Z世代のコスメの選び方。プチプラとデパコスを分ける本当の基準

放課後のドラッグストア、コスメ売場の鏡の前。手の甲にアイシャドウを何色も重ねて塗り比べる女子高生の隣で、友だちがスマホのレビューアプリを開いて評価を読み上げています。棚の前で足を止めてからカゴに入れるまでの時間が、とにかく長い。Z世代のコスメの選び方は、この売場の風景にほとんど凝縮されています。

買う前に答え合わせを済ませる|起点はLIPSと@cosme

Z世代がコスメを選ぶとき、最初に開くのは検索エンジンではなくレビューアプリです。AppBrewが運営するLIPSには同世代のスウォッチ画像と率直な感想が集まり、アイスタイルの@cosmeには長年の口コミとランキングの蓄積があります。気になる商品はまずここで評価を確かめ、次にSNSのハッシュタグをたどって実際の発色を見る。広告よりも、自分と似た肌質やパーソナルカラーを公言しているユーザーの投稿を信じます。
この動きは、SNSの投稿を手がかりに買うものを決めていくタグる消費の典型です。メーカーの公式情報だけで買うことはほとんどなく、同世代の実感による答え合わせが済んでから、ようやく財布が開きます。

プチプラは妥協ではない|買っているのは試行回数

CANMAKEやセザンヌに代表されるプチプラコスメは、かつてはデパコスに手が届かない人の代替品と見られていました。いまの若者にその感覚はありません。@cosmeのベストコスメアワードではプチプラの受賞が毎年のように続き、安くても優秀という評価はとっくに常識になっています。
数百円なら、流行の色に挑戦して外しても痛くない。話題のテラコッタが自分の肌には沈む色だと分かることさえ、次の選択に生きる収穫です。安いから我慢するのではなく、安いから実験できる。ここを読み違えると、プチプラ人気の正体は見えません。

プチプラを選ぶ若者は品質を妥協しているのではなく、自分の正解にたどり着くまでの試行回数を買っている。研究所ではそう捉えています。

デパコスの新しい役割|分かれ目は失敗できるかどうか

デパコスが見放されたわけではありません。役割が変わったのです。バイト代が入った日や試験明けの節目に、百貨店のカウンターで美容部員に相談しながら選ぶ一品は、日用品というより自分への褒賞に近く、ご褒美消費と地続きの買い物になっています。
使い分けの軸ははっきりしています。色で遊ぶポイントメイクは失敗できるからプチプラ。肌そのものに関わるベースメイクやスキンケアは失敗できないからデパコスや中価格帯。かける部分と削る部分を厳密に分ける金銭感覚が、ポーチの中身にそのまま表れています。

プチプラ デパコス
代表ブランド CANMAKE、セザンヌ、rom&nd Dior、NARS、SUQQU
買う場面 新色への挑戦、日常のポイントメイク 節目のご褒美、失敗できないベースメイク
決め手 レビューアプリの評価と話題性 カウンターでの相談とブランドへの信頼
失敗したとき 数百円なので笑って済ませられる 痛手が大きいので慎重に選ぶ

韓国コスメと成分検索|パッケージの裏を読む世代

選択肢の広がりも選び方を変えました。rom&ndやCLIOといった韓国コスメはドラッグストアやドン・キホーテ、PLAZAの棚に当たり前に並び、Qoo10が季節ごとに開くセールのメガ割は、韓国コスメをまとめ買いする行事として定着しています。
もうひとつの変化が成分検索です。ナイアシンアミド、CICA、レチノール。商品名ではなく成分名で検索し、配合を確かめてから買う。美容系YouTuberや成分解析の投稿で知識を仕入れた若者は、パッケージ表面のキャッチコピーより先に裏面の成分表示を読みます。かわいいだけのコスメが選ばれにくくなった理由がここにあります。

店頭はテスト会場|スウォッチという最終確認

どれだけオンラインで調べ尽くしても、最後の確認は店頭です。テスターを手の甲に塗り重ねるスウォッチで、画面では分からない発色の濃さ、ラメの飛び方、肌への密着を確かめます。ドラッグストアやバラエティショップのコスメ売場は、売り場というよりテスト会場に近い使われ方をしています。
確かめた結果、その場で買うこともあれば、ECのセールやポイント還元を待つこともある。オンラインで調べ、店頭で検証し、いちばん納得できる場所で買う。この行き来は、コスメに限らないZ世代の消費行動に共通する型です。

選ばれるコスメの条件|検証に耐えるかどうか

こうして分解すると、Z世代に選ばれるコスメの条件が浮かび上がります。

  • LIPSや@cosmeで検索したとき、リアルな投稿が十分にあること
  • スウォッチで映える質感と、SNS上で伝わる発色を持っていること
  • 成分と処方を、ごまかさずに説明できること
  • 失敗コストが低い価格か、失敗させない売り方であること

逆に言えば、広告の露出をいくら増やしても、レビューが薄ければ棚の前で検索された瞬間に候補から外れます。

Z世代のコスメ選びを動かしているのはブランドの格ではなく検証可能性です。口コミと成分という、誰でも確かめられる情報で戦えるか。研究所はそこが分かれ目だと見ています。

若者研究所では、現役の学生研究員へのグループインタビューや定点調査を通じて、コスメをはじめとする商品がどう選ばれているかを購買行動のレベルで掘り下げています。化粧品の商品開発やマーケティングに関わる若者リサーチのご依頼お問い合わせはお気軽にどうぞ。

よくある質問

Z世代はプチプラコスメとデパコスをどう使い分けていますか?

色で遊ぶアイシャドウやリップなど失敗しても痛くないアイテムはプチプラ、ベースメイクやスキンケアなど肌に直結して失敗できないアイテムはデパコスや中価格帯という分け方が主流です。価格の高低ではなく、失敗の許容度が使い分けの基準になっています。

Z世代はコスメを買う前にどこで情報を集めますか?

LIPSや@cosmeといったレビューアプリで口コミを確かめ、SNSのハッシュタグ検索で実際の発色やスウォッチ画像を見るのが起点です。広告よりも、自分と似た肌質やパーソナルカラーを公言しているユーザーの投稿が重視され、店頭で実物を確かめてから購入に至ります。

韓国コスメがZ世代に人気なのはなぜですか?

rom&ndやCLIOなどの韓国コスメがドラッグストアやバラエティショップで手軽に買えるようになり、価格と品質のバランスが評価されているためです。Qoo10のメガ割のような大型セールでまとめ買いする習慣も定着しています。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。

この記事の監修者

三上広葉
三上 広葉 | 若者の研究所 所長

2025年より株式会社バイデンハウス取締役。バイデンハウスの飲料・食料、美容・コスメ、SNSのリーダーシップ。Z世代、サブカルチャー、海外トレンドへの幅広い知見を強みにZ世代マーケティングの支援を得意とする。

この記事を書いた人

石崎 健人

外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。リサート所属モデレーター。