Z世代のインスタマーケティング。フォローを外されない企業アカウント設計

新商品の告知画像を1週間フィードに並べた翌週の月曜、企業アカウントのフォロワー数がすっと減っている。SNS担当者なら一度は見たことのある光景です。理由を学生研究員に尋ねると、返ってくる答えは拍子抜けするほど率直でした。宣伝しか流れてこなくなったから外した。Z世代に向けたインスタ運用は、このフォローを外す側の生理から逆算すると全体の設計がつながります。

発見タブとタグ検索|フォローの外から見つけてもらう入口

Z世代が知らないブランドと出会う場所は、フォロー中のフィードではなく発見タブと検索窓です。Instagram責任者のアダム・モセリさんは公式ブログで、フィード、ストーリーズ、発見タブ、リールがそれぞれ別のランキングシステムで動くと繰り返し説明しています。発見タブに並ぶのはフォローしていないアカウントの投稿で、閲覧者が過去に反応した投稿との近さや、いいねや保存やシェアを集めている勢いをもとに選ばれます。フォロワー数がそのままリーチを決めるわけではない。これが運用の出発点になります。
もう一つの入口がタグ検索です。電通メディアイノベーションラボの天野彬さんが、ググるからタグるへという言葉で早くから指摘してきたとおり、Z世代はカフェも旅行先もコスメも、ハッシュタグや地名の検索で実際の投稿を確かめてから動きます。タグる買い物を受け止めるなら、キャプションには公式サイトの言葉ではなく、探す側が検索窓に打ち込む言葉を含めておく必要があります。

保存数が重視される理由|いいねは儀礼、保存は予定

成果の指標としては、いいねよりも保存数を見るべきです。理由は2つあります。
1つ目はアルゴリズム上の重みです。発見タブやリールでフォロー外に押し出されるかどうかは、保存やシェアのような深い反応の見込みに左右されます。2つ目は行動の質です。いいねはその場で終わる儀礼に近い反応ですが、保存は後日の自分のための行動で、行きたい店や買いたいものの候補として、週末の予定や買い物の直前にもう一度開かれます。Z世代のインスタ利用の実態を見ても、保存とコレクションは私的なカタログとして育てられています。
だから企業投稿は、あとで見返す理由のある形に整えます。比較、手順、まとめ、地図。1枚目で目を引き、2枚目以降に情報を畳み込むカルーセル投稿が保存されやすいのはこのためです。

フィード・ストーリーズ・リールの役割分担

主に届く相手 企業運用での役割
フィード投稿 フォロワーに加え、検索と発見タブから来る新規 保存に耐える資料型の情報。ブランドの棚
ストーリーズ ほぼ既存フォロワーのみ 日常の共有と対話。関係を深める
リール フォロー外への露出が最も大きい 新規との最初の接点。認知の入口

3つの面は別々の競技だと考えたほうが実態に合います。リールで出会い、フィードの蓄積で信頼を確かめてもらい、フォロー後はストーリーズで距離を縮める。この順番を決めてしまえば、どの面に何を置くかは自然に定まります。

ストーリーズでの距離の詰め方|放送ではなく窓口にする

ストーリーズは閲覧者との親密度が表示順を左右する面です。24時間で消えるからこそ、作り込んだ完成品よりも、開発の裏側や試作の失敗談、担当者の等身大の一言のほうが受け入れられます。
鍵になるのはアンケートと質問のスタンプです。回答はワンタップで済み、届いた反応にはDMで個別に返せます。研究員と話していても、ストーリーズの質問に答えたら中の人から返事が来た、という体験は好きなブランドの記憶として強く残っています。一方通行の放送ではなく、対話の窓口として使うイメージです。

リールの位置づけ|出会いの面で世界観を崩さない

リールは2020年にTikTokへの対抗として導入され、いまではフォロー外のZ世代に届く最大の面です。翌2021年にモセリさんが、Instagramはもはや単なる写真共有アプリではないと宣言したことも広く報じられました。
ただし出会いの面だからこそ、流行の音源に乗っただけの悪ノリはすぐ見抜かれます。再生数が伸びても、プロフィールに飛んだ先のフィードと世界観がつながっていなければフォローには至りません。リール単体のバズを狙うより、リールからプロフィール、フィード、保存へと続く動線を1本の道として設計することが近道です。

フォローを外される瞬間|宣伝一色になった時

冒頭の問いに戻ります。研究員たちが企業アカウントのフォローを外す瞬間として挙げるのは、投稿が宣伝一色になった時、キャンペーン応募のためのフォローを放置していたと気づいた時、そして自分のタイムラインの空気に合わなくなった時です。

Z世代にとってフォローは応援の署名ではなく、自分のタイムラインの編集権を渡す行為です。宣伝一色のアカウントは、その編集権の乱用とみなされて静かに外されます。研究所ではそう考えています。

だからこそ、企業が自分で語れる量には上限があります。その先を埋めるのは、利用者が自発的に投稿するUGCです。タグ検索で見つかるのも、保存されるのも、実際には一般の利用者による投稿であることが少なくありません。自社アカウントを完璧にする発想から、語られる仕組みを作る発想へ。Z世代マーケティングの全体像の中にインスタを置き直すと、フォロワー数は目的ではなく結果に変わります。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューやSNS利用の観察を通じて、企業のインスタ運用とZ世代向けの商品開発を支援しています。若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代向けのインスタ運用で最も重視すべき指標は何ですか?

フォロワー数やいいねよりも保存数です。保存やシェアを集める投稿は発見タブやリールでフォロー外に表示されやすくなるうえ、保存は買い物や外出の直前に見返される行動なので、購買までの距離が近い反応だからです。

企業はフィード、ストーリーズ、リールをどう使い分ければよいですか?

リールはフォロー外との出会い、フィードは保存に耐える情報の蓄積、ストーリーズは既存フォロワーとの対話と、役割が分かれています。リールで出会い、フィードで信頼を確かめてもらい、フォロー後はストーリーズで距離を縮める順番で設計します。

Z世代が企業アカウントのフォローを外すのはどんな時ですか?

投稿が宣伝一色になった時が代表的です。キャンペーン応募のためにフォローしたまま放置していたと気づいた時や、自分のタイムラインの雰囲気に合わなくなった時にも外されます。宣伝と日常や役立つ情報のバランスが欠かせません。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。