁のようなもので、世界観に合わない広告ハッシュタグは貼りたくないという声がそろいます。景品目当てで投稿したと思われること自体が損失なのです。
裏を返せば、投稿が自分の話として成立するなら、タグは付けてもらえます。盛りすぎチャレンジの写真は企業の宣伝ではなく、面白いものを見つけた本人の報告です。投稿の主語が企業か参加者か。そこが分かれ目になります。
シェアされる仕掛けの共通点|景品ではなく語れる瞬間を配る
ここまでの事例を並べると、参加したくなる仕掛けは3つの型に整理できます。
| 仕掛けの型 | 事例 | 参加者が受け取るもの |
|---|---|---|
| 目撃したくなる変化を売り場に置く | ローソン盛りすぎチャレンジ | 買うだけで成立する投稿のネタ |
| 偶然の当たりを商品に仕込む | ハーゲンハート探し | 見つけた人だけが報告できる権利 |
| ユーザー発の遊びを公式が追認する | 10分どん兵衛 | 自分たちの発見が認められた物語 |
共通するのは、報酬が抽選の先ではなく、参加した瞬間に置かれていることです。買った時点、見つけた時点で、すでに面白い。地球グミやちいかわといったヒット事例でも同じ構造が確認できます。景品を豪華にする予算があるなら、その一部を、参加者が自慢できる瞬間の設計に回すほうが効きます。
スルーされる企画は若者に投稿をお願いし、広がる企画は投稿の口実を配っている。研究所ではそう整理しています。
若者研究所では、現役の学生研究員によるグループインタビューや定点調査で、キャンペーン企画の事前検証やプロモーション設計を支援しています。その企画に若者が乗るかどうかを発表前に確かめたい方は、若者リサーチのご依頼やお問い合わせからお気軽にどうぞ。
よくある質問
Z世代向けのキャンペーンで抽選プレゼントが効きにくいのはなぜですか?
応募が懸賞用のサブアカウントで行われやすく、本来のアカウントでは拡散されにくいためです。当選者以外の手元には何も残らず、話題が育つ前に消費されてしまいます。景品の豪華さよりも、参加した瞬間に語れる体験があるかどうかが結果を左右します。
ハッシュタグ投稿キャンペーンの参加率を上げるにはどうすればよいですか?
投稿が広告の代行ではなく、本人の発見報告として成立する設計にすることです。写真を撮りたくなる見た目の変化や、探したくなる偶然の要素を商品側に仕込むと、指定ハッシュタグ付きでも自然に投稿されやすくなります。
ユーザー発の遊びに企業が乗る場合の注意点はありますか?
遊びの主導権をユーザーから取り上げないことです。公式が細かくルール化したり宣伝色を強めたりすると熱が冷めます。発見した側を主役として立て、企業は後から追認する立場に徹すると受け入れられやすくなります。


